マツケン奮闘記・・?!⑤
学校での下校時刻、真子は校門の前に一人立ってた。
そんな真子の処に、校舎から女子生徒が一人息を切らせながら駆けて来た・・・。
「ごめんねぇ真子ー?遅くなっちゃったねー?・・はぁ~疲れたぁ?!・・」
と、駆け込んで来たのは、飯塚美穂・・。
「別に気にしなくていいわよ?そんな待ってた訳でもないしね、でも美穂がそんな急がなくてもよかったのよ?」
「ええっ?でもほらぁ、あたしが誘った訳だし、なんか悪いじゃない?・・それじゃ行こっか、ねぇ真子?」
「うん、そうだね・・・あ、そだ、ねぇ美穂ー?昨日言ってた事なんだけど、美穂、本気なの?」
「えっ?あ~あれ?うん本気よ?ああ、ひょっとして真子、あたしが言った事、信じてなかったりするー?
ま、いいけど・・でもあたし、嘘は言ってないよ?それとも真子、あたしじゃ駄目だとかって思ってる・・?」
「ええっ?そんなつもりで聞いたんじゃないよ?・・あ、もう辞めてよそんな言い方ー?あたしそんなつもりで
聞いたんじゃないんだからねぇ?!」
すると、美穂は、いきなりお腹押せながら、笑いだした・・。
「えっなに?嫌だ美穂、何がそんなに可笑しいのー?・・」
「ああ、ごめん真子ー?冗談よ、冗談?!ちょっとからかってみたくなっただけなの?でも真子ったらさぁ?
なんかまじで本気になっちゃってるんだもん、何か可笑しくてー?ああぁ笑いすぎてお腹いたくなっちゃったよ!」
って言いながらまた笑った・・。
(もうっ!そこまで笑う事ー?!)
「もう、美穂ったら笑いすぎよー?!もう知らない!あたし帰るから?じゃぁねぇ?!」
「ああぁ真子ー?ちょっと待ってよー?ごめんー?謝るからさぁーねえ、待ってってばー?ねぇ真子ー?!」
そして俺はと言うと、やっとバイトが終わって、今、帰る途中なんだ・・。
と、そん時、俺は不意に肩を叩かれた・・。
(はいっ?・・)
と、振り向く俺のほっぺたに、いきなり誰かの指が突き刺さった・・・《ブスッ・・》
「あっ?!・・」
と、見れば、何気に俺のほっぺに指を付き立ってて笑ってる西田が立ってた・・。
「何やってんだ?お前・・・」
すると西田・・。
「やったね?!さすがマツケン、よくぞ引っかかってくれました!お見事!!」
(なんかこいつ真子に似てきたんじゃねぇっ?やる事一緒だろ・・)
「あのなー?『やったね』ってなんなんだよ?まったく・・普通に声かけらんないのかよお前はー?」
「まあそうなんだけど、なんか掛けそびれちゃってさ?でもこういうのも楽しいもんじゃん、マツケン好きだろっ?」
って、なんのリアクションだよ、訳分かんねぇだろ・・。
「バカ言えーあのなー?それってやって楽しむもんでやられて・・あっ、まいいや・・」
「ホント、マツケンは楽しいなー?!・・あっそだ、俺、お前の電話の後にさぁ?小池のとこ電話入れてみたんだよ、
どうせなら、みんな集まった方がいいかと思ってさ、でも今日は無理だって断られた・・まっしょうがないよな、急だし」
(そういやー小池の事、まだ西には言ってなかったけか・・はぁ、めんどくさいなぁ・・まっいいや、後で言うさ)
と、そん時・・・。
いきなりと言うか、またしてもと言うか、俺たちの背後から、どっか聞き覚えのある声が、何か叫び声を上げて駆けて来た・・。
「おい西田?誰か叫んでねぇかぁ?」
「ああそうみたいだな・・ああっ、おいマツケン?あれー?奈津美さんじゃないのかぁ?」
と、その時だ・・・。
「待ってー!コラー!待ちなさいってばー?もうマツケンー?止まんないと怒るわよー?!」
(はいー?!・・何だよそれー?ってなに、俺かー?)
まさしく奈津美だ。なんか知んないけど、なにやらわめき散らして駆けこんで来た・・。
(って、どうしてこう、騒々しいかな、あいつはー?・・)
とか思いつつ俺は、今にも倒れ込みそうに息切れして駆けこんで来た奈津美に・・・・
「よっ?奈津美ー?!」
と、さりげなく笑顔とやらを作って、とりあえず片手振ってみた。
けど・・・なに・・俺って、無視・・・?
「もぉ!!疲れちゃったじゃないのよぉ?!どうして止まってくれないのよー・・」
と、なんとまぁ、俺の声なんか無視で、何気に文句だけ、捲し立ててた・・・。
(まっいいけどさ・・)
すると西田・・・。
「あれ?奈津美さん、もしかして、ここまで走ってきたとか?・・へぇ凄いんだなぁ奈津美さんって!やるなー?!」
と、何気に関心しちゃってる西田君は、どっか涼しげな顔・・・。
(おい、これって不味くねぇ?・・)
とか、ちょい気になった奈津美はと言えば、何気に俺の予想以上かもな、もの凄い顔で西田を睨んでた。
(ウワッ、怖!・・・俺しらねっ!)
