情緒散舞

 生きているひとびとに、惜しみない雨と、えいえんの愛を。朽ち果てた、あのひとたちのかたわらで、あたしは心を捧げるふりをして、笑む。おわったんだね、すべて、という、なんだか陳腐なアニメ映画の、儚げな美少年がつぶやいてそうなセリフとともに、目が眩むほどのスポットライトを浴びている、きみを、想い描いた。サーカスの終幕みたいなもの。

(あのさぁ、もう、夏なんだって)

(とにかく、あたしも、きみも、腐らないように気をつけようよ)

 だいすきなアイドルグループの、コンサートの円盤をフラゲしたのに、なんとなくまだ、観ていないし。たえまない、ニュース速報をしらせる音に、ビビってるし。べつに、そんなにおなかすいていないのに、コンビニで、たべたいものをかたっぱしから買って、後悔するときが月に何度かあって、そういうときはただの夕焼け空にも感動して、泣きそうになるのだ。
 せみのぬけがらをみつけて、郷愁めいたものに耽ってみたりとかも。

情緒散舞

情緒散舞

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-09

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