理智論評教育骨子

「理智論評教育骨子」 令4・6


1 世界に優劣はあるが優劣はない 世界は環境によってのみ成り立って居る
・ 平等とは法であり、平等は救済である そしてのその平等とは、何事にも何者にも実際に優劣が存在することを認め理解しないことには始まらない
何故なら何事も何者も優れた面と優れて居ない面を有して居るからである 優れた者が優れて居ない者を見下せるようにする為ではない 自分にも他者にも平等にある内側の優劣をよく知りよく意識することが出来るようにする為である
・ 優劣をクッキリとハッキリとさせる口実で平気に公然と自他の優れた部分や優れて居ない部分を口にしてはならない しかし言葉尻に拘って揚げ足を取り合えというわけではなく、何より優劣を自分の優越感に繋げるための道具としてはならない
それと同時に、本来は自分の劣等感を確かなものにする為であってもならない 所が劣等感を感じるような境遇に立たされて居る者がそのような卑屈な感覚に陥ってしまうのは避け難いこととも言え、而もそれは優越感を感じようとせずには居られない者にも当て嵌まることであった
だからこそ世界にとって何よりも重要なのは、劣等感を感じずには居られない者たちが決定的に優越感を否定し拒絶しその意を固くすること、それそのものである
優越感を持つということは、極めて致命的な過ちであり人としての重大な欠陥となる 分岐点となる あらゆるものの障碍となる そのような優越感を固持し棄てきれないような者が本当の意味で劣等感を感じずには居られない者に寄り添えることはない
優越感を棄てきれない者はまた或種の劣等感を持ってるが故に優越感に拘ってるのではないか? そのように思う者も居るかも知れない だが何故そこに優越感が必要なのだろうか? 優越感を感じようとするその感覚が何故どのような理由で大目に見られるというのか? 何故に自分自身も劣等感を抱いて居るからといって優越感を持って良い理由になるというのか?
言い訳はあるかも知れない 所でその前に、一切の優越感を先ず完全に棄て去らねばならない あまりにも不自然なその行為を心持を、先ず否定し消し去ることから平等は始まりを告げる
でも優越感を感じれる者がその優越感を棄て去ることよりも、劣等感を感じずには居られない者が優越感を徹底的に否定し消し去ることの方がずっと期待できる
目の前や手元にある優劣に目を瞑り一見配慮がなされ平等であるかのような平等が定着した時、優れて居ない者はより一層苦しい立場に立たされてしまう 平等だからといって徹底して横並びにされ却ってその優劣がハッキリと人々の目に晒されようものなら潜在的に優れた者は益々密かに優越感を増し膨らませ、優れて居ない者は平等という旗の下に益々密かに劣等感を深めることだろう
優劣を確かめ認識し合いそれが当り前であることを共有してこそ初めて、平等というものは成り立つのである
・ 優越感を完全に否定し消し去った者こそ、世界は自然環境や土地環境によって成り立って居ることを心より理解できる
この世界に偉大な民族も偉大な文明も偉大な国も偉大な人物も存在しない すべてはそれを育て上げた環境と成行きによって「そのようにさせられて居る」に過ぎない
しかし素晴らしく美しく今にも褒め称えずには居られないものを目にした時に思わず声を挙げ感歎しひょっとすれば崇めてしまいたいくらいの瞬間は誰にでもどんな所でもあることだろう それを否定しずっと無表情で居ろというのは明らかに間違って居る
だから肝腎なのは、偉大なのはそれを育てた環境や成行きであることをよくよく理解し認識した上でその産み子としての民族や文明や国や人物などを友達のように作品のように素朴な気持ちで観て眺めること
例えば文化や遺跡や街並みを観て自分達より優れて居ると感じたとしてもその民族や国を自分達より優れたものかのようにみてはならない 環境や成行きが然うさせた 美しく綺麗で素晴らしい? 所でしかしそれらはすべて環境や成行きが然うさせた それにしても素晴らしい でもそれも全部、環境や成行きが然うさせた それ以上はない


