愛の皿を、敢えてぶかぶかに作った。通りすがりの、天使の助言、要請で。私は皿を使わないで、テリオンみたいな土地で野晒しになっていた。出会うべき記憶がないから。
 血を履く、手探りの僕らでは、その布は、みるみる硬くなっていく。孔に張りついて、葉のように抱擁したいだけ、それだけの意志が、クッションフロアに沈んで戻らなかった。さようなら。
 刃物の連続が、光よりほんの少し遅く、こちらの手元へやってきていた。管で繫いだ、舌の付け根と、もともと湖だった場所を。写真におさめるため、身体を伸ばしてポーズをとる。雑草みたいに、小さい瑕疵が、車輪の疣を発明する。お陰で寝室が耕される。

 お前のウォークマンを、殴って壊した夕方に、投げ飛ばした悲しい笹舟は、気を利かせて遥か彼方まで飛んでった。見えない、蓬莱の山まで、飛んでった。地面に散乱するプラスチックのかけらたちが、蘇りたがっている。早くしてよと、言われるあなたはどうする?
 これ以上、渇かないで。パンタグラフの妖精だって自身の残滓はおいしくないよと言っているよ。
 オルゴールみたいにダンスするを停止する。月よりめまぐるしいステンドグラスに向かって一瞥をするだけ。こけそうになる石段。雪を食べていた。(む、しゃしゃもぐしゃもしゃ。)
 癒しのあった気まぐれ、望遠鏡に、さよならしなくてはならない。絶対に、夏の太陽の下で、半袖で雪を食べていた。金網を模す体操服を燃やして暖をとっていた。
 瞬きで捕えた矢。自滅が燭台に凭れかかっている。卵の殻みたいな、色の、人の形のぬいぐるみで、旅の中身をほじっていれば、止まった車の体温がわかる。マフラーを盗む、風の子供の神隠しがわかる。わかってなにもしないで、椅子と混ざっていく。砂と水みたく。

 

 

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-13

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