アフリカの仮面

 昔 私が仏蘭西の路上で、怪しげな男から購入した、
 深紅の色と奇怪の線に塗りたくられ、衝動の儘に描かれたような
 アフリカの仮面を被るなら、わが肉体の内奥 まるで裏がえって、
 火のようなアフリカを闊歩する、わたしの本性 剥かれ昇るよう、

 私はアフリカの大地で、褐色の肌 太陽のように晒して、
 血色の好い頬で野生の儘に踊り、歓び、怒り、ワンワンと泣き、歌う。
 ──雄叫びながら後退りする儀式だ、酒をもってこい、音楽を鳴らせ、
 なるたけ官能的なグルーヴがいい、乱痴気の墜落に 天へと跳ぶ想いさ。

 されば私、浴びるようなアルコールに酩酊、どっと寄せる睡魔、
 泥のように沈み寝て、黎明の光が、昨夜の躁がしい歌責めたてる、
 土製のアフリカの仮面、床に転げ割れている、瓶割れた酒流れてる、

 わたしは咽び泣きながら、双に割れた仮面をくっつけるも、
 片方は毀れた酒に穢れて黝い、私はわが身がこの秩序にあること想い、
 整列世界に抛られ蹴り跳ばれる、されば黝い私、此処にありつづける。

アフリカの仮面

アフリカの仮面

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted