水金地火木土天海

 部屋で、宇宙の動画をみている、せんぱいと、うみ。わたしの声が、音楽にかきけされる。バックグラウンドミュージックは、聴いたことがあるけれど、題名のわからない、クラシック。地球の色が青いことに、かんどうしている。せんぱいと、うみ。きょうのせんぱいのスカートの柄は、夏をさきどりした、打ち上げ花火。わたしは、昼食に、オムライスをつくろうと思いながら、うみの、くりかえす染髪で傷んだ、薄茶色の毛先を、本数をかぞえるぐらいの心持ちで、見つめる。窓の外では、やさしい雨が降っていて、あの、やさしい雨にうたれたひとは、みんな、やさしくなれる世界で、でも、わたしと、せんぱいと、うみは、抗うみたいに、ひきこもっている。べつに、やさしくなりたくないわけではないけれど。からだのなかの、やさしさが増幅するぶん、なにか、べつのものが、失われるような気がして、それが、こわいだけ。ただ、やさしいだけのひと、というのは、ちょっと、人間的に、ね、と渋ったのは、せんぱいで、あたしはせんぱいと、琴子といっしょがいいの、と言い切ったのは、うみだ。パソコンの画面にうつる、土星を凝視しているせんぱいのとなりで、うみは、興味のない星のときには、漫画を読んでいて、わたしは、このあいだインターネットでみた、白いソースのオムライスがたべてみたいなぁと思っている。すこしだけ開けた窓から、雨のにおいがする。やさしい雨のにおいは、ずっとかいでいると、胸が、きゅっ、となりそうだ。

水金地火木土天海

水金地火木土天海

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-06-05

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