たぬきの恋。5

               僕は、ありのままを話すことにした



                むちゃくちゃなのは分かってる。



                       でも


           でも                      でも


                     
                       でも





      僕のすべては"ここ"から始まるって、思ってるから、こんなむちゃくちゃやってる。





                       そう。






「実は、僕・・・・、何もとりえが・・・無くって・・」


僕は、つまりつまりに喋っていた。



「は、はぁ・・・」



愛海さんはさすがに困っていた。


奥からはお母さんがこっそりのぞいている



でも、気にしてる暇なんてこれっぽっちとない。



「で、この前友人に・・・"お前は何もとりえがないけど、それはお前が何かに興味を持っても、それ以上にきっと楽しいものが
あると思って、ずっとずっとそうやって興味を持ったものを捨てていったんじゃないか"って言われて・・・」



我ながらなかなか恥ずかしい。



「それで、帰り道に見かけたこのお店になんか、なんか分かんないんですけど・・すごく興味があって・・・」



僕はずっとうつむいて話していたので、少し顔を上げると、
愛海さんは真剣に僕の話を聞いてくれていた。



赤の他人なのに。


「これを捨てちゃいけないって思って・・・それで・・・」



「それで、今日来て下さったんですねっ」



愛海さんは僕の心が読めたのか、全く同じ事を僕は言おうとしていた。



「嬉しいです、私、すっごく嬉しいです!」



「え・・・あ、はい・・」




キラキラしている、まぶしいくらいに



「看板もお店の名前さえも地味でお客さんもお年寄りばかりだし・・っ」


少しはにかんで愛海さんは言った。



「だから、私すっごく嬉しいです! ありがとうございます!!」



「いや・・・喜んでもらえ・・て・・」


バットタイミング。



竹内からの着信が来てしまった。



僕は「すいません」といい、電話に出た。



『もしもし!!』


「なんだよ、竹内。」


『あのさ、聞いてくれよ!』



おやこのノリはくだらん話をかますつもりだな。


そんなこと僕が許すかァ・・・!


「あーあれだろ、前田のお母ちゃんが前田の教科書を夕飯の味噌汁に入れちゃったんだろ、知ってるって」


『違う、違うってええええ!!w
 話をずらすな、アホォ!!!!!』


「あははwwいやだなぁ話なんてずらすことはできないぜ?」


『何小学生レベルな事いってんだコノヤロー!wwww』


「ナニ、ショウガクセイニアヤマレ、コノヤロー」


『なんで棒読み!?ww』


「あーきりがねぇから、切るぞ」


『待ってくれよ!要件言えてないよ、俺!!w』


「え、そうだっけ?」


『そうだよ!お願いだから言わせt・・・』




ピッ



「すいません・・・;;」



愛海さんを見ると、愛海さんは腹をかかえていた。



「だ、大丈夫ですか!?」



愛海さんの肩は揺れていた、小刻みに。



「いや・・・っふふっ・・・あははっww面白くって・・・ふっふふwww」



「え?」



僕は”^p^?"みたいな顔をしていた。



なんてたっていつもこんな会話ばかりだからな!



「ごめんなさい・・・あははっww 面白くって・・・wwあはっwwあははっwwwww」



人をこんなに笑わしたのは初めてだ。




すがすがしい感じ。





「・・私、お母さんから聞いてると思いますが桐谷 愛海(キリタニ マナミ)といいますっ!」



「あ・・・僕鈴木 雅って言います・・・」


すると、愛海さんは・・・


「これからよろしくお願いしますね!」


といった。



          こ   れ   か   ら  。




               そう







     "これから"始まるんだ、僕のすべてが。




                      15年間まっていた。









                     この瞬間を。






                                     -続く-

たぬきの恋。5

たぬきの恋。5

僕のすべてはここから始まる。 だからこのたぬき屋だけは捨てない、絶対に。 今、雅のすべてが始まる

  • 小説
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  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-04-24

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