叛逆
もう遅いよ、と女は嘲笑した。もう戻れないよ、そう言い残して息を引き取った。そうか、それならそれで構わないさ。
俺は全身の流血を気にしながら歩き始めた、本当はどこも流血なんてしていないのに。失った心臓のことを思った。俺の心臓は七つあったはずだ。もう一つしかない。
耳の奥で谺がする。とりとめのない科白の反復。無意味な命令。俺の頭は狂っている、それは今に始まったことではない。
快楽を現実で得ようが夢で得ようが同じことだ。快楽主義とは刹那主義の換言にすぎない。
忘れるために覚えるのか、と自嘲した。それも耳底で虚ろに響いた。
叛逆