わたしを運んで
ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
塩からい涙がこぼれる
ここは暑くてたまらないの
向こう岸は涼しく、緑の草が川沿いに茂る
あれはわたしの憧れの土地
未だかつてない忘却の地
ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
聞いてくれたらこの髪をあげる
三月のすみれみたいなきれいな紫
それで蟻地獄を釣り上げる縄をつくるといい
ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
聞いてくれたらこの眼をあげる
虹彩に一匹の金の魚が泳いでる
生簀に閉じ込められていては不憫でしょう
見てよこのからだ、次第に川底の白石に戻ってしまうみたい
禁忌を犯してしまったせいで
お願い、わたしを見捨てないで
わたしを運んで