対岸の
駅のなかのコーヒーショップで、カフェモカをのんでいて、となりのテーブルの女の子たちが、好きなアイドルのはなしでもりあがっているあいだにも、たぶん、星は、みえないところでじゅくじゅくと、膿んでいる。さっき、電車で、おなじ車両に乗っているひとたち、みんな、スマートフォンをみていた。みんな。長方形の電子板に、くぎづけだった。ちょっと、こわいなぁと思いながら、わたしは、図書館で借りた本を読んでいて、夜の海に沈んでゆく都市を、ときどき眺めた。あかりをもとめて、ねむらない魚たちが、優雅に泳ぎ出す頃だ。目覚めた旧型のアンドロイドが、水平線の向こうの街を支配しているというし、きっと、星も、膿んでいる傷口を癒やせないままで、ただ、その機能が衰えてゆくのを、他人事のように傍観しているのかもしれなかった。
なんとなく、そういう気分だったので、カフェモカに砂糖をいれたのだ。
対岸の