豆苗とオレンジ

遠くの国で戦争が始まった
一方的な侵攻であると
テレビのニュースが告げている
その脇のテーブルの上に
豆苗の鉢がひとつと
大きなオレンジがふたつ置いてある
豆苗は祖母からもらったもので
少し目を離した隙に背を伸ばしているのが
とても面白い
オレンジは隣りに住む夫婦からもらったもので
ひとつは私が食べ
もうひとつは祖母に渡すことになるだろう
私は家族や隣人との繋がりに感謝している
しかしそれ以上に
私は今、この時にひとりでいられることに
深く感謝している
ひとりでは軍隊にならないからだ
まずひとりであること
ひとりであることが許されていること
その場所から繋がっていくことしか
私にはできない

豆苗とオレンジ

豆苗とオレンジ

詩誌『月刊ココア共和国 2022年4月号』に「投稿詩傑作集Ⅰ」の内の一篇として掲載された詩作品です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted