夜想歌集(未完)
2022年8月27日、第18首目を公開しました。
第1首目
星影のさやかな夜にささやかな言葉をささげ祈りをささげ
/「さみしい夜の句会報」第73号 掲載
第2首目
いつの日か飲んだソーダの泡に似た月の涙をとかす、小夜なら
第3首目
生き急ぐ一番星のあの人は昼と夜との狭間に光る
第4首目
一つずつ名前をつけて眠りましょう夜明けにはぐらかされないように
第5首目
満天の夜空を知らぬ私たち眠らぬ街の星に守られ
/「さみしい夜の句会報」第74号 掲載
第6首目
しとやかに艶めく真珠になるのなら零れる涙も浮かばれるのに
第7首目
ひそやかな路傍の花のしたたかさ憐れむべきと思わせる貌
第8首目
紺碧の残像としての遠雷に寝ぼけ眼の夜が滲んで
第9首目
沈みゆくとろり微睡む海の底限りなく宙に近い冥色
第10首目
磨くのは艶を出したいだけなのに粗い鑢に磨り減るばかり
/「さみしい夜の句会報」第75号 掲載
第11首目
まだぬるいプリンを食べた妖精は今ごろ頭を冷やしているよ
第12首目
夏空はこの目で見ると青いのに記憶の中では赤く揺らいで
第13首目
静かな夜耳打つ星のさざめきに胸の汀の風は凪いで
第14首目
あの日からぷつりと切れたままの弦、声を失くした弓張り月の
第15首目
きっとまだあなたはどこかで生きているあの星が赤く燃え尽きるまで
第16首目
丁寧に濾過した涙は透明できっと魚も棲めるでしょうね
/「さみしい夜の句会報」第76号 掲載
第17首目
幸せは両の手にのるほどがいい辛いことなどひとつまみでいい
/「さみしい夜の句会報」第77号 掲載
第18首目
朝ぼらけ夢の続きに星が散る夜明けを日暮れと見紛う惑星
/「さみしい夜の句会報」第78号 掲載
夜想歌集(未完)