首を喪った女神

 嘗てきみ 荘厳な翳の彫刻された蒼穹を、
 自由自在に翔びまわり、世にも優美な汝が美貌、
 ふりまくように 宝石の気品散らすよう、
 流れる星もさながらの ゆるやかな線曳く頸元照って、

 つと伝うのは祝福の光、やや時俟てば、
 ふっくらと優しい 水さながらに清む肩まわり、
 背を向けば、壮麗な レリーフの如き背骨あって、
 高貴を示す 無垢な翼を拡げては、人々の崇拝集めてた。

 扨てそいつは昔のことです、追憶の果てへ往っちまいました、
 今博物館に飾られた、昔栄えたかの女神、粉吹くように立っています、
 好色な視線は裸体を滑る、古代を統べる神々は、まるで見世物と今並ぶ、

 きみ頸からうえを喪って、幸運にも 現状知覚すらできぬよう、
 古代希臘は沈んじまった、夕陽の向うでくずおれちまった、
 石膏の粉 流れ星とし後へ曳きながら、ましろの翼は舞い去った。

首を喪った女神

首を喪った女神

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted