泡沫の四月
夜の国で。雲雀のことを思い出していた、メメとモリが、地下研究室にいつもいる、白衣の少年の実験体になりたいと志願して、でも、断られていた。あなたたちははじめからうつくしいから、という理由。
空想の海にいる。
ただよっている。
わすれたくないひとがいるのに、この世界にいると、わすれてしまう運命なのだ。思い出も、記憶も、あたらしいものが積み重なるたびに、古いのはおしつぶされて、はじけて、きえた。森のカフェで出逢った、女の子でも、男の子でもない子が、わたしのネイルを、にあっているとほめてくれた。スカイブルー。春の儚さも、淡さも、わたしには物足りない。
メメがアイスコーヒーを、ストローでじゅるじゅるすすりながら、あの少年にいろいろ弄られたかったと、ざんねんそうにいい、モリは、だまってたばこを吸っている。
わたしは、海面にときどき顔を出す、つるんとしたイルカのひたいが好きだと思った。
雲雀の記憶は、まだ、小間切れだけれど、のこっていた。
泡沫の四月