長い夜のなかで
たしか夢のなかで死のうとして、夜の町を彷徨っていた。もう目覚めることがないようにと目を瞑って蹲っていると、一人の女性が声をかけてきた。僕は何故か高校の制服を着ていて、彼女は高校の教師だった。僕たちは座り込んで色々な話をした。何故生きていることは苦しいのかとか、生きていたいと思うために必要なものは何かとか。随分と長く話し込んでいたと思う。僕は彼女に会えてとても嬉しかったことと、このままずっと話し続けていたいことを伝えた。しかし、程なくして彼女は立ち去った。僕は彼女に助けて欲しかったが、それはか弱くひび割れた心の容れ物を永遠に抱きしめていてもらいたいという酷く利己的な支配欲求に他ならなかった。それを教えてくれた彼女に感謝をして、もう会わない方がいいという提案に同意した。そうして夢から醒めてもまだ僕はあの夜の町を一人で歩いている。彼女と話した様々なことを思い返したり、忘れたりしながら。
長い夜のなかで