たぬきの恋。4
「はぁはぁ」
着いた。
たぬき屋だ。
何 故 か 僕 は 希望 に 満ち溢れて いた。
僕は、2度目のあの心地良い音を聞いた。
カランカラン
「いらっしゃいませー!」
あの子だ、あの・・・
・・・・あれ、
目がくらんでるのか?
何やらおばさんが見えるぞ・・・
僕は目を激しくこすった。
「やぁーね、どーしたのよっ!」
やはり、おばさんであった。
「いや、あの・・・」
僕は困った丸出しであった。
すると、おばさんは、僕が困ってるのに気付いたのか
「あっあんたもしかして愛海(マナミ)に会いに来たのかい?」
要件を言ってくれた。
・・・あれ、僕の要件ってこれだっけ?
とりあえず、僕は
「あ・・・はい・・・」
と返事をする。
愛海って、この前あったあの子かな。
てか、僕店間違えてないよな?
「じゃあ、ちょっと待ってな今愛海呼んでくるから!」
「あ・・・すいません・・」
おばさんは、階段を上がっていった。
僕は店内をぐるりと見回す。
まず、初発の感想は
たぬきだらけ
しかない。
まぁ、名前が"たぬき屋"なんだからな、
でも、ここまではいいだろうと言うくらいたぬきだらけである。
そんな事を思っていると、かすかに階段を軽快に降りてくる音がした。
トンットトントンッ
おい、
ちょっと待て。
何故僕は今、愛海さんを呼んでもらってしまったんだ!?
用はないぞ!?
これ1つとない!!
やばい!!
「あっこの前の!」
混乱している暇もなく、もちろん要件を考える暇もなく、
愛海さんが来てしまった。
「ど、どうも」
僕は手を後頭部に置き、少し腰を曲げた。
まるでどこかの会社の社長に挨拶してるように。
「あっずっと立ってたんですか!?」
「いや・・・まぁ、はい・・・」
「ちょっとお母さん!ダメでしょっ!お客さんを立ちっぱなしになんかしたら!」
すると、奥から
「あはっはー!若いもんはそれでいいんだよー!」
「もー・・・」
愛海さんは困ったような顔でうつむいた。
あぁ、あの"おばさん"は愛海さんの"お母さん"だったのか。
じゃあ、きっと愛海さんはお父さん似だろう。
母親とは全く似ていない。
失礼だが、きっと誰もが思うだろう。
「はい、どーぞ!」
と言って愛海さんは僕に椅子を出した。
「あ、どうも・・」
我ながら無愛想な返答である。
「で、何か用ですか?」
まんべんな笑みで言われてしまった。
要件なんてないんです。
ただ、ここに来たかっただけ、
だた、それだけなんです。
「僕って、何もとりえがなくて・・・」
僕は口を開いた。
貴方は、驚いていた。
-続く-
たぬきの恋。4