二十五時のしじま
ケーキを切り分けているあいだに、すこしだけでもだれかに、安寧を。星の一部を剥ぎ取り、喰らう者、おそらく、愛、とか、そういうのをしらないのだという決めつけは、よくないのだと諭す、真昼の少女。カフェオレをひとくち飲み、まどをあけて、たばこに火をつけるきみの、せなかをみつめる。どこかの外国の風景と、静かな音楽をながしているだけの、真夜中のテレビ。きのうおぼえた花言葉は、もうわすれてしまった。清純を偽る聖職者たちが蔓延ったアスファルトの向こうで、うすよごれた吐息で澱む空気に、こみあげてくる嘔吐感。荒廃した街で、白い花を育てて咲かすのは、武器を捨てたアライグマ。
ぼくのほかに七人いた、ぼく。
ハッピーバースデー。
今宵はひとり、八等分のバースデーケーキをたべようね。
二十五時のしじま