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 わにさま。ゆめうらないを、しんじている。
 わたしだった、ぼくの、肉体を裏返して、すこしだけ歪んだ世界で、めざめる。傍観者しかいない、金魚鉢のそとみたいな。遊泳。星のすきまを縫って。ぶあついトーストに、バニラアイスをのせて、はちみつをたっぷりかけて、ああ、朝、という瞬間をかみしめてる。わにさまの化身と、ベッドのうえで、ひとしきり踊ったあとのこと。突発的で、衝動めいていて、総合すれば、はげしい、という言葉でおさまる、行為の果ての、虚無を、もてあそぶていどには、うまれている余裕。
 しらないだれかの、悲鳴にも似た、ギターの音。
 受胎。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-04

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