2 はじめに、日本という島国はあらゆる面で世界に類を見ない場所である
・ 北海道という真冬には氷点下30℃前後に迄なる寒冷地があるかと思えば沖縄や小笠原諸島などといった南洋とも言える島々が広がって居る
冬にも夏のように過ごし易い場所があるかと思えば北陸信州や東北、北海道では世界で激しい降雪がある 世界でも比類ない大変蒸し暑い夏が来たかと思った本州でも冬になれば数日は雪が積るようなちゃんとした冬がやってくる 一年を通しての四季があるだけでなく一つの夏や一つの冬それぞれごとに北海道や沖縄や本州の各地といった四季が常に共存して居る
一つの国や地域だけでこれほど四季と気候に恵まれた場所は世界の他にあるのだろうか あったとしても果してそれは島国だろうか
四季の国、というのは春夏秋冬があるという意味だけではない そこには凝縮された島国という意味が多分に含まれて居る
・ 極めて豊かな山々や水源に恵まれた本州に於ても山を隔てたり少し南北へ進んだだけでも大きく気候が異なり、世界中のあらゆる場所で見受けられるあらゆる地形や環境が南北の至る所に広がって居る ひとたび踏み出せば殺風景は存在しない これは凝縮された島国でなければ不可能なことである
然うした豊かな地域それぞれの豊かな特産物は数えきれない
また周辺海域は当然のように世界でも稀に見る豊かな水産物の宝庫である
・ 「島国」ということ
日本も「世界」の一部ではあるが敢てそこから切り離されてきたような島国であるという事実を伏せてしまえば却って日本というものがわからなくなる
問題は軽蔑の意味を込めて島国と呼ぶことにある 大陸に於て島国が軽蔑を意味して居たという事実があるが果してそれは島国という言葉そのものが卑しいからだろうか?
島国という事そのものが事実でしかない 自分達を貶める意味で用いてもならないし誰か達より優位に立つ為に使う言葉であってもならない ただここにあるのは日本が世界のどの国や地域よりも如何にも島国らしい島国であるという現実であり、その現実は一切脚色したり繕ったりしてはならない 島国であるということは大きな一つの取り柄である 日本が日本であることへの常に大きな原動力である
・ 一般的に島国の日本は外国の文化を加工することに長けて居るが無から創造することには長けて居ないとする誤った見方があり明治時代の政治家ですらそれを言って居た
所が世界の民族や国々は殆ど陸続きという人も物も情報も海に比べれば容易に行き来させることが出来る状況の上に数千年以上営まれ形作られてきた
一体いつ何処から誰が齎したものが「外国」のものでどれが「自国がゼロから創造したもの」なのか、どれほどの区別や線引きが出来るのだろうか
大陸を分け合い陸続きに繋がる民族や国集団はもはや大陸という枠組みそのものが「自分達の側の話」であり長い月日の中で人や物や情報を濃密に頻繁にお互いに滲透させ合ってきたのである 一見ゼロから創造されたように見えるものでもすべて長い歴史や陸続きという条件に照らし合せれば「外国のものを加工した」ものに過ぎない 島国にとっての「外国」は陸続きの国々にとっては普通に自分達の内側に滲透し備わって居るごく当り前のことでしかないのである
片や今よりずっと移動手段が限られて居り精度も低かったこれまでの長い長い歴史の人類の中ですべてを海に囲まれた島国に外国のものが流入するときは何時も如何にも「外国から来たものです」という雰囲気を醸し出しながら海の彼方からやって来るのが常だった
その環境で長い時間をかけて培われた感覚はたとえどんなに技術の進歩した時代になっても殆ど変わることもない しかし認識は変えることができる 直感的には島国は加工できるが創造できないという醜い偏見を抱いてしまう感覚が根強く自分の中であったとしても習慣として斯うして思い改まっていくことが出来れば良い
・ 日本は小さいのではなく、狭いのである
日本は面積だけでいえば欧州の殆どの国よりも大きく、海洋面積も世界随一の広さを持つ
地図を見た時に近いが為に目に入ってくるロシアや中国、米国などの国々は抑々一つ一つの州や省や共和国などが一独立国にも値するような連合国家であり条件が異なるし豪州は国土の殆どが砂漠など人のあまり住まない地域である
しかし文明としてより利用し易い平地の面積となると、あまりにも山林に恵まれて居り且つそれらが複雑に満遍なく入り組んで居る為に他国に例を見ないほど少ないものとなる
・ 日本人は北方や南洋、大陸南部などあらゆる地域からあらゆる古代の時代にやって来た人達の子孫である 一重なのか二重なのか、目が大きいのか小さいのか、鼻が高いのか低いのか、彫りが深いのか浅いのか等よく見ればその顔つきは様々であり特定の顔つきだけを日本人だとするのは有り得ない
それは他国の人々にも言えることで、単一民族なのかどうかという視点は根柢から視野が狭く誤って居る

・ 日本は世界のどの国や地域よりも災害に見舞われる場所である 地震に津波に台風に豪雪に酷暑に噴火に、多種多様なあらゆる災害がこの島国の中で巻き起される
日本は良い意味でも悪い意味でも絶妙な位置に存在して居る 大軍を以て攻め入るには大変だが少数の船が文化を伝える分にはそれほどでもないという程度に大陸と丁度良い距離と海流に恵まれ、片や密集するプレートの上にあることで絶え間ない地震に苦しんだり颱風の通り道に堂々と位置して居ることで漏れなく毎年誰かがどこかが大きな被害を受ける
一方で丁度温暖と寒冷の移り変わる絶妙な位置に伸びる列島はやはり多様な気候と恵みに恵まれ、そして然うした創造性豊かな環境を編み出したエネルギーが大災害として返ってくる 大災害が地の海の恵みとなって返ってくるとも言える
・ 日本語というものは極めて独特であり豊かであり便利でもあり、極めて魅力的な言語である
ひらがな、カタカナ、漢字という全く個性の異なる三種類の文字を様々な文章や場面によって使い分ける言語というのは世界の中でも飛び抜けて異質である
発音も独特ではあるがしかし比較的に日本語話者以外にも習得し易いものとなって居る 強烈な破裂音や巻き舌など抑揚のある表現というよりは全体的に意図して平坦な発音であり世界的に見ても滑らかでよく調和のとれた耳心地の言語である
語彙や表現方法も豊かではあるがその点に於ては外国語と横並びに比較すべきではない
日本語を外国語と比較するとき、問われるべきはどちらが言語として優れて居るかやどちらが言語として難しいかではなく、どの言語がどのように魅力的なのかということである


3 自らの価値を知り、自らの価値を演出すること
・ 人種の違いや固有の風土や潜在的な観念などは自然環境や土地環境という揺るがざる不変のものによって長い長い月日を費やし育まれたから今すぐにや数十年単位では根本的には変えることは出来ない 今ある優劣や現実は政策としての教育やたった一つの出来事だけで構築されたものではなく、もっと根深く時間をかけて滲透してきた文化である
・ よって優位に立つ側が持つ優越感は長い長い歴史に基いてその国や文明、社会全体に潜在的に根づいて居り百年をかけたとしても変えることは難しい
・ しかし劣勢に立って居る側に追い求めるべきは優越感の獲得ではない
優劣を知り認めること そして、優劣があるにせよ目の前に繰り広げられ迫ってくる理不尽な他者の優越感に対する毅然とした態度である
そしてこちらがどんなに毅然として言葉を尽そうともその相手が優越感を棄てず競争を挑んできたときは、その競争に飽く迄も勝とうとすることである
競争は優劣を決める戦いではない 勝敗は優劣ではない そして競争は避けられない 勝敗の価値は推し量るものではない 目の前に現実としてある競争に自分がどのように振舞って行動したのか それだけがすべてである
その競争に於ては何よりも、自らの価値を知ることが重要である
更にそれに重ねてより重要になってくるのが、その自らの価値をその自らが充分に演出できるかどうかということだった
自らの価値を単に知るだけでは持ち腐れになる ただ自らの価値をより良く知って居る者は自ずとその見せ方を知ることになる 見せ方がわからない者は見せ方を知ろうとするのでなく自らの価値がどのようなものなのかをもっと追究していく方が良い


4 日本と世界の地域ごと、季節ごとの気温と湿度及び天候
・ 日本の北海道から沖縄及び小笠原諸島やその他島嶼のそれぞれ季節ごとの気温や湿度や天候を一通りそして繰り返し学習、認識する
・ 学習、認識した日本の気温湿度天候と比較して世界各国それぞれの国や地域の気温湿度天候はどうなのかを大陸ごとにそして国や地域ごとに一通り繰り返し学習、認識する
・日本と比較してそれぞれの国や地域の四季はどのようなものか
四季のある国や地域の夏や冬はどれほど暑く又は寒いのか 湿度のある暑さや寒さなのかどうか 春や秋はどのようなものか
雪は降るのか 雪が降る場合と降らない場合の体感気温はどのようなものか
四季のある国の各地域の気温湿度天候はその国の他の地域の気温湿度天候と比較して季節ごとにどのように異なり、又は似通って居るのか
・世界の国や地域の四季や気候と比較して日本の四季や気候はどのようなものか


5 日本と世界の食事と生活資源
・ 日本と世界の国や地域ではどのようなものが主食とされどのようなものが収穫されどのようなものが消費されてきたか、また昔と現在ではどのように食事が変化してきたか
・ 日本と世界の国や地域はそれぞれ何時どのように食事や生活資源に恵まれ又は乏しかったのか 生活資源に富んだ環境に暮らして居たのか然うではないのか


6 日本と世界のエネルギー資源と運通、海運
・ 日本と世界の国や地域は何時どのようにエネルギー資源に恵まれ又は乏しかったのか エネルギー資源がどのように歴史に影響を及ぼしてきたのか
・ 運通、海運の歴史を通じそれがどのように近現代史に影響を及ぼしてきたのか 運通、海運が如何に重要なものか 現在の運通、海運はどうなって居るか


