魔法少女さや☆マギカ

このサイトは二次創作も問題無いと言う事で掲載させていただきます。短編に当たり本編で言及されている内容については大きく省いてあります。

と言う事で、中身の単語が分からないと言う方は是非是非本編を読んでみましょうよ。

無垢なるもの

 「いっ、嫌ぁあっ……」

 それは中学二年の12月、唐突にやってきた。

 上条沙弥(かみじょうさや)は夜も遅くの塾からの帰り、不気味な人形に襲われていた。靴のサイズくらいしかない小さなぬいぐるみから足一本分くらいの長さの西洋人形と様々だったが、それぞれ手には刃物や注射器などを持って執拗に彼女を追い回していた。

 そして彼女はついに追いつめられ、その鈍く光る刃が月を照り返した刹那……

 「『月の終局』(ブライト・フィナーレ)っ!!!!!!!」

 恐怖に目を瞑って俯いていた彼女は、前から聞こえる澄んだ曇りのない声に引かれ顔を上げる。

 そこにいたのは金髪を二つ結びに束ねた女生徒。2年3組の出席番号32番、沙弥が知らないはずはない親友だった。

 「ま、マユちゃんっ!!!!!?」
 「まさか沙弥だったとはね?、とりあえず……皆には内緒だからねっ!!!!」

 何本もの杖が彼女の周りを浮遊し、先端から光が突き進む。人形たちを焼き払い、闇夜の彼方へ消滅させた。

 巴真由(ともえマユ)、両親が離婚して母親に引き取られ、その母も心労がたたって入院してからずっと一人で強く生きてきた女の子。

 いつだって優しくて面倒見が良くて、とても同い年には思えないけれど、いつだって自分のそばで笑っていてくれたそんな彼女は沙弥のヒーローだった。

 そしてそれは今もこうして……





 『魔法少女さや☆マギカ』





 「ごめん、マユちゃん宿題見せてっ!!!」

 また何気ない日々が始まるけれど、沙弥の世界をみる認識は少し変わっていた。

 だがそんなキレイゴトを言っている暇は無いわけで、後十分でやることをやらねばならない。

 「またか……私だって忙しいんだよ、そんな中でやってるんだからもうちょっと頑張りなさ」
 「昨日のことバラすもん」
 「恩知らず……分かったから、ちゃちゃっと写しなさい」
 「後でお昼ご飯のおかずあげる」
 「当然」

 真由に机を隣接し必死で宿題を写す沙弥とそれを微笑ましく見つめる真由。ドジで要領の悪い前者と万能で要領のいい後者、二人は対局にあったが、とても仲が良かった。

 「にしても、昨日塾の帰りだったじゃない、塾で何やってたの?」
 「あれ、マユちゃんもしかして忘れてる? 先週出てた英語の宿題」
 「……………」
 「仕方ない、見せてしんぜよう。そのかわり、マユちゃんのおかずも頂戴ね」
 「ううっ……恩に着ます」

 たま?にこう言うこともある。そんなとき沙弥は盛大に偉そうにして、真由は渋々ながらもそれに甘んじるのだ。

 「それにしても、もうすぐ冬休みだね?」
 「私は多分バイトかな?」
 「バイトって、禁止じゃないの?」
 「正義の味方のアルバイト」
 「あ、そゆこと」

 真由はにまっと笑う。普段品行方正な彼女が垣間見せる笑顔が沙弥は大好きだった。

 「私は部活だな、この時期の陸上って最初は辛いんだよね?。すぐ暖かくなるんだけど」
 「部活の時って、あの練習着よね。あのぶかぶかの」
 「うっ……べ、別に中1の時に大きなサイズ買っただけだもん」
 「私も体操服や制服は大きめ買ったけど……そろそろ一つ上のサイズ買わないと」
 「私はマユちゃんみたくスタイル良くないもんっ」
 「……まあ、別に大丈夫だって。成長期なんだし」

