現実と非現実の馴れ合い

社会ファンタジーです

1 目を覚ますとおどけていた昨日の二日酔いが今朝もあった。長らく夏を会社で過ごしたが秋の予感を感じ


現実と非現実の馴れ合い

1 目を覚ますとおどけていた昨日の二日酔いが今朝もあった。長らく夏を会社で過ごしたが秋の予感を感じていた。会社から得るものも、なにもないと言い切りながらも大卒から就職した。上司に頭を下げて部下に教育をするまで至るまで係長クラスまで登り詰めたのだった。会社により精気を吸い取られ家族からは非難の毎日だった。「この日本で楽しく暮らしている奴なんていやしない」響(ひびき)京介は言った。
学生時代、酒や女に明け暮れた人生だったが、音楽に一区切りつける、ことで就職を決意し後々に結婚をした。娘も二人おり、家のローンも40年はあった。響にとって唯一の生き甲斐とは休み時間にタバコを吹かせるだけ、あとは自分自身に騙し騙し生きているだけのサラリーマンだった。飲み屋で愚痴をこぼせば、飲み過ぎの始末で家族への給料を払っているものの、楽しみはなかった。誰がこんな世の中にしたのだろうか、ふと呟いて会社の帰り支度に歩いているとある年のいった女性に話しかけられた。
「あなたは幸福な人生を歩んでいるはず自分自身の自信さえ失ったのも自業自得なものよ」
ある占い師だった。そんな通りすがりの自分に分かっている自分に腹が立つや「このやろーなに訳の分からないこと言ってんだ!お前に何がわかる?!」喧騒な顔で占い師に言った。
「寂しいねー、でもその怒る気持ちも自分次第。」占い師は冷静だ。
「もっとお金を稼ぎ、余裕を持っていたならわたしの話など聞き耳持たなかっただろうにね。」
「世の常なのさ、しかしまあ、良い大人がそんな愚痴ばかり零しているようじゃあ、浮かばれないねー」
占い師は言った。

響は突っ掛かってくる占い師に「何が分かるんだ」と心の中で叫び、気持ちを落ち着かせた。「じゃあ、なにかい?俺もこれからもっと良い人生でも生きていけるくらい、未来を占ってでもくれんのかい?」
「よし、きた!」
「あー、いいとも、しかしがっかりするか?しないかはあんた次第だよ!、わたしには行く末を占うことは出来るけどさ、あんたの人生そのものを変える力は持っていない、どうにも、自分の道は自分で切り開くしかないからね~、その辺を分かった上で占ってやるんだ。」
占い師は言った。
響は胡散臭そうに「じゃあ、占ってくれよ!」
響が右手を出すとすぐに占い師は直ぐに占った。「責任感の強い人間で先のことを分かろうと出来ない、芸術家タイプだ、それが故に悲惨な現実の社会生活には苦を呼ぶ。」はっきりと占い師は言った。
「誰もがそうだよ、産まれてからの事実がある、その為にあらゆる得意ものや不得意なものが生まれ社会生活に希少を齎すんだ。しかし、どうやら、あんたにはこれからが転機であると呼んだ。あんたは偉業を成すことに?潜在能力を内に秘めてそれが社会生活や家庭生活の現実的な趣向があんたを苦しめやしないかい?」
図星だった。響には今やることよりも遠く大きな夢が実はあったからだ。誰もが生きる社会人に憧れ、よい給料とよい妻子、そんな当たり前なことより、古くからの自分に必要なものはなにか?偉業を成すことではないのか?」潜在能力は黙ることを知らなかった。妻や子供によい生活をと働いてきたが、そんな生活に嫌気が刺したのは今だけのことではない。
人にはそれぞれ意味のある人生を歩まねばならないと子供の頃から思っていた。家庭を持ちまた、社会に貢献をすることが全てではない。仲睦まじく暮らす夫婦関係にもいつかは嫌気が刺してくるものだ。だから、世の中の一般の人々は浮気をする、しかしこの世の中でそれが鵜呑みに悪くない風潮を醸し出しているのは事実かもしれない。分かった振りをして分かっているように振る舞い自分を騙し騙し響は生きてきた。ただ、そのマンネリ化に少し風を通すと占い師は言うのである。
占い師はそんな器用なことを出来るだけの雰囲気を醸し出していた。あらゆる多くの人を占い抜いたあげくに出来た経験なのかもしれない。忘れていく人が、要れば思い出し、それが自然に却っていく一人の道ならば透き通る一瞬の風を吹かせたい!そんな気持ちが響にも湧いてきた。夢を形にする!夢は誰しもあるだろう。しかし、夢は時には過酷な試練を要するときがある。それに耐えられないものは藻屑と消えていくしかないのだ。周りを見て判断することは大切だが、周りを見て主張することはもっと難しい。それは長年働いてきた響にはよく分かった。
響にとって生きるとはなにか?実際にその空想が過ぎ去っていった。「じゃあ、僕にどんな使命があるというんだい?」
「それが何かは分からない、それは自分自身で学ぶしかない。」と占い師は言った。
「ここ、数十年は辛く苦しいことが続いていただろう。しかし何か吹っ切れたものがあんたにはあるはずだ!そこに気付くことが最優先で近道かもしれない。」
「なるほど、もう一度落ち着いて考えてみよう。思考の裏がこそばゆくてやれない。」
家族の為に必死で働いてきた響には常識というものからはみ出しまた、幼い頃を思い出していく作業には少し時間がかかると思い、自宅へ戻ることにした。
自宅へ帰ったあとも、あの占い師の言葉が頭から離れず思い起こしながら頭の中で無限ループのようにざわついていた。
朝早く今日は休みだったので起き、妻にこのことを話した。妻は興味深々でこちらを見つめ不思議と頭を傾けていた。響にはその妻を見ながら、学校へ行く2人の娘を見送った。
響が、休みの日はいっせいに家の掃除がはじまる。妻に頼まれた燃えるゴミを近所のごみ捨て場に出し、歩いて帰った。
2、3点することが響にはあったが動揺のしない性格でどちらかというと鈍感な方だった。
響は妻を愛していたが、マンネリ化な思える毎日からは愛情というか、習慣化された環境に妥協することが人生の術だと自負するようになっていた。今更何もかも棄て去り他への道を行こうなんてこれっぽっちも思わなかった。むしろ、責任が妻や子供のために働くことが何よりも生きる原動力になっていたからだ。しかし、昨日の占い師が言っていたことは不思議と胸に突き刺さりもしや、良きこれからのルートがあるのではと機転を変えていた。
以前、深夜番組を観ていた、学園きっての保育士が転機を変えてホストになっていることを。なぜその保育士は子供達から愛される仕事から醜いホストへの道を歩むようになったのか?良い方向性や悪い方向性が響にはもはや通用しなくなっていた。削がれた心の傷はもはや修復不可能でその傷はもはや、安定と言う言葉で塞がれていた。ズキズキ痛む胸の傷からまた、ドロドロ会社に行くたびに流れ、家族と言う責任の上では塞がったカサブタをむやみに剥がす方向だった。生きているストレス社会にどっぷり浸かり、後悔や過去の出来事は未来の希望には明らかにならなかった。
杜撰な環境から抜け出したい。抜け出すことにより全てを失うことが分かっても自由という楽園にどっぷり浸かり傷を癒したい。そんな気持ちが俄かにくすんだカサブタの傷の血を止める手段だった。動き出す歯車に身を寄せながらもガムシャラに働いた。会社がなくなれば誇れるものは何もなく、却って家族から非難の渦を巻き起こすことは言うまでもなかった。どちらも正義だが正義から起こる悪の傷を責任という血で洗っていた。

2 会社に行くと若い社員がコーヒーを出してくれた。一息の一服に移ろうと喫煙所に向かった。同僚が何やらヒソヒソと話している。自分のことではないと思い、そのまま会社のオフィスに座った。「さあ、仕事だ!働くぞ!」と休憩から戻った響は断然やる気モードに入っていた。北村課長が響のやる気な姿を見て、”プラス仕事”を増やしてやろうかというような目で伺っていた。黙々とデータ処理を部下に任せ、新しい提案によい発想があったのか仕事がスムーズにいく。昼の時間に妻が作ってくれた弁当を食べた。「係長、毎日お弁当ですね、たまには食堂で一緒にみんなと食べましょうよ」
若菜という23歳のOLは言った。
「そうだな、たまには食堂もいいな!妻には明日は弁当は必要ないとでも言おうか。」
「やった!」23歳のOLはガッツポーズだった。
若菜は大学を卒業して2年目の新入社員だった。一流大学を出てこの会社とは、と響は思っていたが、それもこの子の人生、不思議と世の中の不浄さに圧巻させられるものだと思っている。根も葉も付かずとも骨を埋めて働く、そんな風潮はこの時代には胡散臭く聞こえるようだ。ゆとりからさとり世代になるこの時代とは全く反対の生真面目な一面を響は醸し出していた。若菜は要領がよく、気が効く社員で男性社員の注目の的だった。
そんな若菜だったが彼氏と別れたばかりだと言っていたが、物憂げに響に寄りかかってくる感じは否めなかった。響はまさか!とパチパチ目を開いたり閉めたりとパソコンとにらめっこばかりしている。
オフィスの雰囲気とはみんな明るくやり甲斐をそれぞれが、もって仕事をしている。間違いやミスがないように響は課長に提出する部下の案件に目を通している。
北村課長も優しさを絵に書いたような人で叱られることはあまりなかった。自由度の効く会社でメリハリをつける会社だ。ミスから生み出すものへの負担から緊張感は社風にはあった。
「響くん!、あの案件どうなった?」
「あの案件?」
「ほら、広告代理店と打ち合わせをした、案件だよ。」
「一応、貴船に任せてありますが、期日はまだだったと思いますが。」
「そうか、貴船くんにか、あっいいんだ、そのまま続けさせて。」
「分かりました。」
響には部下が5人いる、仕事を始めてから10年、新入社員が入るなり教育係りは貴船に任させていた。10年の間で辞職していく社員はちらほらいたが、貴船は響についてきた社員だ。響にとって困難な仕事も任せられる存在だ。出張へ出向くことさえも貴船に任せるとあれやこれやで案件を次々ととってくる有能な社員だった。貴船も困難な仕事も嫌な顔もせず、淡々とこなしていく仕事っぷりには、この会社では必要不可欠な存在だった。

仕事がひと段落ついたときはもう、19時を回っていた。「よし、帰るか!」とカバンをとり、 書類をまとめた。会社を出て歩いていると、またあの占い師がブツブツ念仏のように話していた。「はて?お分かりかな?」
響はゾッとして占い師の前で立ち止まった。
「婆さん!なんだい!いったい?こっちは残業して帰っている途中だ、また、何か分かったのか?」
「機転を利かしているうちにはまだ、あんたにゃあ、分かりっこないよ!」
「そりゃあ、分からないよ、沢山頭の中がいっぱいなんだ、入る余地のない容量が脳にあったら儲けもんだぜ。」
「容量は、自然と広がるもんさ」
「その容量を増やしてやろうって言ってんだい!」
「んっ?」
「そのいっぱいのCPUじゃあ、動作が遅くなるし、新しいものも入ってこないじゃないかね。人は乱雑に全ての能力を引き出すにはなかなか上手くいかないのさ、いくら限界値を越えようと努力しても強いて5パーセントがやっとだよ。しかも、脳の集中力が5%ならもうすでにその能力は使っているだけだよ。よく集中しても潜在能力には達していない。残りの75%を使ってはみないかい?あんたにゃあその資質があるのさ!」
「突然に潜在能力って聞かされても訳が分からないよ、でっ、その潜在能力ってのは人間の使われていない75%を引き出すっていうのかい?そんな非現実的な話がある訳がないと思っていたが。」
「誰にもある75%の能力を試した人間なんていないさ、それが出来るとしたら心霊能力やあらゆる感性から分からない未来の予知だって出来るんじゃないかと思っているんだ、あんた、試してみないかい?」
「宇宙人的な”テレパシー”てやつも、動物の意思疎通になる伝達組織も機敏に反応しそうだ、もしかして、重力にも何らかの効果が得られるかもしれない。植物の発達においてのエネルギーや宇宙の根本みたいなことが起こる。寄進に見えて不思議なもんだな。なあに、試してみりりゃわかるさ!」
占い師は響を怪訝な目で睨んでいる。響は呆然と突っ立ったまま、黙り込んでいた。

もしノストラダムスの予言やマヤ文明の予言が本当だとしたら、地球は危ない、歴史の過去には中世で発展した科学技術ならピラミッドやスフィンクスの解答も得られそうだ。地球上で人類最大の核兵器を使うなら地球の終わりは今でも現実な問題として懸念されている。僕たちの住んでいる地球は少なからずお茶の間の出来事で片付けられるもんでもなさそうだ。いま、一瞬にして地球が破壊されたらこの世の歴史や培った努力さえ微塵もなくなるだろう。地球が危ない!少なくとも響にはそう考えるようになっていった。ある風潮や風とは響にとって新しい概念を植え付けた。しかし、一般の家庭でサラリーマンの響には現実に生きている人々の生活を壊しても?と思っていた。有効に授かる能力に少しばかり、揺れていた。

3 「北がミサイルを上空にあげました。弾道ミサイルかは、分かってはいませんが、領海で爆発した模様です!!」
響はテレビを見ていた。会社終わりのお酒を飲みながらリビングルームで寝しずまった家族からリビングルームの明かりが点灯していた。北から発射されたミサイル?あらゆる問題が地球上では空気の淀みなく起こっている。助けられない人々、死んでいく人々、一人の命が尊重されない国々。生きていることさえ分からずそれが過ちとは分からない住民は生活のために、それをする。世界を見渡してみれば、あらゆる諸問題やあらゆる命や生活の問題があった。これが正しいとは決め付けられない政治家を非難する国民、人を殺めて平気な顔をする容疑者、おかしいところで非現実が繰り返されてゆく。なんの罪のない人々が死に、悪い大人は解釈もせず、生き延びている。真っ向から対峙する訳でもなく悪の見様さは却って逆鱗を振るわれることさえないと豪語する容疑者たちだった。

新しい概念が備わった響にはニュースの報道を自分の責任だと思うようになった。なにかしら地球の問題を解決していきたい。少なくとも以前の響ではなかった。愛するのも正義が家庭を超え、国単位で起ころうとしている。”幸せだ、幸せだ”、とストレスにどっぷり浸かる毎日から新しい概念は響をまた、逞しくさせた。内面の中で新しい思いが充満していく、過去も現在も今この時にあることを知る。愛し愛され生きようのない生き地獄を誰もが感じていた。それは国だけではなく、世界でも起こっている。今を生きることの出来ない人々は自殺に追いやられ借金の返済に困り一家心中を成すものたちもいた。全ての人の泣きさけびや現実の悍ましさや息遣いをも察することが出来る。
家に帰ると妻がドアまで出向いてくれた。「お疲れ様!」
「なにもなかったか?」
「ええ、なにもかも無事ですよ。」
「娘たちはもう寝ているのか?」
「ええ、もう!」
「また、不思議な占い師に会ったよ。」
「そう、」
「よく、分からない占い師だ、自分のなにやら足りていない部分を指摘する不思議な占い師だ。」
「よく、分からないことも世の中にはあります。」
「だな。」
「風呂入る。」
「ええ、」

響は寝る前にもあの不思議な占い師のことを考えていた。寝る前に小さな灯りをつけて本を読むのことが楽しみだが、響はそのまま布団に入り目を瞑った。
妻は隣のベッドで眠っている。灯りをつけているので眩しいのではと響は気にかけたが、そのまま灯りを消して眠った。

朝からなにやら騒がしい、長女が二階から降りてきた。「おはよう!お父さん!」
元気のよい長女に響は「おはよう!」と返した。妻はもう既に朝食を作っていた。味噌汁、ご飯、たくわん、塩魚、卵焼きがテーブルに並べられていた。今日は妻には弁当を作らないでと頼んでいる。会社の食堂で社員たちと昼食をとるためだ。スーツに着替え娘たちが学校に行く前に家を出た。妻からいくらか、昼食代を貰い、会社に向かった。相変わらずな満員電車で入りきらない電車のドアで無謀にも電車内に詰め込まれていく。押すな!と睨んでくる人や寝息を立てフラフラしているサラリーマンもいた。こんな満員電車で通勤することも響は慣れていた。相手の鞄が頭にあたる。ぎゅうぎゅう詰めの車内はもはや、ストレスの溜まり場になっている。揺られながら到着駅に着いた。いっせいに足早にサッサッサと歩く人々、自動改札口の目の前の駅員に定期を見せ、会社に向かった。時刻が8時前だ、時計を見ながらディスクに付いた。「ヨシ!仕事だ!」張り切る係長のあとから貴船が出勤した。
「おっ!貴船!例の案件は順調か?」
「あっはい!今のところ、いろいろ取材させてもらってる段階で、今日は事案をまとめにいく作業に入る予定です!」
「仕事が、早いな!その調子で頼んだよ!」
響は言った。

昼休憩に差し掛かった頃、「響係長!今日は食堂デビューでしたね!」
若菜が言った。
「ああ、妻には弁当は断わったよ!」
「早めに行った方が、いいんです!内の食堂、結構、人気で昼食時期に成ると混雑するんです!」
「今は11時49分!食べに行くか!貴船も他の社員も行くんだろ?」
「そうですね!さあ行きましょう!」
5人の部下を連れて二階行きのエレベーターに乗った。喫煙所は同じオフィスの階にあり、あまり仕事中には響はエレベーターを使わなかった。食堂にはまだ、チラホラとまばらだった。
右端のテーブルに座り食券を買った。
ランチやメニューがたくさんあり、食券は調理師に渡すシステムだった。
部下5人と8人用のテーブルに座った。
「響係長!ここのランチ少し高めだけど、ライスお代わり自由でとっても美味しいんですよ!」若菜は楽しそうに笑顔で言った。
普段の会話ではない会話が聞こえてくる。
「みんな、楽しそうだな!休憩時間ともなれば和気あいあいと、なんか嬉しくなる。」
「デビューですね!係長!」
クスッと笑う若菜は若さと同時に可愛いらしさがあった。気兼ねなく話が出来る彼女は社内でも人気な一人だ、もし、女房がいなければこの子と付き合ってみたかったと思う節がある。
貴船は黙々と食べている。仕事も落ち着きがあり出来る男だが、食事を黙々と食べる姿も彼らしいなと思った。
「実はさ、会社の帰り際にある、館か何か分からないが、妙な占い師がいるんだよ。潜在意識か?能力か?分からないけど不思議にこっちに話しかけてくるんだ。まともじゃないよな。」
「それ、知っています!会社の外で何かしら不思議なオーラ醸し出している占い師でしょ、不気味で、あまり近づかないようにしたほうがいいですよ。」
「だな、帰り道を変えるか。」

