ゆるして

 ねぇ。あのこがあくびをしているあいだに、腐っていた星。せんせいの部屋にあった、月球儀。海底人の、祈りにも似た呼び声。あたしたちを、狂わせるのでしょうか。嗜好品的な、中毒性のある、彼らの詩。よろこんではねる、うさぎたちが、祝福するのは、なに色にも染まらずにいる、きみだけ。純白。
 ふりかざしたやさしさが、ときに凶器となり、だれかを傷つけたとしても、やさしさはそっと、そこに横たわりつづける。せんせいがおこなう、罪のなまえを、あたしはしらないふりをしている。恋とは、愛とは、きまぐれに罪悪で、けれども、にんげんは、恋愛をしたがるし、そういうふうにつくられた、いきものであるし。と、思いながら、あたしは、制服のボタンをはずす。ひとつ、ふたつ、みっつ…

ゆるして

ゆるして

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted