仲夏
ぬくもりをしらない、こども。だれかの瞳のなかで、揺らめいている、頽廃の記録。雨のにおいがして、二十四時の、きょうのおわりと、あしたのはじまりのはざまで、半透明な夢をみている。ニア。海底で、傍にいたのは、きみだけだった。
コンビニで、アメリカンドッグを買っているあいだに、不知火が電話をしていた。コイビトに。わたしは、不知火に、コイビトなるものがいることに、ちょっとびっくりしていて、それは、不知火が、いつも、恋愛に興味がないようなふるまいを、しているから。それに、不知火って、じぶんのことは大好きで、他人はどうでもいいって感じの、ひとだから。コイビトって、どんなひと、とたずねると、不知火は、そもそも、ひとじゃないし、とか言って、ひとじゃないって、じゃあ、なに?、と思いながら、わたしは、ケチャップとマスタードの容器をプチっとして、アメリカンドッグのうえにたらした。
誘蛾灯にさそわれて、しににくる虫を、かわいそうと思ったことがある。
この時代、べつに、恋愛対象はひとだけではないでしょ、と素っ気なく答えて、不知火は、わたしがアメリカンドッグといっしょに買ったコーヒーを、勝手に開けて飲んでる。
仲夏