真似人

少年は私に向かって言った。
「僕は、君が未熟者だって分かるよ。」
「私が未熟者? どうして?」
「君のことを前にも見たからだよ」
少年はそう言ったけれど、私が彼と出会ったのはこれが初めてだった。少年はがれきの上に座って、私をじっと見つめた。
「私はあなたを見たことなんかないよ」
「そらそうだよ。僕は僕を見つけていないんだから。君は君を分かった気でいるだろう? それは君を分かったことにはならないよ。君は誰かのマネをしてるだけなんだよ。だから僕は見たことがあるんだ、君を、どこか違う場所で。僕が知ってる大人の人は、みんな初めて見る顔だった。」
「まあいいや」私はそう言った。
・・・

真似人

真似人

短編、実験、直観、小説

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-28

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