Nymphaea

 夜を吐き出して、砂に埋まっていく冷凍睡眠カプセルと、星の声がきこえる貝殻。倒錯してる。女神、というなまえの狂ったひとが、ぼくらの倫理観を粉々にしていく。あのひとの胸に咲く、睡蓮が、きれい。
 孤独を愛していた、雲雀と、きっと、それなりにかまってちゃんなぼくの、初夏のコンビニ探訪記と、限定アイスクリーム。二十三時五十九分に閉まる、スーパーマーケットの、うすぐらいイートインスペースの、つめたい椅子の思い出。かたわらにいたのは、かなしみなど、とっくのむかしに捨て去ったかのように明朗な、ゆうれいだった。無意識に触れた、雲雀の指先に、心臓の拍動を感じて。月のクレーターを想わせる、冷凍睡眠カプセルが埋まっているところ。毎夜、切なげに祈る、祈りクラブのひとびと。それをただ傍観しているだけの、生命体の役割で、ぼくと、雲雀はいる。

Nymphaea

Nymphaea

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-20

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