7 日本と世界の災害
・ 日本と世界の国や地域では季節ごとや時代ごとにどのような災害がどのような規模と頻度で起り続け又は起ってきたのか


8 日本と世界の自然環境、土地環境を情報や映像や体験を通じ認識する
・日本全国の観光地や名勝地のみならず一般的な緑地、農村、市街地、郊外地、山景などを一都道府県づつ集中して情報や映像やその他を以て観察し共有し質疑し認識する
可能であれば実際に各現地へ赴きどのような環境なのか集中的に学習、認識する
・世界の国や地域のそれぞれの観光地や名勝地のみならず一般的な緑地、農村、市街地、郊外地、山景などを一ヶ国づつ一地域づつ集中して情報や映像やその他を以て観察し共有し質疑し認識する
可能であれば実際に各現地へ赴きどのような環境なのか集中的に学習、認識する


9 日本や世界の国や地域の文化、風景、貧富、地位などは自然環境や土地環境に基いてどのように構成されてきたのか
・ 日本の人口や出生数や面積や経済規模や平均所得などを附則情報としながら日本の歴史をその国土海洋の形成時から俯瞰的に一通り学習観察し、自然環境や土地環境が如何に日本を形成したのかを認識し合う
・ 大陸ごとに人口や出生数や面積や経済規模や平均所得などを附属情報としながらその国や地域ごとの歴史を成るべく一通り簡単に学習観察し、自然環境や土地環境が如何にそれぞれの国や地域を形成したのかを認識し合う


10 日本や世界の国や地域の主観的及び一般的な優劣論
・ 日本や世界の国や地域をそれぞれ比較して、自然が美しい所と然うでない所、街並みが美しい所と然うでない所、文化が優れて居る所と然うでない所、経済力がある所と然うでない所、技術が進んで居る所と然うでない所、国際的影響力がある所と然うでない所、軍事的に強大である所と然うでない所、その他などについて生徒それぞれ自身の意見とその生徒それぞれ自身が思う世間一般的意見の両方を生徒それぞれ自身が表明する
国や地域は一人の生徒につき条件を問わず幾らでも挙げてもよい
・ 各項目で挙げられた国や地域を生徒自身の意見と生徒自身の思う世間一般的意見の二種類ごとに多少で順位付けし、それぞれの項目や種類で上位になった国や地域がそれに相応しいのか、そして自然環境や土地環境がどのようにしてこのような結果を齎したのかを改めて更に詳しく情報や映像や体験などを以て追究する



* 担任者は1、2、3を一貫した理念として言及し生徒に滲透させながら4から10の具体的教育に取組む
* 担任者は各学習に於て以下A及びBの方式を必要に応じて採用する
A 論説
・ 各生徒に生徒自身による異論や不明に思った点を反映させて1から10の各題材ごとに自分なりの論説を完成させる 自分なりの言葉選びや言い回しなどを出来る範囲で駆使させる
・ それぞれの論説をそれぞれの班内で発表し合い、それぞれの論説に対する感想や意見などを発言し合う
・ 班ごとに当該学習に対する班としての最終的な論説を簡潔に取り纏め、班として発表する
・ 各班によって発表された最終論説に対しそれぞれ班同士で意見し質問し回答し合う
・ 前行程の発言録を全体で確認し合う
B 討論
・ 1から10の内、担任者が定めた各特定議題について班ごとにお互いの感想や意見、話したいことなどを班長の下で自由に話し合う(小討論)
班長は小討論に於て議題に沿いながら討論全体を主導する
・ すべての班長がその各班での小討論を踏まえ担任者の下で自由に話し合う(長議)
担任者は当該議題について全体として一致した見解や取り纏めを完成させることが可能かどうかを班長全員に問い、班長一人づつにこれまでの理智論評についての総合的な見解意見を述べさせる
次いですべての班長は各班長一人づつの見解意見について感想を述べ、質疑する
・ 小討論と長議を踏まえすべての班長を含めた生徒全員を各一票を有する投票者とした全体投票を行う(全体決議)
すべての生徒は各一人づつ当該議題について、完全に讃同するか、概ね讃同するか、かなりの一部分に讃同するか、一部讃同するか、殆ど讃同しないか、全く讃同しないかの何れかへの一票を投じ、これを担任者が集計して結果を発表する
C 対談
・ 各班長がその班の生徒を二人組または三人組に分類し、各二人組または三人組はそれぞれ担任者の定めた時間の範囲内で1から10についての自由な対談を行う
班長は三人組の三人の内一人をその三人組対談の司会者に指名し主導させることができる
班長は担任者と協力してその班のすべての対談の秩序を維持する
・ 各対談の生徒たちはその各対談によって導き出された結論や意見などがあるときはその内容を共同で取り纏め班長に報告することができる
・ 各班長はその班の対談に基いたすべての報告をそれぞれ発表し合う

理智論評教育骨子

理智論評教育骨子

  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-16

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