夜想詩集(未完)

夜想詩集(未完)

2022年7月31日、「冥色」を公開しました。

黒猫

 黒猫が空を引っ掻きました。引っ掻いた爪跡は繊月になって、繊月から吹き込む風が街の灯りを攫っていきました。
 黒猫の瞳が光る頃、繊月はにっこり笑って沈んでいきました。黒猫は夜空を何度も引っ掻いて、いくつも星が流れていきました。
 黒猫は鳴きました。黒猫の声で太陽が目を覚まして、街に影を作っていきました。黒猫は影ですから、太陽に見つかることはありません。黒猫はもう一度鳴きました。紛れて踏まれて重なって、影はもう誰のものでもない、街の雑踏に消えていきました。

目蓋

目蓋を閉じる
目蓋の裏は万華鏡
星降る夜の万華鏡
見たくないものに疲れたら
そっと目蓋を閉じればいい
陽の光が恋しくなったら
またその目蓋を開ければいい

ああ あの人は
星降る夜から帰らない
目蓋は綴じられ
目蓋は明けない
瞬く星の一つになって

冥色

星々の産声
暝色に身を委ねて
地べたにいては重たすぎると
天の空の彼方に馳せて

泡沫の微睡み
溟色に身を委ねて
水面にいては眩しすぎると
深く耽る海の底は
天の空から一番遠い場所

夜想詩集(未完)

夜想詩集(未完)

2022年7月31日、「冥色」を公開しました。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-17

Copyrighted
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  1. 黒猫
  2. 目蓋
  3. 冥色