初夏

 手品師が、鬱屈そうにトランプを弄ぶ傍らで、新人類たち。あざやかな水色のカクテルに、感嘆し。二十一時。全自動で狂っていく、この街で、愛、なんてものに希望を抱いている。キミ。薔薇の声がして、おそらく、夜中にそっと、ひそやかに落ちてきた、星の残骸がときどき、超音波的奇声を発して。ワタシ。あたまがおかしくなるかと思いきや、目を覚ませば存外、冷静である。未完成の箱庭で、キミが、幸福にまみれて息をしていて、それならば、この世界にも、あるていどの価値はあると、おこがましくも、神さまみたいなことを想っている。そのあいだに、一篇の詩を、だれかの詩を、慈しむ少女たちが集団で。 とぶ。

初夏

初夏

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-20

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