 スタイルの良さも対局にある二人。小4の頃から大きくなりだした胸は順調に成長を続け今では大層なことになっている。そんな光景を隣で見てきた沙弥は自分の下を向いて、足下の視界を遮る物が何もないことにげんなりする。


 そんな彼女が、冬休みあけて以来めっきり学校に来なくなってしまったのだった。


 「今日も休み……か」

 隣を見て閑散とした机の上をぼんやりと見つめる。始業式には来ていた。だがそれからも朝遅刻してきたり早退したり、一日中来なかったりを繰り返していたのだ。

 特に最近では一日中の休みが増えた。さすがに心配にもなる。特に彼女は一人暮らしだし、体調を崩したのだとしたら心配だ。

 「もう、宿題ちゃんとやる癖ついちゃったじゃないか……あ、マユちゃんっ!!!」

 ぎりぎり朝のホームルームには間に合ったが、明らかに顔色が悪かった。目つきがとても悪い。顔がやつれている。

 「ま、マユちゃん……久しぶりっ」
 「ああ、サヤ……久しぶり」
 「大丈夫だった? 私すごく心配して……」
 「しん、ぱい……?」

 真由は座ろうとした腰を持ち上げ、座っている沙弥を見据える。何か言おうとして……彼女は踏みとどまった。

 「……貴方達みたいに……」
 「え……??」
 「いや、何でもない……ほら、先生は入ってきた」

 すぐさま席に着く真由。沙弥は詮索しなかった、してはいけない気がしたのだ。


 「ねえ、マユちゃん……一緒にお昼食べ……」
 「ごめん、もう帰る」
 
 その日の午後、沙弥は机を動かし真由の机とくっつけて待っていた。だが、彼女からの返事は実に素っ気ないものだった。

 前までは自然とご飯を食べていた二人だったのに。確かに彼女が辛そうなのは見て取れるが、そこまで言わなくても……と沙弥は食い下がる。

 「でも、折角だし……」
 「うるさいっ!!!!」
 「マユちゃん……」
 「あんた達のせいで……あんた達のせいで私らがどれだけ迷惑してると思ってるの!!!!!!??」

 教室が静まり返る。真由は特に悪びれる様子もなく、ただ決まりが悪そうに鞄に物を詰めてすたすたと教室を出ていく。

 「何あの子……」
 「沙弥、何かした?」
 「……ううん」

 わけが分からないよ……沙弥は淋しげな真由の背中をぼーっと見つめて……

 『巴マユを助けたいかい?』

 それは死神の囁き。頭の中に、沙弥の頭にだけ響いた声。

 『貴方は……誰? どこにいるの?』
 『ボクは、キュウべえ。直接話がしたいから、屋上に来てよ』

 沙弥は処刑台への一歩を踏み出す。その先に何が待つかを彼女は知らない。

 屋上、今日は特に誰もいない。念のため、鍵はかけておいた。

 蒼天の元、彼女の目の前に現れたのは白い体に赤いくりくりした目の小動物。無表情で不思議な威圧感があった。

 「話って……何?」
 「単刀直入に言うよ。巴マユは疲れてる、君にもその助けになってほしいんだ」
 「助ける……って、どうやるの? 私なんかで出来るのかな??」
 「出来るよ、いや……君にしかできないことだ」

 それは悪魔の囁き、禁じられた咎の果実。



 「ボクと契約して、魔法少女になってよ」



 友を救う事が出来るのなら……沙弥は、彼の言うままに契約を……

守られる者

『止めて』
 「……え?」
 「どうしたんだい、上条沙弥」

 「やめなさいっ!!!!!」

 天から現れた巴真由はあの夜出会った時と同じ魔法少女の衣装に身を包んでいた。白い獣の首根っこを掴み投げ飛ばす。激しく鉄のフェンスにぶつかったキュゥべえはそれでも表情一つ変えずに静かに言う。

