残酷な世界から目を背けないで

あおい はる

 ルル。あなたたちは肺呼吸をしていいと、ゆるしをもらった土曜の午後。浅い眠りのなかで、丸いビスケット一枚ほどの幸せに、おぼれる。雨のあと、水分を含んだ空気が、はだにまとわりつくのがわずらわしく、ぼくは、きみというなまえの繭をもとめる。
 朝はきたけれど、夜もまたおとずれるし、いつか、永遠に夜明けがこない世界のひとに、なるかもしれないと想像する。画面越しの、破壊行為。灰色の景色。みえないはずの、赤。そして、すべてを無にする。黒。

 ルル。ぼくらの過ちや、罪を、裁いてくれる神さまに、なってくれればいいのに。
 いまどこで、なにをしているのかわからないけれど、どうか、母体であるぼくのことは、わすれないで。おぼえておいていて。星が反転しても。
 はんぶん、うとうとしながら食べる、アップルケーキ。
 心地よい微睡み。

残酷な世界から目を背けないで

残酷な世界から目を背けないで

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-16

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