わたしを運んで

ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
塩からい涙がこぼれる
ここは暑くてたまらないの
向こう岸は涼しく、緑の草が川沿いに茂る
あれはわたしの憧れの土地
未だかつてない忘却の地
ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
聞いてくれたらこの髪をあげる
三月のすみれみたいなきれいな紫
それで蟻地獄を釣り上げる縄をつくるといい
ねぇ、渡し守さん、わたしを運んでよ
聞いてくれたらこの眼をあげる
虹彩に一匹の金の魚が泳いでる
生簀に閉じ込められていては不憫でしょう
見てよこのからだ、次第に川底の白石に戻ってしまうみたい
禁忌を犯してしまったせいで
お願い、わたしを見捨てないで

わたしを運んで

わたしを運んで

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-25

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