首を喪った女神
嘗てきみ 荘厳な翳の彫刻された蒼穹を、
自由自在に翔びまわり、世にも優美な汝が美貌、
ふりまくように 宝石の気品散らすよう、
流れる星もさながらの ゆるやかな線曳く頸元照って、
つと伝うのは祝福の光、やや時俟てば、
ふっくらと優しい 水さながらに清む肩まわり、
背を向けば、壮麗な レリーフの如き背骨あって、
高貴を示す 無垢な翼を拡げては、人々の崇拝集めてた。
扨てそいつは昔のことです、追憶の果てへ往っちまいました、
今博物館に飾られた、昔栄えたかの女神、粉吹くように立っています、
好色な視線は裸体を滑る、古代を統べる神々は、まるで見世物と今並ぶ、
きみ頸からうえを喪って、幸運にも 現状知覚すらできぬよう、
古代希臘は沈んじまった、夕陽の向うでくずおれちまった、
石膏の粉 流れ星とし後へ曳きながら、ましろの翼は舞い去った。
首を喪った女神