硝子磨きの遺書

幾星霜の淋しさをへて、いつやわたしの手中には
ささやかな がらすの青薔薇あるのでしょう、
精緻丁寧なゆびづかい、わたしはそれを剥くのでしょう、
まるであらゆる心から 花弁を剥いで抛るよう。

ひいふうみい、ひいふうみい、
ようよう青薔薇きゃしゃになり、内より洩れる光ばかりが
淋しくつよまることでしょう。わたしはこれを瑕つけてきた、
ああ投槍に 理不尽に従属させてきた、ここではそれを語りません。

やがて青薔薇の花びらは、信じる燕に渡されて、
わたし、ただ不在という絶世の光 掌にのせることでしょう、
星が綺麗でございます。わたしまた、徹る視力がほしかったのです、

くずおれるような身体は、もはや流れに委ねましょう、
星が綺麗でございます。硝子磨かれ、不可視に澄むような死もあります、
一切を得られぬ人生、さればわが生、光る不在と星の夜空を流れるのです。

硝子磨きの遺書

硝子磨きの遺書

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-25

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