チョコレートのビスケットは今月のお買い得品だった

 かなしかったので、とにもかくにも、こういう日はお菓子パーティーだと立ち寄った、ドラッグストアの、シャンプーとか売っているところにいた、月からの新人類がふたり、リンスと、コンディショナーと、トリートメントのちがいがわからずに、悩んでいた。あたしは、きょうは、ひとりだったので、ネムがいないと、新人類にはちょっと、話しかける勇気がなかったので、ごめんなさいと心のなかで謝りながら、でも、実際、あたしも、リンスと、コンディショナーと、トリートメントのちがいを明確に説明できるわけではないな、と思った。まいにち、コンディショナーと、週に一度、トリートメントをつかっているのに。かなしかったことは、昼間、仕事での、おのれの態度をふりかえり、猛省してのことだったのだけれど、時間の経過とともに、かなしみは薄れてきていて、でも、なんか、もう、無性に、不摂生なことをしたい、と思ったので、ポテトチップと、チョコレートのビスケットを買った。シャンプー売り場にいた、月からの新人類たちの髪は、正直、トリートメントのひつようもないのでは、というくらいに、艶やかで、横顔も妙に美しくて、そういえば、新人類たちはなかなか、整った顔のひとが多いような気がしている。やるせない気持ちになっても、むりやりに笑って、明るい調子でふるまっていれば、勝手に、気分も上向きになるだなんて、本屋さんでみた知らないだれかの、やさしい言葉のなかのひとつだったか、あたし、むかしは、ちょっとだけ、そういうのばかにしていたのだけれど。おとなになっていくにつれて、沁みてくるなぁなんて、思ってる。ネムは、リンスと、コンディショナーと、トリートメントのちがいが、わかるだろうか。

チョコレートのビスケットは今月のお買い得品だった

チョコレートのビスケットは今月のお買い得品だった

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-19

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