竜たちの乙姫



星雲が見える
どうやって果てまで届いたの
僕らの心 それを継ぐこと
海を渡るために空を操る

君はいつから其処(そこ)に居たの
冒険の内側で誰かを殺めた
約束は何もない 憶えていることは
()てがわれた傷のガーゼが愛しくて

次第(しだい)に風は
丘を越える



竜たちの乙姫(おとひめ)
御心(みこころ)仕業(しわざ)
星を()べる生命に 死に()(むくろ)
僕らは天を飛び交う
手を伸ばす人の上
涙が池に着く頃には 誰ももういない
鉤括弧(かぎかっこ)の心臓


翼はいつしか黒く染まり
揶揄(やゆ)では過ごせない
相手だけを知ることに意味はない
この想いを明け渡せる空が欲しい

君はいつから此処(ここ)に居たの
冒険の外側を知る為に来た
僕の歌を教えるから 君の歌も聞かせて
爪先立ちで君の目を覗く

次第(しだい)に音は
引き継がれていく



竜たちの珠鳴(たまな)
御心(みこころ)侍従(じじゅう)
星に()む僕たちは 死に()(むくろ)
僕らはあの雲を目指して
昇り始めた
涙を誤魔化す為の上昇気流
忌避(きひ)を乞う



悲恋(ひれん)火雨(かう)


涙の落ちる音

聴き取った聴力で

僕たちの宴

それは思い出の中だけ



ふたりぼっちのこの空は
広いだけで何も映せない
百華(ひゃっか)(とが) 綺麗に咲き誇る

僕らは次第(しだい)
風を乗り(こな)



竜たちの乙姫(おとひめ)
御心(みこころ)侍従(じじゅう)
心に従って 僕は君を殺す
()てがわれた傷の包帯は
赤く色を変えて頷いた
涙を知らない星たちへ
鉤括弧(かぎかっこ)の心臓

僕らの拍動(はくどう)

僕らの拍動(はくどう)



()じ込められた告白




新しい翼
新しい風
新しい天を目指す


竜たちの心臓

竜たちの乙姫

竜たちの乙姫

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-23

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