運命への愛はない

 運命は扉を叩かない、
 不穏な響きで這い寄らない、
 それ 不意に立ち止まりふりかえれば、
 在ったような 無いようなものでしかないものだ。
 時々くらいは考えてもみるが、
 ぼく、自責と内省にいそがしい、惨め極まる理想家で、
 わが居場所、指で叩いて確認しない。いったい何の意味がある?
 知らずに介する不可視の宿命、ぼく、シニカルな眼を投げるのみ。

 愛すべき理不尽はわが身打つ、
 不安な亀裂の響きはまるで脳髄を喰い荒らす、
 これぞ わが理想の女性、ぼく惨め極まる観念家、
 けっしてわたしを愛さない、絶対の硬く冷たい女神、
 玲瓏に燦る照り返し ぞっと立ち込む吹雪の風景、
 貴様を幾度も打ってやる、歌の弓矢を引いてやる、
 死にたいぼくは、まるで貴様から産み落とされた、
 幼児の乱痴気 貴様を叩いて撥ねては踊る、これぞぼくの運命だ。

運命への愛はない

運命への愛はない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-07-01

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