Nymphaea
夜を吐き出して、砂に埋まっていく冷凍睡眠カプセルと、星の声がきこえる貝殻。倒錯してる。女神、というなまえの狂ったひとが、ぼくらの倫理観を粉々にしていく。あのひとの胸に咲く、睡蓮が、きれい。
孤独を愛していた、雲雀と、きっと、それなりにかまってちゃんなぼくの、初夏のコンビニ探訪記と、限定アイスクリーム。二十三時五十九分に閉まる、スーパーマーケットの、うすぐらいイートインスペースの、つめたい椅子の思い出。かたわらにいたのは、かなしみなど、とっくのむかしに捨て去ったかのように明朗な、ゆうれいだった。無意識に触れた、雲雀の指先に、心臓の拍動を感じて。月のクレーターを想わせる、冷凍睡眠カプセルが埋まっているところ。毎夜、切なげに祈る、祈りクラブのひとびと。それをただ傍観しているだけの、生命体の役割で、ぼくと、雲雀はいる。
Nymphaea