銀の精、天の避妊具

祈りのそれのような身振で放った、わたしの銀に燦る精液は、
硬質な反映を飛沫ながら、うね昇るようにして憧れの星空へ飛び、
しばし往き場なく彷徨うも、群青の瞼に きんと撥ねられるのでありました。

扨て、墜落したメタリックな精液 地上の打ち棄てられた処に降り、
廃墟のようにささやかな湖をつくり、月の光 ちらちらと面だけうつろわせ、
硝子の城は沈むように翳と宿りましたが、うえへ聳えるものはなんにもない。

わたし、傍にあるアネモネの花畑のなかで、俟ってもいるのです、
臆病なキツネのようにひっそりと花影に隠れ、訪れるひとを探しています、
報われない・恋愛禁止を戒律としたわたし、一番欲しいものは諦めない。

それはひとびとの剥かれた魂にひとしく睡る、ましろのアネモネの花畑で、
愛するひとと陰の光を繋ぎ、おんなじお歌をうたうこと、幽かな光重ねること、
わたしの金属製の淫欲は淋しさで、天蔽う避妊具 いつ毀れることでしょう。

銀の精、天の避妊具

銀の精、天の避妊具

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2022-07-09

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