ゆうさめ

藤月犀窩

あいつの全身を流れているのが真水だったらいい。水風船みたいに針を刺してぱちんと終わらせるのに。
赤い血を流せる程度で、
かすかに温かい程度で、
ひとだとわかって、赦しそうになるから
死んだあとにしか憎めない夢は
ずっと逆さまだ。

手遅れてく刃物がなにも傷つけないことを
やさしいとか、
偽物の青でひとを殺す誰かに
美しい愛って名前をつけたひととか、
同罪そして名のない肉体が
許せない夜をぜんぶ地獄まで持っていく
きらきらに焼く。

夏の夕べに酸性の雨が降って、
傘をわすれてきみが笑う
なにも許されないから、なにも許さないから、
かなしみは海へと繰り返す。ぼくらは雲に溺れてく。

ゆうさめ

ゆうさめ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-17

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