白日
歴史的建造物が、さびしげに揺らいでいる夏。六月の蜃気楼に、ハンディタイプの扇風機を持った先輩のくまが、扇風機に向かって暑い暑いと吠えている。こどもみたく。駅のホームには、わたしと先輩しかいなくて、車掌さんもいなくて、停車している電車もなくて、自動販売機ががんばって飲み物を冷やしているであろう音が、かすかにきこえてくる。買ったばかりのサイダー缶は汗をかき、わたしの手の温度とあいまって、すでにぬるくなりつつある。先輩は、とにかく暑いとしか言わないくまとなってしまって、わたしは、うんざりしながら、スカートをつまんで、ぱたぱたとあおぐ。先輩以外だれも、いないからいいよねという感じ。屋根のないところは総じて、白い。いますぐ毛を脱ぎたいと唸る、先輩。それは、着脱可能なのですか。思いながら、わたしはサイダーをごくごくと飲む。
白日