極暑の候

 くるしみを、解放してくれる夜の紅茶。あしただけの守り神と、せんせいの抜け殻と、ぼくらの未来を占うひとの、不協和音。街は、進化と、退化をくりかえし、目に見えない楽園が、生まれるようすを知らないまま、崩壊の瞬間だけがまぶたのうらに、小間切れの映像として流れるとき、だれかと手を繋いでいたいと思う。テレビの、とつぜんのにぎやかしさにうんざりして、しろくまが、バチン、とテレビを消して、一瞬、部屋が暗くなり、ぼくは、テレビは意外と、ストレスがたまるよ、というと、しろくまは、でも、世の中のことは把握しておきたいのだと、まじめな表情で呟き、冷茶を飲んでいる。
 せんせいが脱皮をして、七日目の朝に、せんせいの抜け殻は半透明から、玉虫色に変わり、せんせいは、ますます、せんせい然としている。街で唯一の動物園の、雄のライオンを愛するようになり、そのライオンと、つがいになる方法を、テスト問題をかんがえるよりもしんけんに、かんがえていて、でも、せんせいは、ひとまわりちいさかった、脱皮をするまえから、そういうせんせいだったので、仕方ないなとあきらめている。
 にほんの夏は、ちょっと狂ってると、しろくまは言う。

極暑の候

極暑の候

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-24

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