その日の帰り道は会社の裏側を通って帰るようにした。占い師の館が表に見える。
「ありゃ? 表に出なくてはかえれない。」
会社の配置をあまり仕事上見る暇がなかったのか裏側から遠回りしようとした響はまるで吸い寄せられるように占い師の館の前に立ちつくしていた。
「第6感が冴えたんじゃあるまいか?」
占い師は言った。「あんた、まだ分かってないようだね。いちよスピリチュアルなことだけど、伝達や行動に於いては”テレパシー”が存在するのさ!自分がこうしたいと逃げようとしても、潜在的な感覚がある限りは、そのハードルを避けてはいけないのさ!もう一度言っておくが、あんたは潜在意識のテリトリーに囲まれているのさ!」
「ふうん、なるほど。
「そのスピリチュアルな世界に入り、いったい何をすればいいんだ?」
響は言った。
「わかりやすい答えだね、人様を助けるのだよ!、この世の中には見えない力で動いているものが沢山ある。蛍光灯だってアインシュタインの相対性理論から来ている。数学で言えば虚数を使うのさ、難しく思えて当たり前のように光る蛍光灯はやはり、わたしたち凡人にはスイッチを入れたら光ると言うことさえしか考えない。車だってそうだよエネルギーは必ず存在するが?ガソリンで車が動くかなんて分からないだろう。そんな見えないものがあらゆるエネルギーを使って物事を動かしている。人間の本来の力も医療の文明が発達する限り、今現在の高度な医療を受けることさえ出来るんだ。要は何故出来るのかに概念を持ってくるのさ!目に見えるものが全てじゃない。目に見えない大切なものも沢山この世の中にはあるのさ!」

「それと、わたしの潜在能力とどう関係がある?」

「次第に分かっていくさ!もうあんたは受注にはまっているからね。それが悪い意味じゃない、むしろ”良い”意味でね!」

その言葉を発するなり館の奥に占い師は消えていった。

4 人間の脳に隠された使われいない75%!の能力。知識、判断力、感性、霊的第6感、もし人間が残りの75%を使える存在になったとき、惑星へ光に乗り一瞬で細胞移動を出来る存在になるのかもしれない。犬や猫と会話を楽しみ、死後の世界から助けが来る様子を見ることも可能だ。
響には少し興味のいく話だった。見えないものが見えたとき、人はどのようにリスポンスするのだろうか?人の気持ちが分かったり人を見て判断するなど、一般的には社会の常識からしたら考えられない。しかし、見えないものも存在すると分かった以上、果たして人はどのような反応を見いだすのだろうか?不思議な現象が続いていく中で明らかに決定付けるものは何か?働くことに何かしら限界がくるのではないか?家族に対して家系がどのように繁栄していくのか?いなくなったとき、疎外された引きこもりや”イジメ”はなくなるのだろうか?現時点でめいいっぱいの飽和状態なのに、欲望の悪魔に取り憑かれ悪魔の僕になる悪人もいる。上っ面をよく見せるお人好しも捌いても裁ききれない。度を越えてからの感情は偏見を覚え不思議な大人に成長していく。この時代に起こっていることは果たして本当に現実そのものなんだろうか?

トン、トン、トン

妻が部屋のドアを叩いた!響は残りの仕事を家に持ち帰っていた。机に向かう響を労って果物を用意していた。「なんだい?」
「ここ置いとくね!」
「ああ、ありがとう!」
「あまり、無理しないようにね!」
響は妻を心から愛している。よく気が利き、頭もいい。仕事をしていけるのもこの妻のお陰だった。
ある書類を提出しなければならない。明日は会社でプレゼンがあり、貴船が発表する。キーボードを打ち終わると「ヨシ!終了!」
ノートパソコンを畳んだ。

貴船のプレゼンは部長や社長にも大きく買われている。もの応じしない堂々とした態度と発せられる責任ある言葉は会議に集まった上司を圧倒させる。社長から問題点を挙げられたときもこの堂々たる切り返しに幹部達も圧倒させられた。響はプレゼンの終了した貴船に「良くやった!お疲れ様」と肩を叩いた!
貴船も笑顔が見れた。
響は貴船の方が実際には潜在意識が隠れているのではないか?この堂々たる、本番に強い肝っ玉は、響にはない。ただ、言えるとしたら表向きの態度はいいが裏側は貴船にとってボロボロなのかもしれない。響は残りの時間を営業に回ることで気を紛らわした。

今日は残業はしないで帰ろう!部下と飲みに行こうか、若菜にも声を掛けてみる!若菜は気兼ねなく、「上手いようにいったみたいですね!プレゼン!」
「ああ、貴船だ。ミス一つもしなかったよ。完璧なプレゼン!上手いようにいかない方がおかしいよ!」
「先輩に聞いてきますね!」
「ああ、頼むよ!」
飲みともなれば一気に部下たちはテンションを上げる。本当にお酒好きが集まった部署だった。貴船へのご褒美でもあるが楽しく団欒で話せる部下たちといることも楽しい。
妻へ今日は遅くなると連絡し、定時には会社を出た、するとやはりあの占いの館には占い師が立っていた。
響から占い師に声を掛けた!
占い師は水晶に写るなにやら怪しい陰に目をむけ沈黙していた。
「気が進まない!世の中でいいことが起こるとき、必ず悪いことが起こる、この水晶に写る反映はなにを意図しているのかね?自らの行動さえも、道筋を開けた道の運ならばより良く生きることが出来るはずなのに、生まれながらに不運を寄せ集めた人は自らの力だけで進まなければならない。それは一種の修羅場であり、果ての運に恵まれた人より上手くいかないことを過去から未来に植え付けられている。おや?あんたかい?何故、こうも世の中と言うのは不平等なのかね。まるで運をなくしてしまった人は生きる希望を失いつつある。」

「水晶の見過ぎなんじゃないか?”なんとかなるさ”でみんな生きていると思うけど。」

「単純に生きる素晴らしさと空想的な鈍感さは仕事をする上では前者に勝利を迎え入れるもんなんだよ!少なくとも世の中はそうなっている?運も実力のうちと言うが運がなければ考え方も不平等になるんじゃないかね。」

「分かりやすい!」

「しかし、世の中での運も鍛えることが出来るのさ。占いは一種の方向性を決める指標にしかならない。要するに自らの行動だ、それさえ分かればあんたも、納得しただろ!早く家に帰ってやんな。あんたの妻や子供が心配しているよ!」

5 飲み会には1人の社員を残して4人の部下が集まった。事前に若菜が居酒屋の予約を取っていた。個室に通された5人だったが、感じのよい店で従業員もテキパキと動き、明るい雰囲気の店だった。「今回の件に関しまして貴船さんの功績を称えましてカンパーイ!」
いっせいに向かいあっている5人はビールを天井いっぱい挙げて祝杯した。
響の隣には若菜が座っていた。「係長!今日は飲みましょう!わたしも付き合いますから!」
若くピチピチした若菜は響にとってとても新鮮にみえた。また、若菜を狙う男子社員もいたが、年上が好きなのか、響には何故か違和感を覚えず気さくに声を掛けてくる。
乾杯して一気に飲み干す部下もいれば、チビチビと年老いた老人のように飲む部下もいた。
貴船は酒が苦手なわりには今日は飲んでいる方だった。若菜は顔がポッと赤くなりながらもマグロの刺身に手をつけては焼き鳥やたくさん、注文をしていた。若い部署ではあるが響には頼もしい部下たちだ。
「若菜ちゃんって何歳なの?」酔い潰れた部下が聞いてきた。若菜は愛想よく「23歳です、最近は、女性に年を聞くのもセクハラなんですよ、まあ、酔いの席ですから、あまり気にはしませんが!白石さんは何歳なんですか?」
「僕は仕事では雑用担当だからね、入社して3年になるけど、26歳だ。」
若菜は会釈をしながら下を向き「そうですか。」響にはそんな苦笑の中で若菜の顔が可愛く見えた。
「白石さんってもう、ご結婚されていますよね。確かの情報では息子さんが一人でいらっしゃるかなにかで。」
「最近は歳が早いか晩婚かで結婚の年齢が二つに別れるみたいだけど僕は大学のときに付き合っていた彼女と卒業と同時に結婚したんだ。早く結婚したからさ、もう社会のことはいまいちで、妻には頭が上がらないよ。」
「へえー、わたし奥さんってタイプじゃないからなんか結婚って聞いただけで、凄いと思います。」
「実際シビアなもんだぜ、現実の苦しみを味わうなら、結婚は正に身動きが取れないっていうか、自由なんて一つもないさ。この会社も、僕はさ田舎育ちだから、大学でこの街にやってきて驚いたことがたくさんあったよ。人にはぶつかり惨めな思いや孤独も味わったよ。しかしさ、こんなにも世の中が垢抜けてみえるなんて想像もしなかったよ。僕が結婚?そう考えただけで今でも不思議なもんさ。響係長だって僕が味わう以上にたくさんいろんなことを経験したんじゃないかな。」

「経験は宝さ!あった方が良いのさ!経験なくしてわたしの今はないからね。誰もが同じ道なんて行きっこないけど、それぞれが壁や苦しみの中でなにか新しいものを取り入れたり、大切ななにかを忘れていくもんなんだよ。だから、経験が一番と言わないが誰もが違う過去の修復を望んでいるんじゃないのかな。」
響は言った。
「そう言えば係長!あの不思議な館の占い師はどうなりました?あのあと、会社からそのまま家に帰ることは出来ましたか?」
白石は言った。
「いや、逃れようとしたがしたでまた、占い師に会っちまうんだ。不思議とその占い師が僕になにかを伝えたいか?潜在能力の話をたくさん、してくるようで。」

