誕 生
おとぎばなしみたいに、あのこたちが、空気人形となって、都会のビルが、砂糖菓子になって、この夏の、殺人的な暑さで融けてしまって、べたべたするアスファルトを不快に思っている。ゆりかごのなかの、雲雀。星の体温をしる、まよなかに、たいせつなものがなにかひとつ、こわれてしまったあとの、じわじわとやってくる喪失感を抱えたまま、イマリの肉体の重さにしびれるのは、脳。純正たる愛を、だれかが嗤う頃、人類の、ゆるやかな破滅を嘆く、アルビノのくまのかたわらで、ナオは眠る。精神がつながっている、ぼくとナオ。からだでしかわかりあえない、ぼくとイマリ。ぼくがみる夢でどろぬまみたいにやさしい、ひとりの怪物。
生命が、うまれる瞬間を想って。
撫でる。
誕 生