ハムレット

 美憂さんはハムレットをお菓子の一種だと思っている。なにやらオムレットの上にハムが乗っているものを想像しているらしい。なんとも美憂さんらしい話ではあるが、さすがにシェイクスピアは知っているだろうから、もしかしたらボケたのかもしれない。でも私にはそれがボケだったのか、あるいは真面目な話だったのか分からなかった。美憂さんは真意が読みづらい不思議な人なのだ。
「リヤ王はいつも後部座席に乗っている王様みたいですね」
 私も負けじとボケてみると、美憂さんは不思議そうな顏になって言った。
「ふつう王様は後部座席に乗るんじゃないかしら」
 美憂さんは本当に真意が読みづらい人なのだ。
「ハムの乗ったオムレット、美味しそうですね」
 私が言うと、美憂さんは嬉しそうな顏で頷いた。

ハムレット

ハムレット

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-23

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