ゆうさめ
あいつの全身を流れているのが真水だったらいい。水風船みたいに針を刺してぱちんと終わらせるのに。
赤い血を流せる程度で、
かすかに温かい程度で、
ひとだとわかって、赦しそうになるから
死んだあとにしか憎めない夢は
ずっと逆さまだ。
手遅れてく刃物がなにも傷つけないことを
やさしいとか、
偽物の青でひとを殺す誰かに
美しい愛って名前をつけたひととか、
同罪そして名のない肉体が
許せない夜をぜんぶ地獄まで持っていく
きらきらに焼く。
夏の夕べに酸性の雨が降って、
傘をわすれてきみが笑う
なにも許されないから、なにも許さないから、
かなしみは海へと繰り返す。ぼくらは雲に溺れてく。
ゆうさめ