「不思議な話ですね。でも潜在的な力を係長が持っていることはなんとなく分かります。」
若菜は言った。

「過去には人には言えないことがたくさんあったけど、そのままレールを僕は歩いてきた身分だから、道を外れた空想が他にあるのかはピンとこないんだよな。」

「そうですか。占い師にはなにか一般の人には見えない6感的なものが見えるんですかね。響係長も気をつけた方がいいですよ。危ない橋は出来るだけ避けた方がいいですよ!」
白石は言った。

「ああ、わたしも占い師を求めているわけではないからね、ただ通り道に必ずあの占い師に合うんだ。」

飲み会は降板を迎えいよいよ、それぞれが本音でなくてはいられなくなった。若菜もかなりお酒が進み色っぽい女性に変わっていた。男子社員に人気な若菜はその色気とは反対に純情、素朴なイメージがある。あの占い師の不思議な出会いから響にはこの世界の何処かに計り知れない極楽浄土が存在するのではないか?全く6感とは反対に生きてきた響ではあったが白石に言われまた、飲み始めた。

6 もしかして、占い師が言ったように自分に潜在能力や第6感の目覚めなどあるのかもしれない。生きていく事実でさえ、占い師と話をしたことで曖昧に存在していることを響は感じていた。
ビルを通り、会社から離れると占いの館が迫ってくる。占い師はまた、通りすがりの響に声をかけてくる。「覚悟は決まったかい?人生にはそれぞれの分岐点がある。あんたは家族を大切にする以上に社会や人間関係も大事にしてきたと見える。そして、ありとあらゆる経験から世の中で成功するよりも、もっと大事な分岐点に立っているんだ。分かりにくいとは思うが天があんたを見放しにはならないのだ。これも現実また、潜在能力も現実のものにしていく。この世で苦労は人並みに付けてきたみたいだが、肝心な潜在意識を発揮するまでにはいたってない。わたしの話すことは非現実ではなく、ありふれた生活に希望の根を膨らます仕事なんだ。あんたにゃあ、それが分かるか分からないか。」

会社の案件提出からプレゼンに至るまでやはり貴船は会社にとってなくてはならない存在だ。彼がもし、会社を辞めるときがあれば響は命がけで止める気でいる。
「あの、これコピーとってくれないか?」
白石は若菜に言った。
「分かりました」
「あ、それと部長のデスクにある資料間違いないか見直しといてくれるかな?」
「はい。分かりました」

若菜はパソコンと睨めっこをする午前中だったある資料においてオフィスには無線LANがあり資料のコピーをパソコンで確認出来る。若菜は、白石から受けた仕事を黙々とやった。
大学を卒業しまだ、あどけなさが残る若菜だったが集中力があり、熱心に仕事をする姿勢はオフィスでも噂だった。夏から秋にかけて初秋の風が窓の外から吹き抜けてくる、髪を束ねている、とても心地よい風だと若菜は思った。
この季節はやたらに台風が多い。ジメジメした天候が続き、雨が止み晴れわたる夕暮れの秋色に染まる夕日は、このオフィスで仕事をする最終のチャイムに聞こえた。日本人らしく情緒から離れればまた、情緒に出会う山も秋も紅葉でいっぱいになる季節だ。
締めくくる夏の終わりに赤とんぼが夕焼けの空を飛んでいる。真っ赤に染まった夕暮れは若菜をより美しくさせた。
1日が終わると18時を示していた。
響は占い師の言葉に何故かモヤモヤを感じていた。占い師は全く可笑しなことを言っていないからだ。自分が家庭を大事にし、仕事も大事にしてきた。しかし何故占い師はこんな当たり前に見える一般の人間に潜在能力を活かせというのだろうか?学生時代”バンドマン”だった響が大学を卒業した後にバンドはもう足を洗いそして、この会社に入社した。会社に入り収まりついた誰から見ても明らかに全くの”サラリーマン”だった。強いてあげるならソウルにノットった、ビートを感じることは学生時代でバンドを組んでいた調子とあう。
夢だ。夢を失い絶望の果に染まる暗黒時代もあったが今が幸せでないと言えば嘘になってくる。概念から占い師が発する言葉はかつてバンドを共に過ごした懐かしさや希望を与えてくれていた。人間は二つのことを同時には行えない。どちらか一つを選んで何かを諦めることが必要なのだ。そして、諦めるといつしか社会人になり、後悔に回ることも今を愚痴を発するに求めることもあるのだ。なかなか、人生とは上手くいかない、努力をして無駄になってきた人達を何人も響は見てきた。

7 実力が正義というが、何をなすにも結果の全てが世の中なら、結果に依存すべきである。物事は思いのままになるまで、失敗し続ければよい。物事は努力なしに功績は与えられない。今の現状を打開するなら時間の流れと共に少しずつ気付いていかなければならない。打開する壁は聳え立つがその壁が自分だけにあるわけでも無く、誰にも存在する高い壁や低い壁、あらゆる壁が人を妨げる。妨げまた、人は行動を起こすものである。その壁を越えるか逃げるか?立ち上がるか?削るか?素通りするかは全て自らの人生への価値観や経験に寄り添うものである。ある人には出来てある人には出来ない壁があるのは誰もが同じ道を歩んでいない証拠となる。明日躓いても明日躓かない人だっている。あらゆる占い師の結果にその人が勝ち得た乗り越えた壁が経験となりこれからの拠り所である価値観が生まれる。決して悪気がなくてやったことでも、人にはお節介に思えてくる時だってあるものだ。全てが順調に思えた人生だった響だったが新たなる壁を占い師から突きつけられた途端に震えが止まらならくなっていた。響には家族や仕事仲間だっている。慕う後輩や尊敬する上司だっている。ただ一つだけ違ったこととは占い師がいう潜在能力だ。これはもはや、地球的なレベルではなく、異次元の扉でもある。全てが順調に思えていた人でもこれほどまでに高い壁を突きつけられた存在がいるだろうか?脳の75%は作用していないと。地球上でこの75%の閃きが起こったとき異次元レベルのことがありとあらゆる光として存在するものだ。掛けてみる占い師の言葉に人間が成し得なかった75%の閃きに響の胸は高鳴った。
この問題は人類史上明らかにされていなかった。隠された能力であり、その能力を携えたものだけに与えられた使命である。響には何故か不思議に思う何点かのバンド活動からも、異様な物持ちだった。
75%が閃きとしてい冴えたとき、人間はどのような存在になるのか?あらゆる自然現象が見え手に取るようにわかるものだ。しかし、いつしか目覚めた75%の存在は過去を伺っても誰一人としていなかった。幸せとは平等に与えられているものである。つじつまが合うように解釈すると、世の中が全て矛盾していない状態になったとき、誰しもが平和に向けて人力する存在になり、あらゆる問題や悪しき行為はなくなり、犯罪すら起こさない世界平和がやってくる。きたる何十年後かにこの状況がやってくるだろう。しかし、人間は罪を犯し人を傷付けてばかりいる。世の中が平等だというなら犯罪者も平等であり、ホームレスや貧困に苦しむ人も平等なのである。確執をつくと、表面を抜きにした話だが障害者に関してこの状況は少し難しいかもしれない。羽ばたくあの世の生活には産まれてくるなり、手がなかったり足がなかったりと現実では不便なことが起こるがあの世ではそのような身体的な障害を持ち、人にとって羽ばたきやすく手も足もあるそうだ。不思議な話ではあるが、それが世の平等というもの。だから、死のレベルに於いて現実の世界で何をしたかが問題になってくるのだ。一辺倒に人の気持ちを考えず人を傷付けるのなら死んだ後に絶対に返ってくる。その苦しみは想像以上で肉体を破った世界にはもはや肉体は存在せず、現実社会であのようにしていれば良かったと後悔の念に狩られるのだ。狩られてもこの世には戻ってこれず光ある場所を求めて浮遊する。そして子孫にすがる。そして子孫は生地獄をこの世で経験せずにおられなくなる。これが因果だ。全ては遺伝子で決まると言うが、全ての存在はあらゆる過去からに着せられている。これが分かった以上、悪いことは避けるべきだ。
真相を理解するまで、響には少し時間がかかった。今まで生きた以上に溢れ出るパワーには潜在能力を持つものにしか与えられない勲章だ。これまであらゆる苦しみを飲み散っていった獅子たちに感謝と共に今生きる術が明らかとなった。現状を図るに直ぐに響は感性で察してみせた。思いの中で今ここにいない人を思案した。エグられる思いで首輪を付けられた人間の悪運な吐息と鮮血があった。返り血を知り土に生き埋めになった人々。銃口を向けられ四つん場になり頭を撃たれて死んでいった人々。憎悪の渦が息苦しいこの現代社会を見つめた。吐息にもまし、また、跪き駆け巡るストレス社会の渦で首にローブをつけ醜くも自殺した人々。ビルの屋上から身を捨てた人々の回顧の渦が響を襲った。一般人には分からないなにか苦しみを誰もが背負っていた。
「わたしはいったい?」
ある眩い光が光のカーテンが降り注いだ。
「わたしは大天使ミカエル!知情意の情を司る天使長、お前には人より何倍も辛い思いがある、その苦痛の悔恨の渦の中でわたしがやってきた!潜在能力の成果を知るべきである。」
そう言うとミカエルは去り、光から解放された。
光と闇は矛盾ではない、光と闇は相対的な意味がある。光の大天使に抱かれたあと、響はこころの安住を知った。
大天使は真の苦しみを持っているものにしか現れない。現実を知り、全てを放り投げても安堵する思い、母に幼い頃抱かれている光だった。
今に始まりそして誰もが安住の地で命を失う。体は失われてもあの世の光とはいつも神々しく光溢れたところだ。死ぬ気で生きた人々にとって救世主は苦難に聳え立つ砂漠にいつも産まれ落ちる。しかし、その歩みは凄絶に尽くしたいほど苦痛な道である。
霊的な何か、光の球が響には見える。集中して見ていると、光の球には天使達が羽根を広げ飛び立っている光だった。
「これが、第6感のエネルギーか、」
眩く光る太陽からまた、自然が光合成をする愛のエネルギーがハッキリと見える。草花一つ一つが愛によって酸素を人間に与えている。
響は一呼吸して立ち上がる、罪意識に狩られる人々のために、また、混沌とした社会にメスを入れるときが迫ったこと。ロクデモナイ呑んだくれが朝から酒を仰いでいた。不注意ににた喧騒を妨げられた呪いは夜も寝静まる光景を見出していた。

