失恋

 繭。ちきゅうというなまえは、うっすらとおぼえている。
 燃えていたのは、無機物だったか。あの頃、ちいさな都市に満ちていたのは、生命の肉感だった気がする。七日間、降りつづけた雨で、灰は流れて、耐火性があったのか、公園の遊具の残骸がたたずむ様子は、むなしさを煽るだけだった。骨となったビル群。真実は、いつも、ぶあつい雲にかくれていて、月の光も届かずに、夜はただ、すべてを平等にして。
 ひばりが呼んでいる。
 歪んだ朝。
 海で眠る先生。
 わたしが捨てた、恋というもの。おぼれるほどのものも、まやかしも。
 太陽に照らされて、輝く。一瞬。
 美術館に展示されている彫像のニア・リーは、先生の恋人。
 永久的遠距離恋愛。
 想像して、嘔吐する。

失恋

失恋

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-04-03

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