すると・・・。
「あのねー!西田君?!」ーーーーーー「はい?何、どうかしたの?」
(はぁー?なんなんだよ、この会話ー?・・)
すると、更に奈津美は目を吊り上げた・・・。
「勘違いしないでよねっ?いくらなんでも、そこまでする訳ないでしょう?!冗談じゃないわよ、そこまでしたら
あたしが死んじゃうのよ?分かる?だからー!嘘でも、そういう事、言わないでくれる?分かったー?!」
と、怒鳴ったかと思いきや、何気に奈津美の奴、更にぶつぶつと文句を言いはじめてた・・。
それに対抗してか知んないけど、西田の奴は、何も言わず、ただニコニコしてるだけで、上の空だ。
(意味分かんねぇよ・・)
けど、この状態ってもしかして延々と俺んち着くまで続くんじゃねぇのか、とか、俺は、この発端の西田の顔を見た。
と、そん時だ・・・。
「あれー兼兄じゃない?なに、今帰りなの?ああっ・・どうもー?・・」
とか言いながら、何気に顔を赤らめてるのは真子だ。でもって一緒にいるのが、飯塚美穂、だよな・・。
で、そんな真子に何故か、西田の奴までが、苦笑いししながら照れまくってるし・・・。
(ああ~ぁ、なんか見てらんねぇよなぁまったくー・・)
「なに、お前も、今帰りかぁ?」
すると、美穂がしゃしゃり出てきた・・。
「どうもー?!元気してます?お兄さん?!あっあの~?あたし達?これからカラオケ行くんですよー?!それで
どうかな、良かったらご一緒しませんかぁ?ねぇお兄さん、行きましょ?・・真子ー?真子からも誘ってよー?」
「ああ悪い、今日はちょっと大事な要があってさ・・悪いまた今度な?・・そんじゃっ?」
すると真子・・。
「あっねぇ兼兄?もしかして、兼兄が言ってた、あの同総会の事?」
「ああ、まあ、そんなとこだ・・」
するとまたしても美穂・・・。
「えっ?なになに?何の事?ねぇ教えてよー、ねぇ真子ー?」
「ああ、ほらぁ?ちょっと話したじゃない、今度同窓会するんだって・・でもなんか、会場が断わって来たんだって?それで・・」
と、その時・・・。
「なに?それってどこでやるんだったの?あっもしかしてあのカフェ?・・えっ?もしかしてそうなの?・・へえそうなんだぁ、
あ、ねぇ?なんならあたしが、頼んであげようかぁ?別にいいわよぉ?」
「えっ?何言ってるのよ美穂ー?そんな事・・」
「出来るわよ?!・・だってあたしのおじさんが遣ってる店だもん、まっとは言ってもしばらく会いにも行ってないんだけどね」
(はぁ?うそ・・それあり・・)
「あっあのさぁ美穂ちゃん?それほんとなのかぁ?マジでー?」
するとその傍から、真子が・・。
「ええっ!美穂、そんな事何も言ってなかったじゃない?それに・・」
「だって、聞かれかれてないもん?それにそんなのわざわざ自分から言う事でもないでしょ?それよりどうする、お兄さん?」
するとまた、横から今度は奈津美が・・・。
「ねぇ?あたしには、全然、話しが見えないんだけど、どう言う事?ねぇマツケン、説明してくれない?」
(ああ、そういやぁそうだ、まだ奈津美には話してないんだっけか・・後でとかって思ってたのに・・ああ、めんどくさ・・)
「悪い、後でちゃんと話すからさ?ちょっちょっと待ってくれるかな?あっと、それでさぁ美穂ちゃん?それがほんとなら、
是非、頼みたいいだけど、いいかな?」
「うん、いいわよ?あっそうだ、ねぇ?その変わりって言うのもなんだけどさぁ?ねぇそのお願い叶えたら、この後、カラオケ
付き合ってくれる?・・そしたらどんなことしても、おじさん、説得して見せるわよ、ねぇどおっ?」
すると、いきなり西田・・・。
「いいですよ?!カラオケは俺も好きだし、なぁマツケン、奈津美さん?いいよなっ?!そう言う事でよろしくお願いします」
って、なにあっさり受けちゃってる訳・・。
(まあ、いいけどさ・・)
とまあ、そんなんで俺たちは、急きょ予定変更って奴で、俺んちに行くのは辞めにして、そのままカフェの店へと直行になった。
けど、成行きとは言え、何とも奇妙な顔ぶれが揃っちゃって、どうにも俺には、ぎこちないのひと事に尽きるんだよな。
それにだ、大体にして西田の奴、何時の間にか真子の隣で、ちゃっかり並んで歩いちゃってるしさ・・。
(まったく、抜け目ない奴め!)
それに比べて俺は、どう言う訳か、奈津美と美穂ちゃんの間に挟まれてるんだよな。
それにだ・・。
それだけでも鬱陶しいっつうのにだ、何考えてんだか二人して俺の両腕、ガッチリ掴んじゃって放してくんないんだよ・・。
けど何かそれってさー、いかにも俺は、今から連行されてく犯罪者って奴に見えなくないかぁ・・・訳分かんないよな、まったく。
そして店の前まで来た時、いきなり店からオーナーの深山さんが出てきた・・。
「ああ、これはどうも、お待ちしてましたよ、西田さん?さぁどうぞ・・あっあれ?美穂ちゃんじゃないか、珍しいなぁ、
久しぶりだねぇ、中で、ゆっくりジュ―スでもどうだい、ねぇ美穂ちゃん?・・ああこれは失礼、さぁどうぞ・・」
すると美穂・・・。
「ほんと久しぶりね、それにおじさんも変わりなさそうだしさ?それじゃ遠慮なく、ほらぁ?真子、行こっ?!」
とか言っちゃって、そそくさと真子と一緒に店の中に入ってしまった。
そんでもって俺たちは、ぞろぞろと、美穂ちゃんの後に続いて店の中の一番奥のテーブルに坐った。
とは言え、テーブルに着いたのは俺と奈津美と西田の三人だけだ。
で、どう言う訳か真子と美穂はカウンター席で、何やらオーナーとウっチャベッてた・・。
と、そんな時・・。
不意に奈津美が、俺の服を引っ張った。
「はっ、なに・・?」
「あ、ねぇ?さっきの話しだけど、どうしてまたこんな事になっちゃった訳?だってもう、日がないのよー?今さら場所
変えるだなんて、無理な話しじゃない・・」
「ああ、そうだなー?どうも聞いてるとさ?なんか人数だけの問題でもなさそうなんだなぁこれが?まっそうは言ったって、
そう、はっきり言われた訳じゃないんだけどな?けど俺が思うに絶対、他に理由があんだろうよ、そうじゃなきゃどう考え
たって矛盾だらけだからな・・」
とか言ってたら、その時・・。
俺たちのとこに、やっとって言うのか、オーナーさんのおでましだ・・。
「どうも、お待たせしたようで、すみませんね?それで早速なんですがねぇ?同総会の件、聞いた処じゃ、学校の方からの
推薦だそうじゃないですか?この店のアピールも兼ねての事だとか、それならそうと早くに仰っていただければ宜しかった
でしょうに・・、ああっまあ、それはひとまず置いておきましょうか、それでここは一つどうでしょう、勝手では有りますがね、
会費の方、もう少し増やして頂く訳には行きませんか?」
(はぁ?なに言い出すかな、まったく、それもいきなり過ぎだろ・・)
「あの、それって上限があるんですか?」
「ああ言え、そう言うのは有りませんよ、ただ此方も、そう経営がいいとは言い難いものでねぇ?できればその、一人当たり
四五と行ったところですか?・・どうです、それで納得して貰えますか」
今度の同総会の会費は確か、一人三千円って事できまってた筈なんだ・・。
けどそれを、二千円もあげるんじゃ、多分、誰も来なくなるのは間違いないだろうな、とは言えどうすっかだよ。
俺はチラッと西田の顔を覗き見たんだけど、何かもう、深刻な顔で、真っ青って感じなんだ。
そんでもって奈津美もまた、うつむいて黙りこんじゃってるときてるしさ・・・。
(なに、二人して黙りこんでんだかなぁもう、何か言ってくれよなぁ?まったくよ・・)
「それであのー?それを呑めば、ここの場所はお借り出来るんですか?」
「はい、もちろんそのつもりでいますよ?それじゃそれで・・」
「あっその前に、その金額の事なんですけど、出来れば五百円アップって事で勘弁して貰えませんか?こっちももう日がない
もんで、急にそんな話しされても、ちょっと無理があるんですよ、すみませんけどそれで納得してほしいんですけど・・」
と、言った途端、オーナーさんは黙りこんだ・・。
(勘弁してくれよなぁまったく、無理言ってんのはそっちなんだからさー?!)
と、その時、いきなり美穂が割り込んできた・・。
「ねぇ?それで許してやってよ、ねっ?あたしお母さんに、頼んでみるよ、だからさ、ねぇお願いおじさん、この通りっ、ねっ?!」
(はぁ?何の事だぁ?訳分かんね・・)
すると・・。
「まったく美穂ちゃんには敵わないねぇ・・まっ日がないのにこんな事を言い出すと言うのも理不尽な話しです、勝手を言ってほんと、
申し訳ない・・いいですよ、それで手を打ちましょう?」
てな訳で、何とか話しはついて、ひとまず一件落着?ってとこだな。
とは言え、会費の五百円アップと言い出したのはいいけど、この先どうするかなんてのは、今の俺の頭じゃまだ、見当もつかないんだ。
まっけど、何とかなるっしょ、此のメンツだしな。
そんな訳で俺たちは、美穂ちゃんとの約束もあって、店を出た後、みんなしてカラオケに直行だ。
マツケン奮闘記・・?!⑤