SS52 意趣返し

 詩織の家に遊びに行くと身体が太く、食が細くなっていた。
「あんたご飯減らしてるの?」
「まあね、話せば長くなるんだけどさ。
 この間カレシとのお出掛け用に新しい服を買ったのよ。だけどその翌日に派手な喧嘩しちゃって、お出掛けがお流れになった挙句全くの音信不通になっちゃって。いい加減ヤバいかなぁとか思ってたら、突然向こうから謝ってきたの、俺の方が悪かったって」
「なら、よかったじゃない」
「それが全然よくないのよ!」詩織の拳がドンとテーブルを叩く。「お出掛けも仕切り直しって事になったんだけど、その後であの時買った服がキツくて入らないのに気付いたの」
「それでダイエットしてるわけ?」
「そうなんだけどさ、私さっきピンと来たの。これはあいつの意趣返しだったんだって。
 私が喧嘩の後ヤケ食いするのを見越して、わざと一週間も経ってから謝って来たんだって。
 クビレの部分がキュッと締まったあの服を指定してきたんだって。
 私もう悔しくて悔しくて…」
「成程ね、それじゃ負けるわけにはいかないねぇ」

SS52 意趣返し

SS52 意趣返し

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-01

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted