記憶と共に僕を。 序章「20年前」
全ての物語はここから始まった!!
20年前_______
<こちら第7部隊、作戦ポイントへ到達>
「了解」
それだけ言うと遠藤少佐は無線を切る。
急げ、急いでくれ。
焦る体からはどっと汗がにじむ。
ここは森のある場所に構えた軍事用テント。外はもうすっかりと夜になっていて、星空が穏やかに輝いている。遠藤少佐は思わずテントを後にする。
「あ少佐、どうですか戦況は?」
青いパイロットスーツに身を包んだ少年が遠藤に話しかける。
「いやまだ動いていないよ、第7部隊は作戦ポイントについたが」
「じゃ後は"彼ら"次第ってことですね」
「そのようだな、ラファールの整備しっかりとしておけよ」
そう言って遠藤は森の木々の間に隠された、全長約6mほどの人型のロボットを見つめる。
「大ジョブっすよ。整備は万端、後は俺次第ですから」
「そうか、ならもう準備を始めた方がいいだろう」
「りょーかい」
すると突然ラファールと呼ばれたロボットがひとりでに動きだす、そして青いパイロットスーツに身を包んだ少年の前でとまる。
「ユフィアネス・・・、どうか我々の勝利の女神となってくれ」
遠藤がつぶやく、それと同時にテントから嬉しい一報がはいった。「"彼ら"の仕事が終わった」と_____
「ようし、全軍進撃開始。目標はアルディア遺跡だ!!」
その一声に森に隠れていた部隊が次々と動き出す。
戦車・戦闘機・白兵・そしてユフィアネス。
一方アルディア遺跡では________
「俺達を皆殺しにする気か?やつらは」
周りの傭兵が騒ぎ始める。信頼して雇った"あいつら"がやられたからだ。勿論理由は分からない。傭兵共は"あいつら"が負けるなど思ってもいなかったからだ。
「落ち着け!まだ手はある」
金の玉座に座る一人の男が回りを一喝する。額に大きな傷を持ち、立派なあごひげを蓄えた男、名をデューアという。デューアは立て掛けていた刀を手にして立ち上がる。
「王の間へ行く」
デューアは指を「パチン」と鳴らす。すると突如、玉座の後ろから真黒い衣装に身を包んだ神官が現れた。数にして9人ほど、そのうちの一人は様々な宝石がついた王冠を手にしていた。
「お前たちはゲートを使って"アレ"を呼び出し応戦させろ、私の用事が終わるまで頼むぞ」
流石の傭兵たちも彼には反論はできなかった。一応"アレ"を使っていいという許可は下りたわけだし、傭兵達は各々の方法でゲートを開く。するとゲートの中から出てきたのは巨大な「怪物」だった。
ゲートを開き終わると傭兵達は全員武器を持って立ち去る。そう、"アレ"とはいまゲートから出てきた「怪物」の事、そして逃げるわけそれは_____
「こちらR.A山脈にいた敵の撤退を確認、これより遺跡にはいる」
"ユフィアネス"ラファールに乗るパイロット、コードネームはR.A。いま遺跡への侵入を遠藤のいる本部へと伝える。
"ユフィアネス"それは対魔物用兵器として極秘裏の開発された兵器だ。ある特殊な力を持つ人間にか扱えないこのユフィアネス、そのためユフィアネスを動かせるものは世界中で特別扱いされる、またそれと同時に様々なテロ組織から暗殺の対象とされる。そのためコードネームが必要なのだった。
「にしても、こいつら好き勝手に魔物召喚しやがって」
また1体魔物を倒したラファール、R.Aはまるでゲームでもやるように遺跡の奥へと進む。
アルディア遺跡は複雑な構造をしている。そのため普通は迷うものだ、だがR.Aは全ての構造がわかっているかの様に適切な道を選択する。そのため後ろにいる部隊も敵が出てくる心配さえしていれば迷うことはなかった。
そのはずだった。
「死ねヤァァァァァァァァァァァァァァ」
突如暴言と共に右側の壁から何かが飛び出してきた。と同時にラファールの後ろにいた部隊が全滅する。
「何!?」
R.Aは後ろを振り向く、だが遅かった。飛び出してきたのは両腕にカギ爪のようなものが装備された"ユフィアネス"だった。右肩には"夜叉丸"をいう文字が見える。どうやらこのユフィアネスの名前らしい。だがそれだけしか確認できなかった、夜叉丸のカギ爪はものすごい勢いでラファールの頭部を奪っていく、その反動でラファールは体制を崩す。
「うぐッ!!」
ものすごい衝撃がパイロットへと伝わる。そしてもう一度、今度は反対の腕がラファールへと飛んでくる。だがすぐさまラファールは体制を立て直す、そして左腕に装備されたシールドでその攻撃を防いだ。とたんにラファール、夜叉丸は衝撃で吹き飛ばされる。
「ハァハァ」
「つ、つえぇ」
だがここで負けるわけにはいかないっ!!!
