土曜日

 絵を描いているあいだだけ、せかいのことを俯瞰できる。少女たちの群れ。制服のスカートを燃やして、二十五時に更新する、愛とか、生きる意味への自論。脚色して。ふいに、クリームがぱんぱんにつまった、どかくそ甘いパンなんかを欲して、爪をかむのは、わたしもそうよ。夜が明けたら、なにものこっていない街のかたすみで、ひとり(ひとり?)、キャンプをしているあらいぐまのつくる、フレンチトーストを、たべたいと思う。なにも、のこっていないのに、街をまもろうとしている、あらいぐまのことが、わたしはちょっとだけ、気になっていて、それが、恋、に該当するかは、いまのところはじぶんでも、わからない。みえない壁にかこわれた、わたしたちは、日々、健やかに暮らそうよとかかげるだれかの言葉を無視して、みんな、好きなものを好きなだけたべたいし、よふかしもしたいし、からだによくないけれどすごく魅力的なものを取り入れたいと思っているから、どんどん、あたらしいお菓子や、砂糖たっぷりのジュースや、写真映えすることを目的にまるでキメラを生み出す感覚でつくられた見目のものが売られて、つまり、いたちごっこみたいなもの。そんなことをかんがえちゃう日は、とてつもなくからっぽな日として、ふだんは興味のない流行りの歌を、口遊んでみる。

土曜日

土曜日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-16

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