 「巴マユ、君はこんな所で油を売っていていいのかい? この町に魔法少女は君だけなのに」
 「っ……サヤ、こいつの言う事聞いちゃ駄目。こいつの言う事はとても優しく魅力的に聞こえるかもしれないけど、それはただの幻想なの」
 「幻想……?」
 「だから、絶対に契約しちゃ駄目……魔女は皆私が倒すから、貴方は普通に生活して普通に大人になりなさい」

 そう言って諭そうとする彼女は妙に大人びて見えるとともに、何か突き放されるような物を感じた。彼女はまた青空の中へと消えて行った。

 「魔女……?」
 「全く……そう言えば、何も説明していなかったね。契約って事が先行してたけど、魔法少女になると上条沙弥、君の願いを何でも一つだけかなえる代わりに、魔女と戦う使命を与えられるんだ」
 「それって、何なの? この前夜道で人形に襲われたけど、あれが魔女なの?」
 「それは最近巴マユが追ってる魔女、『人形の魔女』リーゼロッテの使い魔だよ。使い魔は魔女を倒さない限り無限にわいてくるんだ」

 キュゥべえは淡々と喋りながらも表情を変えない。何を考えているのか分からなかった。確かに動物の表情を読み取るのは人間のそれよりも難しいが、人語を普通に喋っているからこそそれが奇妙に見えるのかもしれない。

 「……少し、待ってもらえるかな?」
 「……良いよ、契約は君が同意しなければ完遂しない。本当にどんな願いもかなえるから、願いが決まったら意識の中でボクを呼ぶと良い。それから……」

 キミガハヤクマホウショウジョニナッテクレレバ、巴マユダッテタスカルンダヨ……それだけ言って、キュゥべえはフェンスを飛び越えどこかへ消えて行った。

 「マユちゃん……そうだよね、大変だよね。でも、私の願いって何だろう……」

 何でも持っている満たされた自分。沢山の物を奪われてそれでも生きている巴真由とは対極にあった。自分の他にも魔法少女になるべき人間は沢山いるのではないか。
 
 同時に、それは魔女との戦いに対する逃げではないかとも思った。あの日の恐怖をまだ沙弥は覚えている。だが、力があれば怖さも無くなるのだろうか……

 「いけない、次の授業はじまっちゃう……」

 時計を見てもうあまり時間が無い事に気がつく。結論が出ないもやもやした状況の中、彼女は次の授業へ向かった。


 「はぁ、はぁ、はぁ……」
 「お疲れ様、巴マユ」
 「キュゥべえ、また、あんたか……」
 「君が大変そうだから、君の親友を魔法少女に誘ったのに。強情だよ、君は」

 夕方。廃屋の中、巴マユは息を荒げて立っていた。何百体もの使い魔を虐殺しても、魔女には届かない。

 胸に下げた魔法少女の証、ソウルジェムを見つめる。金色に輝いていたはずの宝玉は随分と色あせていた。

 「こんな辛い事、背負うのは私だけで良いの……あんたは、大人しくしてて」
 「分かったよ……でも、早く魔女を倒さないと」
 「黙っててって言ってるでしょ!!!!!! ……消えなさい」

 過労とソウルジェムの穢れにより真由の精神は壊れかけていた。キュゥべえはそれを分かっているためか別段声を荒げるでもなく言葉を紡ぎ続ける。

 「仕事が上手く進まないのは君の過失だよ。全く、ボクに八つ当たりしないでほしいな。やっぱり、上条沙弥の力を借りるしか……」
 「ふざけるなぁあああああっ!!!!!!」

 真由の周囲に8本の杖が出現し、キュゥべえの周囲を取り囲んだ。先端からは光の矢が突き抜け、キュゥべえは回避しようとした物のいくつか掠ってしまう。

 「痛いなぁ、巴マユ。君の相手はボクじゃない……っ?」
 「この気配……今までの比じゃない、これだっ!!!!!」

 真由は誰に言うでもなく自分に言い聞かせて、廃屋を出て空へ消える。キュゥべえは焼けて焦げた表皮を見つめて静かにため息をつく。

 「さて、上条沙弥の所へ……」


 「ちょっ、どうしたのキュゥべえ!!?」

 家で勉強をしていた沙弥の目の前の窓の外に現れたキュゥべえ。ためらいもせず沙弥は死神を家に招き入れる。

 「大変だ、巴マユが魔女の所へ向かった」
 「どうしたの、その怪我!!!?? まさか、その魔女に……」
 「巴マユだけじゃ危険だ、君の力を貸してほしい」
 「その事なんだけど……お願いごと、何も決まって無いの」
 「……ついて来て、魔女の居る場所、徒歩だとかなり遠いんだ。その間に考えると良い」

