three spoonfuls of suger スプーン3杯の砂糖

three spoonfuls of suger スプーン3杯の砂糖

第3次世界大戦終戦間もない西暦2654年―――旧日本であるヴィニアリア王国。


光が見えた。
あの時。
本物の光だと思った。
でも、違った。
蜃気楼、幻。

地獄に終わりはなかった。

―終わりが始まった―

終わった…
終わった、終わった、終わった…!!?

負けたんだ。


この先どうなるんだ??

この先に待っているものは…

死??
それとも…もっと悪い事態に…??

―いまとむかし―

俺はシン。
2654年11月9日現在、15歳。
青年兵団には入団させられなかったから
いままでは廃車に住んでた。
え?
青年兵団って何かって?
まるで戦争中だって??
何言ってんだよ、
終わっただろ。戦争。
は??
お前どっから来たんだよ?
まぁ、
説明してやろう…。


そもそもの原因はあの年だった。
2011年。
ターニングポイントだったな。
俺が生まれるずーっと昔だった。
ここで大きな異変が起きた。
昔はトーホクって呼ばれてたらしいこの場所。
地震や津波。
それに、まぁいろいろあったらしい。
そこから、食糧危機、経済危機、貧富の差はみるみる広がって
波紋は世界中に広がった。
だんだん、
だんだん、
堕ちて行った。
2599年、冬、
カリカリしてた日本と中国の仲が決壊した。
原因は領土問題。
醜いよな。
この戦争で死んだ数千万人の命と領土なんて
比べるほうがおかしいだろ。

いまさら言っても遅いけど。
まぁ
そのあとは、
アメリカがついたこっちが有利だったね。
時間はかかるけど
着実な勝利を図ろうっていう主義だったらしい。
敵国をじわじわ崩していった。



で、
裏切られたんだ。味方にね。
核兵器イッパツで壊滅だったらしい。
俺はその年生まれたんだ。
俺は希望だった。
暗闇に差し込んだ一筋の光。

15年で何が変わった??
国が衰退し、
負けが見えてきた。
あぁ…俺の家族も。
崩壊だ。
捨てられたんだ、希望は。
今は、日本の負けが世に広まって。

ここに至るんだ。

―おかえり―

俺は今港に居る。
兵士たちが帰ってきたんだ。
みんなやつれてる。
父さん、兄さん達、帰ってこないかな…。

俺は5人兄弟の末っ子だった。
みんな戦争に駆り出された。
父さんも。
母さんは俺が5歳になった時、死んじまった。
俺、よーく憶えてる。
母さんが特別甘やかしてくれたっていうんじゃないけど、
手の温もりとか。
優しい人だったな。

さっきからずーっと父さん、兄さん達捜してんだけど、
こんなに人多いんじゃ捜しようない。
でも、うちは壊されたし、今は廃車住まいだし、
とりあえず、うちがあった場所に居れば何とかなるかも。





それから俺は、一週間、うちがあった場所にいた。
昼と夜に二回ずつ合計4回、廃車に戻るとき以外、
ずっとそこに居た。
俺たちの思い出の跡。
いろいろ思い出したんだ。
ホントに、いろいろ。
父さんとの思い出はない。
タツヤマゴロウという名前と
母さんが残したこの懐中時計が頼りなんだ。
10才まで育ててくれたはす向かいのおばちゃんがいつも言ってた。
『戦争が終わって父ちゃんや兄ちゃんを見つけないといけなくなったらこれを頼りに探すんだよ、
     シンちゃんならわかる、本当の父ちゃん、兄ちゃんを見つけるんだよ。』


……おばちゃん、やっぱり俺見つけらんねぇや。


2週間と4日がすぎて、
もう帰って来ないのかと思ったりもした。
でも今諦めたらだめなんだ。
家族をまた結び付けられんのは、俺しかいない。


3週間と6日が過ぎた。


いま日本は混沌の渦に巻かれている。
情報は錯そうし、
根も葉もないうわさが飛び交い、
混乱が混乱を呼ぶ。


もう無理なんじゃないか…??
そう思った。
やっぱり、帰って来られなかったんだ。
覚悟してたよそんなこと。

でも、なぜか、頬が濡れている。
どんどんあふれてくるんだ。
もう、どうにでもなれ。
ここで餓死したって構わない。

どうせ、もうすぐ、敵軍がやってきて、
なるようになるさ。
そうだよ、いっそ死んでやる。
母さんがいる。
いないことを願うけど、
たぶん、父さん、兄さん達も…。
みんなのところへ行くんだ。
息を止めれば、良いんだろ…??!
そうだ、最後の呼吸だ、この深呼吸が最後…
いやまだ、次で終わりにしよう…。
あぁ、後もう一息…。
息を止める。目をつむってみた。
この世の終わりが見えてきた。


















「シン??!シンか??おい何やってんだ??おい、シン、シン!!」




「兄さん…??」

「おい、何やってんだよ首に手ぇ当てたりして。」

「…ここは、天国…?それとも地獄…??」

「何言ってんだよお前…??」



俺は、自分が死んでないということに、気づいた。




兄さん…????
帰ってきた??

やっぱ俺、死んでる???



「に…兄さぁぁん!!!!」


つづく。

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three spoonfuls of suger スプーン3杯の砂糖

第3次世界大戦終戦間もない西暦2654年―――旧日本であるヴィニアリア王国。 自由を手に入れると心に誓った5千人もの少年少女に舞い込んだ知らせ。 「王政脱却ニ加担シタナラバ未来永劫ノ自由ガ約束サレルデアロウ…」

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-04-24

Copyrighted
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Copyrighted
  1. ―終わりが始まった―
  2. ―いまとむかし―
  3. ―おかえり―