七千万年の眠り

 おとなになる頃には、わすれてしまっているかもしれない、今日のことを、明日のことを。まばゆく光り、刹那。琥珀色のガラスのなかに、きみはいて、ブラックコーヒーが飲めるようになったら、すこしだけ愛してくれるといった、あのひとの、にんげんとしての愚かしさに、吐き気がした。遠くのほうで鳴ってる、サイレン。赤い光にめまいがする。都市部に巣食う蟲が、やわらかい肉のわたしたちを求めてる。
 インターネットのニュースで、新種の、恐竜の化石が発見されたことを知ったよ。
 ここさいきんのできごとのなかで、いちばん興味深かったし、世の中のニュースがみんな、こういう感じであればいいのにとも思った。だれかをころしたり、きずつけたり、かなしい事件ばかりを画面越しでながめている、わたしたちの精神状態を、慮る神さまって、いないの?

七千万年の眠り

七千万年の眠り

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-27

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