これを機に気持ちが変化した。妻と子供には潜在能力の凄さを見破られた。この宿命がある限り妻と子供には迷惑を掛けられない。物語の主役に抜擢されたこと、響に溢れんばかりのエネルギーの証拠に実体的な作用が必要だった。

占い師のもとに向かう。館に着くと占い師は威風堂々と立っていた。「お帰りなさい。遂に潜在能力が目覚めたようだね、苦しみや憎しみが分かるだろう。あなたは人類がなせなかった脳やエネルギーを越えた存在だ。そして、逸存のない系譜からあらゆる事象を手に取るようにこれから分かるだろう。その力を世のために捧げよ、あなたのいく道は険しく凄絶に尽く難い。願えども裏切らた人々の呪いはあなたの今胸にある。この井戸を覗いて見なさい。川上の水に映像が映し出された。戦乱の過去に血を労う親子の愛情、また、不幸にも情け容赦なく人を斬りつける場面、逃げても逃げても追いかけてくる悪魔、正に世の現実の在り方や溜息の渦に映し出された映像が響の内面を斬りつけ口から鮮血が飛び散った。
「どうだい?身体に異常をきたすくらいエゲツな映像だろう。人々はエゲツな映像から逃げたがる、そして過去の現実をなきまでにするのさ。しかし、あんたは不思議だこれ以上の苦しみに耐える精神がある。」

井戸の外からライオンが吠えている。餌を求めた虎が響に飛び交ってくる。「なんだ?やめろやめろ!」顔は襲われずにすんだが爪の傷が肩から血がドロドロながれた。目を一括に赤い目の虎を睨んだとき、瞬時に虎は石になった。
百獣の王は天に向かって吠えている。
「さあ!行きなさい!このライオンもあんたの味方だ!」
ライオンは瞬間に移動して響の左に収まった。
幻想か、あらゆる悪霊がzombieとなって襲われそうになった。右指を突き出し腕を払ったときライオンは大口を開けて全ての悪霊を食いちぎった。「なるほど!自分の出るところでもなかった。」
また、ライオンは左側に収まった。

8 「そろそろ日が明ける、明ける前にすることがある。思想をコントロールし霊的な力の使い方が必要だ、中にお入り!そしてこのドアを開けるのじゃ!」

妙な空間に入り響はおののいた。左側にはライオンが付いてきている。真新しい光の先には青い山や川が見えたがすぐ先にはひたすら暗闇で一本だけ道が続いていた。一歩踏み出すとその道の下から魔物が現れた。顔が皮肉で醜くく血を食いちぎった体がサソリの化け物だ。へばりついて腕を食いちぎられそうになりながら、腕を振り払ったがサソリはなおも噛み付いてくる。「痛い!」毒に惑わされた響はそのまま倒れ一歩進んだ道に倒れた。
気がつくとと館のベッドの上だった。占い師がグツグツ鍋を調理していた。「あら、気がついたかい?」まだ、サソリの毒のせいか響は起き上がることが出来なかった。「よほど毒をもらったようだね」3日間は寝ていたようだよ、魘されて。しかし、あんたもタフな方だよ!潜在能力を見出した人は何人かいたが、死を目前に蘇ったものはあんただけだ。」
「みな、そうやって試されてから死んでいったのさ。」

「悪いが水をくれ!」
水をあげたとたん響の体に戦慄が走った。毒がまだ抜け切れていない。体じゅうにまた、サソリの毒が舞う。「うっ」
「しばらく安静にしていなきゃならない。また、挑戦するかい?」
「今は考えられない」

「肉体と霊体は明らかに肉体の方が優位なんだが、霊力を使い方が全く分かっていないようだね。しばらくしたら自らの想像力から回復の為に花を咲かせる霊力を学ばせておかなきゃなんないね。」

「あの長い道のりから離れたところは地獄というところだよ、魔界を破壊しなければま世に安楽な精神を安住させることは出来ないのさ!罪を重ねた者がいく地獄というのは針山や火あぶりなんてとこもあるけど、自らの思案によるものなんだ。そしてそれを現実に悪した者がいくところだよ。それと悪魔がどういう関係と聞きたそうだね!霊体というものが怪奇な存在になってあの世で産まれてくる。これがまさに悪霊だ!まるで人の形をしていない。それは多くの罪を重ねた者だからね。憎しみや怒り、嫉妬や憎悪の存在になっている。それが悪霊だ!、
分かったならもう一寝入りしときな!時間は待ってくれない!」
毒が廻る朦朧とする中、不思議な話だと目を閉じた。
5日目、毒がすっかり消え、華々しい朝を迎えた。「もう大丈夫だ!」体からオーラが溢れ出した。
「人を思えば人に頼り自らを失う、争いは良いように見えてとても醜い者、敗者がいく悪なる道に花を咲かせよ!」

「花を咲かせる方法は実に単純な発想で出来る。まず目を瞑り精神を落ちかせる。そして闇に見える真っ暗闇で山肌に草原を想い出すと良い、その土から緑の茎から葉が映え、赤い花や黄色いはなが咲き乱れる!この思想の訓練をし、繰り返し行う!分かったかいあんた?」
と、占い師は言った。

響はイメージングをした。暖かな気候に爽やかな風が吹いてくる、山の間から草原に向かって心地よい風だ。闇から光にかえるイメージングが段々と付いてきた。おぞましい闇から明るい光へそして一輪の花を咲かせる。茎はイメージ出来たのだが、葉を付けるときが難しい、途中で何度も集中力が切れたが繰り返しイメージした。イメージングに入って丸一日を費やした。占い師は館から外へ出て占いの水晶を眺めていた。「今日はお客が少ないようだね。何処かで順風満帆で生きているやつはいないかね?やはり、わたしの考えの中で上手いように生きていくことが如何に罪深さをと思うのさ。人は働く、働くばかりだ、要するにそこで身勝手に嬉しいや楽しいを感じているのさ!それが何故罪だって?分かっちゃいないね?あんた!今、自由に稼いだあまり溢れる贅沢な食事をする時間に貧困でエゲツに苦しんでいく人も世界中の何処かにいるんだよ、だから、その食事が罪だと言ったのさ!汚く汚れているものの方が実際にはあの世では美しい!仏門に入る若い坊主の修行が何か分かるかいあんた?トイレ掃除だよ!一番汚いところに神が宿るのさ!それが舐めれるくらい綺麗にしなさいと言うのさ!」

「ところであんたの名前を聞いちゃいなかった?」

「僕は響だ!39歳既婚で子持ちだ!」
「へえ、良い名前じゃないか?わたしはゾク!占い師についた名前じゃなんともビンゴなもんだよ。あんたには何故か今までここにきた何人かと違う何かがある。わたしはそれを期待してんだい!途中でやれないと思えばわたしに頼れば良い。1日の訓練で霊的な回復の能力を覚えたようだね。まず、一勝だ!あの化け物のサソリを退治してくれるかい?」

「ああ、やってみるよ!ゾク!」
「もう一つ!左側にいるライオンだよ!普通は人間は霊獣は選べない、どちらかというと霊獣が人間を選ぶんだ、ようはあんたを助けるペットみたいなもんだよ。ライオンが霊獣についたことは今までなかったがあんたには霊獣が認める何か魅力があったとも言える。天使長からのじきじきの言葉だが天使とは元々は人間の僕の存在なんだよ。間違っちゃいけない、使われるのではなく使うんだ。万物の王であるライオンの名前をバクと付ければいい。飼いならすのは自分次第さあとは、自分の霊的なコントロールであらゆることが可能になっていく。とにかく霊力の使い方を学ぶんだ!」
「分かった!明日もゾク!時間をくれないかい?マスター出来るまで霊獣を飼い慣らしたい!」
「乗ってきたじゃないか!わたしもその気でいくよ」
そういうと、ゾクは寝室に戻った。

朝から何やら声が聞こえてくる一階の個室でバクを飼い慣らす声が。
ライオンを手名付けるまでになれば、あのサソリの化け物も大したことはない、そう考えしきりに手名付けようとしている。
バクはあまり響の言うことを聞かない、指し示すがバクは反応せず、部屋のあちこちを餌を求めて徘徊している。「分かった!分かった!
落ち着け!」鳥肉の束を持っていくとバクは食らいついた。やはり肉食だ。餌をやり終えた途端、あちらこちらまた、徘徊し始めた。
なかなか手付かずで慣れてはくれない。