 怪我の内容をキュゥべえは伝えない。それは『聞かれなかった』からだ。聞かれていない事にまで答える必要は彼には無い。勝手に沙弥の中で解決してくれるならそれはそれで都合が良かった。

 彼女が傷を見たくらいで躊躇しないと言うのはキュゥべえも分かっていたので、あえて身体を修復しなかったのだ。

 少女は走る。その先に何が待つかも分からずに……


 「こいつが……やっぱり、一筋縄じゃいかないか」

 ファンシーな装飾で彩られた不思議な異空間。今まで倒して来た使い魔と同じような奴らに前衛を防備させた小さな蒼い頭巾の人形。これが探していた魔女リーゼロッテである事は容易に分かった。

 「雑魚ばっか並べても無駄だっての……『陽の終局』(シャイン・フィナーレ)!!!!!!」

 上空に16本の杖を投げ飛ばし、それが天高く上り太陽のように先端を外側に向け回転する。回転の速度は急激に速まり、橙赤の光が降り注ぐ。

 人形は光に焼かれ次々に散っていく。その間にも無傷の人形は真由の元へと攻め込んできた。それを残りの16本の杖で迎撃する。杖で殴り光の矢で貫き接近を一切許さない。数分で使い魔の数が激減した。魔女への道が出来る。真由は天高く跳び、杖を回収する。

 「これで終わらせる……」
 「マユちゃんっ!!!!!!!」
 「サヤっ!!!!!?」
 「私も、戦うから……マユちゃんばっかり背負おうとしないで!!!!!」
 「くっ……」

 真由は後ろから現れた沙弥に驚きの色を隠せないでいたが、このチャンスを逃すわけにもいかなかった。

 32本の杖を一斉に束ねる。巨大な大砲が彼女の目の前に出現した。真由は力を込める、エネルギーが高密度に集束された。

 「『最後の銃撃』(ティロ・フィナーレ)!!!!!!!!!!!」

 巴マユは知っているだろうか。その技をかつて誰か別の魔法少女が使っていた事を。そして……

 太い砲身の大砲から圧縮され放たれた光の槍がリーゼロッテを貫き弾ける。倒した、沙弥はそう思った。だが、貫かれた穴から巨大な化け物が姿を現す。それは凄まじいスピードで真由の眼前に迫り……

 真由の頭の奥底に、頭を食いちぎられ死んだ魔法少女の姿がよぎった。顔は既に喰われており確認できなかったが、それのお陰で身体が唐突な現実について行かせた。

 「ぐっ、ああぁあああっ!!!!!!!」
 「マユちゃんっ!!!!!!」
 「まずい、早く契約を」
 「しちゃ駄目っ!!!!!!! 倒してやる、こんな奴私一人でぇええええっ!!!!!!」

 噛みつかれようとした刹那に大砲を杖の形状に戻し口の中に放り込み顎を下ろさせない真由。だが32本の杖を持ってしてもその口は強烈に異物を噛み砕こうとする。

 真由は一旦引き、杖を回収する。思いっきり空を噛み砕き悶絶する化け物、だが次の瞬間には杖の先端が化け物に突き刺さっていた。

 「死ねぇええええぇえええええっ!!!!!!!!!!!」

 光の矢が全身を至る所から貫き、人形の魔女は粉々に炸裂した。その瞬間に使い魔も空気の抜けた風船のようにしぼむ。

 「やった、やったねマユちゃんっ!!!!!」
 「逃げて……」
 「……え?」
 「あぐっ、うぁああぁあああああああーーーーーっ!!!!!!!!!!」

 真由の胸の宝玉が真っ黒に染まる。苦痛に喘ぐ真由、キュゥべえがそれを静かに説明した。

 「巴マユは助からない、君がボクと契約して魔法少女になって、魔女に止めを」
 「サ、ヤ……逃げて、貴方は、幸せに生きる、権、り、がぁ……」
 「……どう言う事なの? 訳が分からないっ!!!!!!」
 「魔法、少女に、なるって……こう言う事なの。魔女を倒、して、ソウルジェムの穢れを払わないと、魔女に堕ちてしまう……私は、それを、最近、知った、か、ら……」
 「キュゥべえ、どう言う事なのっ!!!!!!???」
 「聞かれなかったからだよ。ボクは『魔女と戦う使命を与えられる』とは言ったけど、詳しい事は聞かれなかったし。君達はいつもそうだ、都合の悪い事があるとそうやって憤慨するんだから」

 『ァアアアアァアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ』

 一人の勇敢な少女の末路、彼女は32本の黒い翼を背中に宿した堕天使の姿を取る。表情は悲しみに沈んだ表情のまま固定され、両目から流れ出る涙が蝋のように固まっている。

 「ボクと契約をっ!!!!!!!」
 「嫌ぁ……キュゥべえ、マユちゃんを助けて!!!!!!」
 「それは偽善だね」
 「何よそれ!!!!!??」
 「自分の為に願うんだ、君のやってる事は何の願いでも無い」

 この状況で彼だけが冷静に言葉を紡いでいく。この時分かった、真由が止めようとした理由、この獣に感じた不気味な違和感も。

 この獣は……敵だ。

 「……す」
 「ん、何だって?」
 「マユちゃんの無念を晴らす……私は、マユちゃんを傷つけた奴らを絶対に許さない!!!!!!!!!!!!」
 「復讐か……面白い、君の願いは強い、その願いならエントロピーを凌駕出来るよ」

 光が満ち、沙弥の胸元に紫のソウルジェムが宿る。最初からかなり濁っていたが、それは願いの質の問題なのだろう。真由のソウルジェムは彼女の髪の色にも負けない金色の輝きを放っていたのに。

 沙弥の衣服は魔法少女の物に変化し、右手には剣が握られていた。自分はこの使い方を知っている、沙弥は高く跳びあがった。

 「はぁああああああっ!!!!!!!!」

 上条沙弥の武器は連接剣、通常時は普通の剣だが、振り回す事で刃が外れ鞭のようになる。鞭でありながらそれは沙弥の意思に従い自在に暴れる。

 『孤高の魔女』は周囲に黒いステッキを展開して放つ。それを沙弥は連接剣で弾き斬り裂き道を作った。伸びきった剣を再び元の形状に戻し至近距離で斜めに斬り裂く。そしてその距離から剣を伸ばし全身を縛り上げた。

