七月の終曲

 きれいな夜にやさしさをおとしこめて。わに様が、ガラス玉に透かす月を、たべちゃいたいとうっとりしていたことに、ぼくらは、なにかしらのおわりをみていた。空想の。想像の。
 むこうの街では、にぎやかなお祭りがはじまっている。いま、こちらがわはどちらかといえば、夢の跡みたいな、そんな静けさと、さびしさを湛えていて、わに様のかたわらで、ぼくらは、だれにも望まれない行為を自発的に致し、荒い息を交わしながら、ねそべっている。わすれられない、あのひとは、いつまでもぼくの底辺に、沈殿しているから、きみが、あたらしい水であふれさせて、クリアにさせてほしい。真っ赤なエナメルのハイヒールをはいたひとが踊り、ヒールがアスファルトを叩き、削る音だけが世界を侵食する。二十三時。

七月の終曲

七月の終曲

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-22

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