「まずは猫や犬を思い出せばいい!ライオンも動物!犬や猫といっしょだよ!」

しかし、あちこちを徘徊する獣神に猫か犬かと言っても納得がおよそ出来ない。体が大きく人間をも噛み砕く力を持っているライオンに手を焼いた。手慣れをして5時間、少しずつ、手慣れの兆候が見えてくる。
「他には沢山あったんだい!猿が霊獣としてついたものや鷹なんかもあった、みな丁重に扱いまた、手慣らしていたもんだよ。時間がもう少し必要なようだね。なかなか名付けは難しい。1日のあるんだ!あんたの思うようにやればいい!」
ゾクは外の水晶まで進んだ。
外は雨が降っていたがレインコートのような魔道士の服ではあまり濡れなかった。ゾクが眉間に眉をよせエネルギーを水晶に送る。今日から新しい月であり、これから訪れるものを予知しようとした。水晶の奥の方から見えてくる灯りを見つめていた。「ふん、何かと騒がしいと思った。ライオンの霊獣が来るとはおかしいと思ったんだい。百獣の王に乗っとってあらゆる動物、つまり霊獣が集まっていた。不思議と自然の世界では食物連鎖が起きている。騒がしくなる霊獣たちの会話があった。バクへの促しにおいてまた、王として崇拝する霊獣たちだった。
「こりゃ面白くなるわい!」クスクスと笑う魔道士は水晶から離れた。

9 6日目で響は充分に霊獣を操れるようになった。「さあ!化け物退治だ!」
魔道士に招かれてドアを開けた。地獄のような悍ましい光景に道が一本あった。一歩踏み出す、容赦なくサソリの化け物は響に食いついてきた。バクを器用に操る、するとライオンの牙で化け物を食いちぎった、顕顕と一人の化け物は悪魔から離れ成仏しささやかな風になり、空へ飛び立った。
一つ魔物を倒した、魔物は霊体から離れライオンの口の中に小さく入っていった。
「良くやりましたね。」大天使ミカエルが天井から降りたち響の功績を讃えた。
ミカエルはさらに、「わたしたちは人間のお世話をするために神様に作られました。わたしたち大天使は3匹います。わたしは情の天使長、知識の天使長にはルシファー、意的な天使長にはガブリエルがいます。まだ、話すときではありませんが、天使長に何かしら不手際があったのです。わたしたち天使は元々は人間界に降りて人間の手助けをすることが仕事なのです。そして天使は人間の僕、万物の最高峰として作られたのです。」
その言葉を残すと天へ消えていった。

響はガッツポーズでドアの裏側にいるソグに手を振った。「やったぞ!ソグ!訓練の成果が出た、自由にバクを扱えるようになった!」
「大したもんだよあんたは!まあ、今の段階じゃあ、評価という評価はないが、時期に分かってくるさ。」意味しげなソグの態度だったが、とりあえず、1匹の魔物を倒したのだ。
バクは天に向かって雄叫びをあげた!「全自然における霊獣たちよ!今、ここに刻もう」
なにかしら言葉のような雄叫びだったが響はそのように聴こえた。

沢山の悪意から見出される思案や煩悩、煩悩からは人々に摩擦を起こし前に進むエネルギーを劣化させる。生きるべき全てを失ったものに自害をほのめかせまた、悪事を重ねる。汚いやり方と不運にみた苦しみから身をよだつ化け物に変える。人の憎悪から生み出したとは言え、人間の記憶には悍ましい悪が存在するものだ。痛みが消えない、ドロドロ血が流れていた人を無残にも生き埋めしたのだ。人間を人間と扱わず血を求めた魔物のように。人間は快楽を求めたが罪からは逃れられなかった苦しみが刃のように真っ暗闇の中で蠢く。生きては死に、死んでは死ぬ辛さをまだ、人は知らない。間違いを犯そうと人を馬鹿にしたとき、そん安易な考えは却って人を化け物にするものだ。今以上なものはなく今以下のものもない。ただ、いたたまれない苦しみに耐えるしかないのだ。あの世は永遠の世界だ世界観と浮かぶ様子で成り立ち、常に犯罪を好む憎悪しかない。今からあの現実の世界に戻りたい戻りたいと漂う化け物でしかない。

響には潜在意識があるがゆえに発揮する能力も明らかだった。1週間のレベルをあげてこの短い期間で3倍まであげた。手にはオーラが漲り、霊獣をバク以外にあらゆる動物を扱えるほどまでに成長した。また?ドアを開けるときに備えてだ、霊力の使い方を学ぶ。
フッと息を灯せば、火が放ち、目からは閃光がほど走った。一瞬で魔物を石のように痙攣させる魔術も手に入れた。響にとって、レベルが上がったのは間違いない。

館でゾクはまた、占いを初めていた、つうーと水晶を見ているとまた、新たにここを訪れる兆候があった。響と違い役益に叶っているものへの執着心を無くしているもの、そんな感じの人が現れるらしい。
ひとしきりにレベルが上がったことで新たにドアを開けて次の悪霊を退治するときがきていた。明るみな声でゾクと共に館のドアを開けた。左側でバクが荒業声をあげた。「よし!行くぞ!」真暗で潜んだ光景に再び圧巻させられる。勇気を振り絞って道を進んだ。小さなキューピーがニヤニヤ笑いながら横を素通りする。ふと右足を前へ踏んだとき軸足の方に冷ややかな感覚があった。「手だ」悪霊の手だ!右腕で引きづりだし、頭は人間の顔、体はうさぎの化け物が現れた。「キエーー」部笑をする化け物を右手で首を掴み右に一気にへし折る、しかし化け物は首を長く伸ばし顔面めがけて襲ってくる左手で霊獣を操りバクの牙で首を噛み切った。頭がボロっと取れ、体と分離した、性懲りも無く厄介で右腕でなおも響の体を掴み下へ引きづろうとする。霊獣の鷹を呼んだ、空から現れた鷹はとっさに響を掴み上へ飛んだ!化け物の手を離しバクが最後に体もろとも噛みちぎった。魔物と霊体が離れ霊体は浄化された!そして魔物はバクの口のなかで収まった。
「やった!」ガッツポーズと安堵だ。響は化け物に噛まれた右腕を損傷していたので、また明るく見えるドアに戻った。成果が上がったようだ。「よくやったね!あんな化け物見るだけ身震いしたさ!さあ!横になって傷の手当てだ、2、3日は安静にしていなきゃならないよ!」
そういうとゾクは調合した薬を響に飲ませた。

横になった響は悪夢に侵されていた。気丈に振る舞う凛々しさの中でえげつな人々の憎悪を感じていた。夢から醒めたとき汗がしきりと出てゾクを呼んだ。「どうしたんだい?悪い夢を見たのかい?仕方ない、これだけの化け物を見て普通にしている方が可笑しくなる。まだ寝た方がいい。」そういうとゾクは寝室から離れた。
働きづくめだった響にとって潜在能力を活かせるいま、以前までの暮らしと一変していること。こんな不思議なことが現実で起こっていること。誰に話しても信じてもらえないことが悔しい気持ちにさせた。しきりと涙が出て布団を噛んだ。

10 世が開けると綺麗な羽衣をゾクが用意してくれた。2匹の魔物を退治した成果もあるが、体の損傷が激しく痛みに響は耐えて眠っていた。右腕の損傷が激しく夜通し激痛に耐えていた。ゾクの用意してくれた羽衣で傷の損傷は80%は防げる。術を掛けて丁寧に編んだ代物だ。ベッドに這いつくばって痛がる響がいる。朝晩、調合した薬を飲みまた、眠る日が3日間は続いた。響には薄々分かっていた。以前にゾクに言われた言葉がいったいどんな意味だろうなど全く考えなかった。ふと気がついてなおさらに気をつけて注意を払いながらによった戦いの中で、化け物の存在とは?過去に浮遊する魂か何かを?歴史を紐解くには現代の最高の技術が必要だ。温故知新と言う諺は正にそれを意味するものなんだろう。蹴躓き、狼狽えるばかりしかできないベッドの上に鮮血がほど走った。歯ぎしりがし悔しさのせいで口からは血が吹いていた。この現代社会から苦しみを取り除き英雄とは何か?人に言われて行動するより自らが動く手段に変わっていったこと。今までもそうだ、響には順風満帆な暮らしだった。順風満帆の暮らしだからこそはみ出す意味すら分からないでいた。歴史の罪とは人から愛されているばかりではなく愛することの方がずっと難しい。罪意識?これっぽっちも感じてはいなかった。順風満帆の生活をしている時間に貧困で苦しみを受けている人々もいる、どちらが良いのかさえ分からない毎日、いや全くそんなことは考えようにも気付きようにも分からなかった。ただ、今少し分かること、歴史の罪のためだけに全身全霊をかけて戦っていること。
しばらくして部屋のドアが開いた、ゾクは朝食を持って来てくれた、パン、牛乳、とシンプルだが、腹ペコな響は飛びついた。パンを口に押し込め牛乳をたっぷり胃に流した。朝食を終えるとまた、ベッドに入り込んだ。「しばらく、安静にしてなさい。」ゾクは言った。

世が明くる前は一番暗く険しい峠のようなもの、それさえ過ぎればなんのことはない明けの明星が光を与える。一番暗い峠こそ正に悪の終盤だった。これから生きる喜びや第二の人生において理由など全くない。誰も存在意義など分かりはしない。生きているから生きる、ただそれだけだ。歴史の謎が紐解き始めた今、苦痛の夜から姿を消そう。後ろ向きな考えからは何も生まれない、ましてや生きている理由さえ誰にも苦しみのない世界、苦しみのない夜明けを望んでいる。ただ、人間に与えられている存在価値とはそのようなものだ。崇拝者が術を決める法の制度があるなら、とても厳罰なものだろう。

11 1週間の休みにして体がほぼ快復した。響は羽衣をつけ、剣術の修行に励むようになった無想の剣を与えてくれるという、ある仙人の山へ向かわなければならなかった。ゾクが館の奥へ通した、そこには八代があり、鳥居があった。何かしら八百万の神々を祀っているのか、その先には威風に聳え立つ山々が見えた。「山の中腹にある仙人に会いなさい!」ゾクがそういうと、後ろへ去って行った。鳥居に手を合わせ右や左に狛犬が立っていた。進んでいくうちに急な坂道になり、ぬかるんだ道を進んだ。傾斜のある岩壁に着いたとき、3人の女性が立っていた。「この岩壁を登りきれば夫婦になり得る縁を授かることが出来るんです。どうかお力添えを!」そういうと三段あるまず1段目の岩にしがみついた。幾人かの人が登ったのであろう、上からは順に鎖が繋がれていた。「ほら!その鎖を持つんだ!早く!」そうすると1人の女性は1段目を登った。後に2人も同じように登った。二段目三段目と3人の女性は無事に登り切った!「あとは、なだらかな傾斜だ。降りるときとは反対の方から軽く降りればいい!」そう響が言うと、「ありがとう」と三女は言った。

人の為に、動くと、しきりに力が漲っていった。仙人の住む頂きまで歩き続ける、途中岩壁から下を見たが燻んでいて否応のない疎外感に襲われた。また、一歩一歩と砂利道を進む。サラリーマンには応えてはと震える足でも頂上へ向かわなければならない。助けになるものは何もなく、ただ自らの体一つで、山の中腹に差し掛かったところで、滝が流れていた、いったん顔を洗うと日が暮れていくのか秋の夕焼けに圧巻させられる、響は赤く染まった夕焼けを見ながらテントを立て今日はここで夜を明かすようにした。日が暮れる秋の空には痺れ雲が列を成し程遠い光は足元まで夕焼けの光で照らしていた。僅かに見える、麓を見下ろしたとき、今日1日目で登った形跡か、小さく見えた。明日には頂上に行ければいいのだが、と考えているうちに簡単な食事をとって、響は眠りについた。
カチカチとなる焚き木が燃えている。夜の最中に深い夢を見た、若菜がニコニコして先輩を引っ張っている、「貴船がまた、プレゼンするって!」「出世ガシラだからなあ!あつは」
部下たちの笑い声が消えることはなかった。響は眠りについている中でスーっと涙が溢れていった。

パチパチ、焚き木が消えかかり炭になっていた。時計を見ると朝の5時である。川辺に行き顔を洗った、身支度を済ませ頂上を目指し歩き始めた。ギシギシと地面を叩きつけ歩く、「今日は必ず頂上に行く!」そう決心すると薄暗い朝霧に何も見えない洞窟や村落が中腹を過ぎたあとに見えてきた。たくさんの人々が農家や農牧に励んでいる麓がある。小さな村だが、足を止めるには丁度いいと、歩き始めた。寒空の中で日が差してくるのが分かる。「あさだ!」
山と山の間から朝日が差している、地面をゆっくり光でで照らしている。手を合わせ、「ありがとうございます。」今日の1日を無事に頂上へと祈願しながらまた、前を見つめて歩き出す。
時計を見ると12時を差していた。太陽が真上に上がり暑さを感じた。「ヨシ!ここで昼食だ。」携帯用のビスケットや缶詰をあけ、口に入れた。川辺で汲んだ水を飲み顔を洗った。
昨日から歩き出しておそらく3分の2は着いているくらいだ。あと3分の1、と頂上までの道のりを険しい山々が未だに見える。途方にくれるともなく、進んで行く、屋代があり牧草には牛の群れ、街とは違い、田舎には田舎なりの暮らしが見えてくる。馬を見て、牛も見た、人を見て山を見た、朝日や夕日、そして手助けを出来た喜びが溢れてきた。喉元を込み上げる愛なる気持ちは何故だろう?少し考えてみると、この景色を眺める尊さを仙人のところにいくところで得られることなのか?と響は思った。
自然の偉大さを歌った歌もある、自然を描いた絵画もある。しかし何よりも凄くて嬉しいこととはわたしはこの自然の圧巻さと自然を実際にじかに感じることだ。そう感じた。
何食わぬ顔をしてビルの隙間に満員電車で会社にいくことよりも、この壮大でちっぽけなわたしを自然は示してくれている、そう感じた。響は大切なものを受け取った。

ひたすら前を進みそして登る、足が震えてガタガタになる体を自然の一部として捉える、どんなときでもどんな場所でもこうして農作物が育ち秋の実りを教えてくれ、そしてその実りを私たちが食べて生活する。どんなにちっぽけなことであっても、決っして悪事は起こさず、足一つで山を越える、鍛錬のなかに入り込まれた文明歴史とは裏腹に全く別世界が存在していた。私たちは何かを産むが私たちもまた、産まれた立場ということを山肌は教えてくれた、山の幸を頂きまで持っていかねば、そういう決心で進んだ。やがて日が暮れる頃になりと小さな灯りが見えた、「あれだ!ついに頂上まで、仙人まで到達したぞ!」小屋は何かしら歪で小屋の中には誰もいなかった。ただ、そこには劔が一本理不尽に横たわっていた。「なるほど。」
響はその無双の剣を受け取った。
一振りするたびに、オーラが明らかに反射して見える光にもます光の剣だった。
そして、帰り道を急いだ。

12 ドアを開けるとゾクが待っていた!「おお、帰ったかい!それで無双の剣は手に入れたのかい?」「ああ、手に入れたさ!」
「ながらく、旅路は果てしないようだな、ゆっくり休むといい!」
響は部屋に戻りゾクの作ってくれた夕飯を食べた。「ゾク!しばらく休ませてもらう。ときは急がず、また化け物退治にいかなければならない、2、3日は安静にして体力と霊力の回復に努めるよ。」
「ああ、好きにするがいいさ!」
そういうとゾクは自分の寝室に帰って行った。
霊肉共にエネルギーのある無双の剣を振り切ればまた、魔物が退治出来る。一つまた、響のレベルがあがった。長い道のりの果て頂上へたどり着いたいきさつを何故か懐かしく思えた。そこには明らかに神の存在があったからだ。何か強い力に導かれ遠くにある頂上へ向かった。その道中に動物や植物、自然の偉大さを感じられずにはいられなかった。響にとっての仙人に合うことが目的ではない。その自然の懐かしさを受け入れる道中に本来の意味があったからだ。
仰向けになり天井を見ているとしきりに涙が出てきた。1人で戦い、また新しい感覚も目覚めようとしている。現実ではないことがたくさん起こっている。自然の懐かしさから幼い日の頃を思い出していた。土に戯れ、水をおもちゃのバケツにくみ、草花とともにあった懐かしい日々を。「きっとわたしに、出来ることは限りがあるはず。」響が思うほどつまり切った汚れを全て取ることには限界があった。薄々気付いていく響のこころにも涙が流れた。
2、3日は安静にし、霊力のコントロールの練習に励んだ。霊獣を自由に開放し、無双の剣を使えるようにしなければならない。光からくるエネルギーに霊力を剣に与え、光で魔物を裂く!真っ直ぐに接近戦と光の放出にし遠距離からの闘いも可能にしなければならない。想像上で展開する感性をフルに活用し繰り返し印象付けていった。2日目になると、胸から腕へ腕から無双の剣までエネルギーの開放に成功していた。あらゆる魔物から体を守る羽衣を付け、無双の剣で魔物を裂く!力まず、軽く無双の剣を振り回してみた、イメージしたとおり勢いのあるアックスのように硬く砕くことも可能だ、また、日本刀のようにしなやかに殺傷能力のあるダメージを与えることも可能になった。
「ふん、」段々と響はたくましくなっていた。現実主義に捕らわれていた時期からはまた、空想や瞑想の力は明らかに眼を見張るように成長した。
「おや?まだ起きていたのかい?」ゾクがドアからのぞいた。ベッドの上で仰向けになり無双の剣を握りしめていた。「ああ、」
響はそう答えると、握りしめていた剣をベッドの横に立てかけた。
「そろそろ分かる頃だと思う。この世界には奇怪的なことが多いが実に単純なことなんだ。仙人の道の間中、感謝の連続だった。」
「当たり前さね!苦労は一番美しい。またどんな世界でも千差万別、苦労の尊さは同じなんだ。しかし、あんたは実に上手くいってる。人は却って疑い信じることを忘れていく。何かしらあんたには無邪気な子供のような冒険心がある。それが一番大事なんだ、皆は忘れていくがね。それと、”タチ”が悪いのはそれを忘れたまんまにしているのさ!しかし、あんたは違う、あんたは現実の壁にそのまま突進する勇気がある。慣れ合いを許さない真っ直ぐなところがある。まあ、話はこのぐらいにしとくよ、ゆっくり休みな!」

響もまた、人間であり、ゾクも人間であった。強いて霊力があるのも人間のサガだ。察する能力や距離をとる能力は正直な話、5感ではない、先を読む力やあらゆる脳の75%をもしかしたら使っているのかもしれない。響に備わっている勇気もまた人間にとってとても大事な要素だ。生きてから死ぬまで何人の人たちと出会い、そして別れていくのだろうか?死ぬときからわたしたちは旅に出る、花の楽園にいき、羽を伸ばして自由に舞う蝶々のようなものだ。現実社会は蛹の状態にあるのかもしれない。
歴史の夜明け前は常に暗い。

13 秋の朝日が窓から吹き抜けていた。4日目の朝、響の体力と霊力は完全に回復した以前より霊力がましている。無双の剣には何故か家紋が彫られていた。「ヨシ!ゾク!ドアを開けてくれ!」そう促すとドアは開いた!
「その無双の剣と羽衣があればあんたは無敵さ!輩をやっちまいな!」
ドアを開けると憎悪に削られた空間に道が一つ続いている。一歩一歩歩いていく、たくましくなった響を見るなり恐ろしく怖がる霊人がたくさんいた。横目で流し、先を急いだ。バサバサと奇妙で不可解な極悪蝶が襲ってくる。すると無双の剣が反応し数十匹の極悪蝶は灰になった。更に前に進む、下を見つめると数えしれない地獄の人々が「助けてくれ!助けてくれ!」と暗い海で喘いでいる。カツカツと足を払い前へと進んだ。響はもはや、悍ましい光景も霊力で明るい景色に変える想像力を手に入れている。「お前如きがわたしに立ち向かいにくるとは戦国武将で名も通ったわたしの罪を晴らしてくれるのか?」
そのとき、大天使ミカエルが降り立った。
「響様、お気を付けてください、こいつは並ならぬ悪霊でございます。」
鋭い刀で武将は響に斬りつけた、背後に構えかろうじてかわした、しかし次の瞬間、吐息で吹き飛ばされた。眼を見張る早業で応戦してくる。無双の剣でかわし、居合が続いた。「くそ、手強い、スキがあれば打ち込めるのに」
響は無双の剣を上部に構え、エネルギーを集中させた、あらゆるオーラが響を輝かせ、とっさに飛んでくる武将を頭から足の先まで無双の剣で振り切った。「うっ」武将はそのまま倒れ込んだ。口から血が出て傷口からは悪魔が飛び出していった。次の瞬間「ありがとう」と聴こえ、天へ武将の魂は成仏していった。
「お見事です。」ミカエルは天へ消えた。

深い傷はないが霊力を使い切った響はドアの方へ戻り、ゾクの前で倒れ込んだ。
「よくやった!」ゾクはドアを閉め、ベッドへ響を寝かせた。
響の熱を測ると38度5部、カーテンを閉め、辛そうにする響をゾクは看病した。羽衣からはすこし切り傷があったがいずれも軽いあざだった。響はその晩、うなされた、悪夢のような激戦から体力のほとんどは失われていた。
6日か7日は安静にしていなければならない。
寝むりについた、響を看病し熱が下がったのを見計らってゾクは部屋から出ていった。
峠が何度もあり響の体や精神はボロボロになっている。ベッドから落ちうずくまりながらもベッドに這い上がり小さな傷口から血がドロドロと、霊力が下がり狂おしい悪夢で響は気が狂いそうになった。夢か現実か分からない状態が続き闇のブラックホールで痛め付けられ悪漢に及ぶ不可解な現象が続く。
2日目の朝は多少落ちついたにせよ、精神の傷はまだ癒えていなかった。ゾクが心配そうに朝食を運びなんとか自力で食べるのが出来たが、食欲がなく段々と身体が細くなっていた。
3日目の朝には愚痴を零し辛い涙を見せるや、激怒し物を投げつけた。悪魔を払うには自己犠牲にしかない。そう思うゾクは声もかけなかった。息苦しい地獄の苦しみが闇のなかで光と戦っていた。肉的に勝利したなら今度は霊的に勝利しなければならない。法の掟だ。
そんな状況になりながらもなんとか耐えている。
4日目、あらゆる肉的霊的な試練に耐えたところがあった。ベッドから起きてゾクの部屋のドアをノックした。
「どうだい?元気になったかい?」
「不思議なもんだな、ゾク!耐える力こそ本当の強さだ。それだけの能力を得るに相応しい試練だったよ!いや、まだ終わっちゃいない、わたしの子々孫々に於ける罪を清算しなければならない。これが最後になると思う。」
「ほう、よく気が付いたもんだね!祖先の力は壮大だよ。しかし、壮大でもわたしたちは争いの子孫の末裔なんだ。そう、これはあんただけの問題じゃないのさ、地上にいる全ての者にもあると言えるのさ、あんたが、ただ、自らの過去生について罪を償ったに過ぎない。これからは誰もがそうしなければならないのさ。」
「神がわたしに伝えたかったこと、が少しずつ分かったよ。現実主義にとらわれ、あらゆる歴史の末裔の中で、もちろん大事なことがあるが、それを当たり前のようにこなした者だけに値する過去生への償い。ようやく、分かった気がする。」
「分かったようだね、最後に勝つのはあんただ、そして、真っ直ぐな子々孫々に於ける血統をみせてやれ!何度も言うが最後に勝つのはあんただよ。」

5日目、6日目は霊的にコントロールと潜在意識の中で燃える魂に火をつけていった。
誰もが悔しがりまた、過去への後悔で今生きることへ自信が持てなかったり、恥ずかしがったりしている。結局、人間の行き着くところは人が大事であり、子々孫々に於ける祖先が大事であったり、むろん現実も大事だ。目に見えないものへの配慮や神仏を尊ぶ姿勢も大事だ。忘れてはいけないこと、それはどんなつまらない生活をしたって、どんなにひもじく苦しい思いをしたって、若くても年をとっていても、生きていればいい。神はその生きている喜びをいつどんなときも感じていなさいというのだ。
響は仙人やこの戦いに於いて、勝ち続けた。
天に関してこころをたぐさえるならば、100万円を稼いだササリーマンよりも道行くコンビニの外でゴミを拾いゴミ箱に捨てる行動の方が天は喜ぶ。そうして、天をいつも喜ばせていれば自然と幸せになるものだ。

14 7日目、じっくり明日への気力をつけるため、体力を温存していた。深い瞑想に入る響、全ての導きに於いて最後の決戦が明日に迫っている。わがままも個性も何もかも考えず無心に瞑想をした。礼拝堂に連なるわが祖先の道を仰ぎ、くる行く決戦に備えまた、瞑想に励んだ。
霊獣と羽衣、そして無双の剣、戦いの準備は整った。あらゆる精神を霊力に無心で挑む。

「さあ、準備は出来たかい?あんたの先祖を償う時が来た、ルシファーはもう既に屈服している。あんたに与えられた任務はそのルシファーに使えていた悪党だ。闇を光に変えよ!あんたなら出来る。そう信じているよ」
そう言うとドアを開けた。
ドアの目の前には鈍い光で動き回る悪党か化け物が直ぐに、待っていた。9ある頭を動かし体が半端なく大きい、強いていえば大蛇の化け物だった。響は無双の剣で頭に飛び交かる。尻尾を体に当たられ羽衣に血がつく、「なんのこしゃくな!」倒れながらも別の頭に飛びついた。大蛇は目から熱い光線をだした。右腕にその熱さで火傷した、「くっ、手強い、今まで戦った化け物とはわけが違う。」
9つの頭を揺らしながらこっちを見ている。
そのとき!「霊獣をだせ!響!」とゾクは言った。微かに動く左手をまくし立て、バクを呼んだ、「援護してくれバク!」そう言うと、バクは首に食らいついた。その隙に真正面から左腕から真っ直ぐに飛び交かり、上部からバッサリ光の剣で下部まで斬りとった。急所を喰らい、大蛇は底へ倒れた。
「やっと終わった。」

すると天からミカエルとガブリエルが降りたった。ミカエルは言った。「響さんありがとうございます。助かりました、あなたの勇気が魔物を倒すことが出来ました。」
ガブリエルは言った。「わたしは意的な天使長ガブリエルです。素晴らしい姿でした。響さん、行動力は見計らえるくらい素晴らしいものでした。」
ガブリエルはそう言うと、テレポテーションで一瞬にして響を自宅のベッドへ移した。

15 「あなた!時間よ起きて!会社に行く時間よ」
お味噌の匂いがして、ハッと飛び起きた。
妻は驚いた顔をしている。響は一瞬、無双の剣を探そうとしたが、状況が分かったようだ。
「今何時だ?」
「7時半よ!」
「何やら夢を見ていたようだ。」
下のリビングに行くと娘たちが何やら騒いでいた。テーブルに座る娘二人を見ると響は安心した。
「貴船さん、またプレゼンやるそうよ!締め切りが迫っているんでしょ!」
「ああ、行ってくるよ」

会社に出勤すると若菜が元気よく挨拶してきた。「係長!おはようございます!」
「ああ、おはよう!」
「貴船はもう、出勤しているのか?」
「まだ、みたいですね、昨日残業で徹夜したみたいでしたから、」

周りが何やらざわついた、「さあ!仕事だ!、光へのな!」
響はニヤリとわらい会社のビルのもう、存在しない館をチラッと見て、仕事に取り掛かった。

2016年 10月5日
現実と非現実の世界
作 イッシー

現実と非現実の馴れ合い

現代の社会の混沌観を書きました
是非、読んで頂けたら、嬉しいです。

現実と非現実の馴れ合い

第6感 脳に秘められた覚醒していない部分からの読み取りから、社会から離れた不思議な世界。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-26

Copyrighted
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