双つの神

 跪け、わが魂よ、無個性なる心よ、
 平伏して、理不尽なる異教徒神に 頭をがしと掴まれて、
 地に額を擦られながら、肉を裂かれることよしとして、
 憎しみを心臓に刻み、次の風景に跪くことをせよ──かの燦爛たる月光。

 呪え、わが魂よ、非人格の領域よ、
 貴様の後頭部を掴む、澄みきった硝子製の腕、
 背後に拡がり四方を閉ざす硝子盤 彫刻の翳波うつ「現実」なる神、
 俺は貴様を憎んでる、つまりは愛し信仰す、故に反逆の刃を投げつけよう。

 燦爛たる月光 死と虚空を照り返し、
 硝子盤なる現実もまた、それ等孕んでる──俺が、そう還元したからだ。
 つまりはかれ等、双頭の一神か?──美しく、冷たく硬いのがその明証、

 俺、硝子製の気体に横臥しおよぐよう──
 わが身は死と虚空でのみ寛げて、されど憎め、青の血と銀の精を迸れ、
 ひとは何かに跪く──されば詩人に必要は、跪く神、反逆を打つ神の双頭。

双つの神

双つの神

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-21

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