R.Aはラファールの武装を全て「使用可能」へとする。簡単に説明するならセーフティーを外したようなものだ。一方の夜叉丸も体制を整える。ラファールも腰に装備されていた刀型の武装"雷光"を抜く。
「あちらさんも準備OKか」
さぁ、行くか!!
ラファールと夜叉丸、2機はほぼ同時にフルスロットルで目の前の敵へと突っ込んでいった。
「これが、そうか」
デューアは王の間へとたどり着いた。厳密にいえば王の間の手前にある"天地の扉"に着いたのだった。左右にきれいな水がたまった泉があり、そして扉には双頭の鷲と金色の龍が描かれていた。
「はい、後はこの王冠とデューア様の持つ"夜風"をこの泉の中へ」
王冠を手にした神官がデューアへと進言する。デューアは神官の言うとおり手にしていた刀を右側にある泉へと放り込んだ。そして神官も持っていた王冠を今度は左側の泉へと放り込んだ。
「あとは"誓約の血"を」
「わかっている」
デューアは懐からナイフを取り出す。そして右腕をナイフの先端で傷つける、そこから流れ出た血を扉へと吹きつける。
数十秒間、王の間は沈黙に包まれた。
「きました」
一人の神官が口を開く。と同時に扉がゆっくりと開き始めた。
「おお」
デューアは扉のすぐ近くへと向かう。そんなデューアを見ながら一人の神官は不敵な笑みを浮かべた。
「これで王の間は私のものだ!!」
デューアはまさに歓喜の声を上げる。扉の奥からは眩しいほどの光が差し込んでいた、そして全てが光に包まれた_______
「これは!?」
ここは森にある軍本部のテント。そこで突如、遺跡から発する以上なエネルギー数値が観測された。
「なんだ、どうした!?」
遠藤が大声をあげた軍曹の元へと歩みよる。
「これを見て下さい、すごいエネルギー数値です」
軍曹は遠藤に異常な数値をさすエネルギーカウンターを見せる。
「こ、これは!?」
「50・・・、130・・・、200・・・、すごい速さでエネルギー数値が上がっていきます」
「こ、このエネルギーの正体は!?」
「不明です!!」
会話の間もエネルギー数値は上がり続ける。そして同時に遺跡から見える光は、遺跡から10kmも離れたテントからも見えるほどになっていた。
「遺跡にいる部隊はどうなった?」
「無線が通じません、状況が混乱しています!!」
周りの兵たちが騒ぎ始める。補給を受けているもの、負傷して帰還したもの、補給が終わりまた戦場へと赴くもの、その全員が遺跡から発した光に飲み込まれた。
どれほどの時間が過ぎたのだろう。
遠藤は感覚のないからだを感じつつ目を開く。すると突如信じられない光景が飛び込んできた。
焼けた人、焼けた機材、焼けた木々。とたんに酷い臭いが鼻を刺す。
「あ・・・・ぁ・・・・」
声が、言葉がでない。体の感覚もないため動くことさえままならない。
なにが起こったんだ。
頭で整理がつかない。すると緑色に点滅する光が目に飛び込んできた。それはかろうじて壊れていない無線機だった。
だ、誰かが無線を・・・・
ようやく感覚が戻り始めた左腕で無線機のところまで這って進む。
もう少しだ、もう少しで助けが呼べる・・・!
だがそんな思いも空しく、途中で遠藤は力尽きた。
20年前、アルディア遺跡で行われたテロ組織「アルセイナ」壊滅作戦。それは非常にも遺跡の半径20kmのもの、全てを焼きつくす正体不明の爆発によって幕を閉じた。そして後世、この出来事は「アルディアの怒り」と言われるようになる。そして世界はこの出来事を皮切りに大きな変革、そして巨大な歴史の波へと飲みこまれていくこととなる。
記憶と共に僕を。 序章「20年前」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想を聴かせてもらえると幸いです。
今回の作品は今まで書いた作品の中でも最も自信のある作品です。
第1話はもう少しお待ちください。