トラッシュボックス

失恋前の傷心中のポエム

ノンフィクションっていうかフィクションっていうかフィクションってなんだっけ

「別れてちょうだい」
「一体どうして」
「告白されたの、その人と付き合うつもりなのよ」
「へえ」
「別れて」
「それはできない」
「どうして」
「だって君は僕を好きだから」
「馬鹿なこと言わないで」
「じゃあ僕が嫌いって突き放せるの、僕との思い出も全部今捨てれる?目の前で」
「できるわよ」
「じゃあしてみてよ」
「今すぐって、無理があるでしょう」
「ほら、無理じゃん。君は僕のことが好きなの知ってる」
「他の男に抱かれたの。あなたに甘えられないから他に誰か甘えられる人が欲しくて、あなたに重ねて他の男に甘えた。それで、その人を好きになったの」
「そうなんだ」
「今もその人を、好きで、」
「うん」
「この先の将来も、その人とね、その人と、」
「うん、その人と?」
「一緒にいたいって思えたら楽だったのに」
あはは、と笑うとおいでって腕を広げる紳士に抱きつく女。涙をぼろぼろ零して、可愛くしくしく泣いている。それを死んだような目で見つめる私。涙をぽろぽろ零して、寂しげにひっくひっくと泣いている。ああ、この違いはなんなの。どうしてなの。
綺麗になりたくて一輪のチューリップの造花を片手にカフェとかお花畑で有名な公園とか、雰囲気がある所へ足を運んで、その先で出会う美しい誰かの物語に劣等感を抱いて帰ってくる。そんな私を、飼い猫はどう思っているんだろうか。
私にも好きな人がいる。可愛いとか好きとか、普通に言ってくれるの。私が褒めると可愛い声で笑ってからありがとうって言ってくれる、ねえ可愛いでしょう。私の好きな人は時々言葉が甘くて、それにどういう反応をしていいかわからない時もあって、私の好きな人はすごく魅力的で、その魅力に追いつけない私がいる。幸せっていうのはこういうことであるって証明できるの。
その人が好きって言うから、好きになったものがある。街中で見かけると好きな人を思い出して楽しくなって、人生っていうものが豊かになるのを実感できるの。まあどうせこんなもの将来繰り返していくんだろうけれど、まあどうせ私がおばあちゃんまで生きれた時手を握ってくれる人は違う人なんだろうと思っているけれど、それって不幸なんだよ。
虫歯ができた時、歯がなくなっていくのは当たり前だけれど治療すればなくならない。お気に入りのお菓子を全て食べちゃったらなにも残らないけど、ちょっとだけ我慢すればあとでおやつにできる。花をムシったらすぐ枯れるけれどムシらず丁寧にお水をあげて肥料を上げれば長生きする。
将来失うものを失わないようにする方法も長続きさせる方法もある。生きてたら人って絶対に亡くなってしまう。生きてるって死ぬこと。出会いって別れること。別れるくせに最初からわかっているくせに一緒にいたいと思ってそれに励むのって愛っていうんでしょう。別れがくるいつかに耐えて待つのが愛って言うんでしょう?ねえ、簡単なことなんじゃあないの。ねえ私。うん、わかっているけれど私って弱いの。耐えるのって苦手、でも今日だってチューリップを片手に泣きながらあなたのことを考えてるのって、これって愛でしょ。
うん、私はあなたを愛しているよ。
自分が世界で一番駄目な人間だと思ってしまったとしてもそんな駄目な人間を愛している人間がここにいるってことはどんなに落ちこぼれでもどんなに素敵でもどこかで誰かに愛されてしまうと思う。どこかのすごくどうしようもない犯罪者も、誰かに愛されているし、私は君を愛している。オールデイハッピーデイ。

トラッシュボックス

お元気ですか?

トラッシュボックス

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-12

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