*パ ス テ ル カラー。
プロローグ。
季節は冬。
山にはまだオレンジがかすかに残っている。
吐息は白い。
学校に行くため家の扉を開けると寒さが押し入ってきた。
マフラーを首に巻きながら家の前の階段を降りると
ちらほらと雪が舞っていた。
私 の 事 情。
「おはよう。杏菜」
「はよ。」
声をかけてきたのは友達の由希だ。
「雪だね。」
「うん。クリスマスもホワイトクリスマスになれたらいいね。」
「どうせ由希は彼氏と一緒でしょ?」
「あはは。ごめんね杏菜」
「杏菜はかわいいのに彼氏作らないの?」
「ちょっとね。」
私が彼氏を作らない理由は私の魂はもうすぐシュッとソーダの泡のように
消えてなくなってしまうこと。病気なんかでもない。
予想で言っているわけでもない。そういう運命で本当のことなのだ。
私は架空の人間。
ロボットのようなもので
試験的に作られた人間なのだ。
体だって感情だって全部人間と同じ。
違うのは試験的な人間ということ。
私はいま中学1年生。私が中学校を卒業した瞬間消える設定になっている。
この設定は変えられない。
......こんなこと皆に言えるわけないじゃんか。
「おーい杏菜?何ボーっとしてんの?」
「ごめん。」
「別に謝んなくても。」
「ねえ。由希私が急に消えたとしてもずっと友達でいてくれる?」
「なにいってんの?」
「たとえだよたとえ。」
「杏菜はいつもずっとともだちだけど?」
「ありがとう。」
「杏菜?」
私はなんでこんな運命なのだろうかと
私じゃなくてもよかったんじゃないかと
毎日365日思うんだ。
でもここで私が試験的な人間になったからこそ
私以外の人が今の私のようにならなくて済むんだよね。。。。
キーンコーンカーン
そこに1時間目をはじめるチャイムが鳴った。
1時間目は「体育」
「へっ。体育?」
「杏菜いくよー。」
私は急いで着替え由希においついた。
今日の体育はソフトボール。
1番苦手なんですよ。。
体育の時間は男女別々だから思いっきりできるんだけど
ソフトですからね。
「大田さんいくよー!」
「はーい」
今はバッテイングの練習。
男子はマラソンをしているみたいで外周を走っている。
先頭は私の友達、森田 侯葉(ゆうは)だ。
茶色い髪にくせ毛。明るいキャラで野球部。
イケメンの1人だ。
もう1人の先頭は、高橋聡くん。ゆうとは違い、黒髪でクールなサッカー部。
やはりここもイケメンで人気がある。
「きゃぁー森田くんだ。」
「高橋くーぅん」
黄色い歓声を送ってくる女子に手を振りかえしていた。
でも、クールな高橋くんはまじめに走っている。
「森田くん手振り返してくれたー。」
「クールな高橋くんかっこいいー」
うるさい歓声が起きる中、授業は終わった。
「つかれたぁ」
とつぶやいていると
誰かに私の髪を触られた。
*パ ス テ ル カラー。