mother

 もっと、浅いところにいると思ってた。海は、おかあさんで、ゆりかご。安らかに眠るところなのだと、夏生(なつお)はおしえてくれた。夏にしか生まれないから、夏生というなまえの彼は、わたしの心臓のかたちを想い、ときどき、自慰をするという、とんでもない変態なのだけれど、でも、夏生ならばしょうがないと、わたしは、海よりも深い懐で、きかなかったことにしてあげた。絵を描いているあいだに、すこしだけずれた、世界線。おかあさんであり、誰しもが安眠できる寝床である、海を、新興宗教にのめりこんだみたいに、崇拝しているひとびとの姿を、二十四時間配信している、気が狂ったとしか思えない動画サイト。レモンティーを飲んで、夏生が、窓を開けて、南方にぽつんと立つ、鉄塔をみつめている。あそこには、たまに、かみなりがおちて、そのときだけあらわれる、天使が話題だ。わたしは、みたことがないけれど。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-15

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