(ぐちゃっ)

 せんせい。
 狂おしいほど、だれかを、好きになったあとの、すべてがおわったときの、喪失感と、ひとつの星の終焉は、きっと似ている。ヒステリックに叫ぶばかりだった、あのひとたち。近未来的で、無機質だった。街。解放された、動物園のどうぶつたち。行き場をなくして、かわいそうで、えらいひとたちはいったい、なにを考えているのだろうと思いながら、ぼく、という人格肯定のために、犠牲になる。なにか。
 あの放課後の、教室でのことを、ぼくは一生、忘れないかもしれないし、そのうちあっけなく、忘れてしまうかもしれない。ガラスのむこうの、しあわせそうなひとびと。大量生産されている、六枚切りの食パンいちまいが、感動するほどに美味しいと感じた日。
(あのね)
 一頭のライオンが、ドラッグストアのまえでくつろいでいて、あくびをしていた。そのままにしてあげたかったのに、警察のひとがきて、どこかへつれていかれて、あーあ、となった。おすのライオン。あのたてがみに、いつか、ふれたいよね。

(ぐちゃっ)

(ぐちゃっ)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted