ワンルーム
かなしいの侵食で、じゅくじゅくになる街。牛乳を吸い過ぎたカステラみたいに。ぼくらは白い家の窓から、それをみているだけの存在。きみが食卓にならべた皿のうえには、花。エディブルフラワーのサラダに、きみと、ノエルが、無慈悲に突き立てる、フォーク。チーズの焼けるにおいがして、キッチンから、ちいさなエレナがレースのエプロンを揺らし、おおきなミトンをしたまま運んできた、グラタン。ふやけてゆくばかりのアスファルト、コンクリートビルから、ときどき放たれる、光。太陽が切り取られた、この世界。はりぼての宇宙。幽かに透ける月明り。
さみしいね。
いつも、というわけではないけれど。
ワンルーム