 「マユちゃん、敵は取るよ……散れっ!!!!!!!!」

 刃が食い込み全身を細切れにする。覚醒前だったのもあるが、此処までたやすく倒せたのは沙弥の天性のセンスによるところが大きかった。

 魔女がいた場所には二つの黒い宝玉が落ちていた。片方はリーゼロッテの、もう片方は孤高の魔女が落としたものだった。

 「それはグリーフシード、それに自分のソウルジェムの穢れを移す事でまた戦えるようになるんだ」
 「これが……マユちゃん、ありがとね」

 沙弥は自分のソウルジェムをその宝玉に当て、穢れを移す。キュゥべえは完全に穢れたグリーフシードを渡させると、そのまま食べてしまった。

 「よくやったね上条沙弥、この調子でこれからm」

 ガシュッ……白い獣が縦半分に切り裂かれた。だが中には何も入っていない。それどころか紙きれのように破れ、風に乗って沙弥の懐を抜け飛んでいく。

 「まだ力を制御出来ていないんだね、『敵でないはずの』ボクを『誤って』攻撃するんだから」

 ぞっとした、キュゥべえは沙弥の背後にいたのだ。彼は今までキュゥべえだった自分の皮を喰らい、何事も無かったかのようにけろりとした表情をしている。

 「さて、元の世界へ戻ろうか……」


 こうして、巴真由はこの世から抹消された。彼女が自分を遠ざけたのはこのためだったと沙弥は解釈する。

 今日は三年の始業式。クラス替えも行われクラスの顔触れも大分変わった。前のクラスで中の良かった人間は皆別のクラスで、割と新たな生活が始まったのだった。

 彼女は誓う。もう誰にも頼らないと。誰ともかかわりを持たないようにと。



 誓って、いたのに……




 「今日から同じクラスだね、よろしく」
 「あ、うん……」


 ……絶望は、再び輪廻する。

護る物

 「ごめんっ、サヤ数学の宿題見せてっ!!!!」
 「自分でやりなさいよ、そんなんだと受験で苦労するんだからね」

 彼女の名前は野中杏子(のなかあんず)、男勝りでスポーツ万能、ただ頭は少し弱い、いわゆる『アホの子』だ。

 かつての自分を見ているようで、沙弥は少し寒気を覚える。彼女の世界を壊さないためにも、彼女と仲良くしてはまずい。の、だが……

 「そっか?、そうだよなぁ。悪い、自分でもう少し考えてみるわ」

 再び自分の問題プリントに目を向け計算をし出す杏子。彼女はほとんど自分でやっていて、いくつか分からない部分を見たかったらしい。

 思えば、最初から全部写す気満々だった自分とは大違いだ。

 「……ほら、ちゃんと解き方も読んでおいて」
 「さっすがサヤっ、オレに出来ないことを平然とやってのけるっ!!!!!」

 満面の笑みを漏らす杏子。思えば巴マユも、こんな事を思いながらも楽しく自分と居てくれたのだろうかと考えてしまう。

 なんやかんやで自分も、彼女を突き放せないでいた。

 「てか何なのさっきの台詞。どっかで聞いたことあるんだけど」
 「母ちゃんの部屋にあった漫画に書いてた」
 「母ちゃんって……勝手に読んでいいもんなの?」
 「いいさ……母ちゃん、居ないし」

 彼女の母親は彼女を産んですぐになくなったらしい。野中杏子(のなかきょうこ)、旧姓佐倉杏子は死ぬ前に自分の名前から漢字だけを取り出し娘に託したのだとか。

 佐倉杏子……どこかで聞いたことのある名前だとも思いながら、それは思い出すことが出来なかった。

 「あ、ここ間違ってるぜ」
 「え、嘘っ!!!!??」


 「あれ、今帰りか?」
 「ああ、うん……部活終わったし」
 「じゃあオレも一緒に帰るっ」

 もう大分日も落ちていた夜時、玄関のげた箱で沙弥は杏子に出会った。別段用事はなかったのだが、自分も相手も互いの家がどこかなど知らないはずだし、自分だって教えていなければ聞いてもいない。

 「部活やって腹減ったしさ、おごるからコンビニ飯付き合ってくれよ。今朝のお礼もかねて」
 「コンビニ飯……別に良いけど」

 よっしゃっ、と胸の前で小さくガッツポーズをする杏子。沙弥もかなり腹が減っていたのでコンビニには立ち寄るつもりだったが彼女と同席とは思いも寄らなかった。

 何だか自分はとても無理をしているのではないかと感じる。彼女を突き放そうとも出来ず、かといって心を開いて歩み寄ることも出来ないでいたのだから。

 近くのコンビニで行われていた『春の祭典フェア』に便乗し、杏子は明太子のおにぎり、沙弥はツナマヨのおにぎりを選んだ。

 「あっ、おにぎり温めて下さい」
 「おにぎりって温めるもんなの?」
 「だってあっためたほうが美味いじゃん」

 ただそれだけの理由だった。別に店員も静かにレンジに放り込んでチンしてくれる。

 杏子はお金を払って袋を受け取り、少しまだ肌寒いコンビニの外に出て、薄暗い夕闇の中沙弥におにぎりを手渡す。

 「はむっ……うん、うまいっ!!!!」
 「ほんとだ……美味しい」
 「なっ??」

 ご飯粒をつけた口元、八重歯をこぼして微笑む彼女が妙に愛くるしかった。

 「いや、素直に参りました杏子さん」
 「いやいや、よいのだよサヤ……」
 「久しぶりだね、上条沙弥」

 空気が緊縛する。それは沙弥だけが感じているのか特に杏子が何かを感じている様子はない。

 「キュゥ、べえ……」
 「なんだ、こいつ。妙に可愛いかっこして……」
 「そいつに触らないで!!!!」
 「久々あったっていうのに、つれないね上条沙弥」
 「お、こいつ喋るのか。おおそうかそうか、よく人間の言葉を覚えたな?」

 いまいち状況の読めていない杏子に一から説明するのはこの場では難しかった。

 「時にそこの赤い髪をポニーテールにまとめた彼女、名前は?」
 「あ、オレは野中杏子。上条沙弥のお友達です」
 「そうか、じゃあ野中杏子……君は何か叶えたい願い事はないかい?」
 

 キュゥべえの目がぎらりと輝いたような気がした。彼の言わんとするところは沙弥には痛いほどよく分かる。

 「願い事か? そりゃあ色々あるけどなぁ……とりあえず、もっとスタイルのいい女の子になりたいぜ」
 「杏子……そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目」
 「何をそんなに動じているんだい上条沙弥」
 「そうだぜ、折角こんな可愛い小動物がオレに質問してくれてるってのに……」
 「杏子」

 沙弥は杏子の両肩を手でがしっと掴む。しっかり相手の目を見て……強く言い放った。

 「答えて杏子。理由は今はちゃんと言えないけど……私と、この動物と、片方だけ信じるなら、どっちを信じる?」
 「決まってんじゃん、サヤを信じるさ……っくしゅい!!!」
 
 くしゃみでのけぞる杏子、彼女が強く自分の方をとってくれたことが沙弥にとってはとても喜ばしいことだった。

 「ありがとう……これから先、こいつが何を言ってきても、一切耳にしちゃ駄目だからね」
 「あ、ああ……分かったよ」
 「へぇ……野中杏子、また近いうちに来るよ」

 キュゥべえはきびすを返すと夜の茂みの中へ消えていった。沙弥の緊張が解ける。

 「さて……帰るか。サヤんちどっち?」
 「ああ、こっから右」
 「オレんち左ってか、すぐそこのあの白い家なんだよね、そいじゃまた」

 沙弥にばいばいと手を振りそのまま駆けだしていく。いつだって彼女は元気で、その元気を周りにもくれる。

 (ごめんね、杏子……)

 胸の奥では大事に思っていても、魔法や戦いから遠ざけるためには有無を言わせぬ断定的な発言が必要になってくる。それが、少しだけ申し訳なかった。


 沙弥は家に帰ると地下に降り、完全防音の部屋でヴァイオリンを弾いていた。

 沙弥の父、上条恭介は非凡なヴァイオリンの才能を持ちながらも数年前の事故により楽器を弾けない腕になってしまった。

 それまでは娘にも音楽の素晴らしさを教えようとヴァイオリンを習わせていたのに、自分が弾けなくなった途端に沙弥に辛く当たるようになった。

 『そんな音で恥ずかしくないのか』『僕が弾けないのを知っててそんな風に弾いて満足か』家の地下以外で弾いていてはそんな矮小さが露呈するようなことばかり言われるので、ここを使って気分転換に演奏していたのだ。

 だが、完全に四方を防壁に囲まれたこの場所はまるで牢獄のようであまり好きではなかったし、自分の声の響きが普段と全然違って気持ちが悪い。

 さっきまで弾いていた曲はハチャトゥリアン作曲『仮面舞踏会』の二楽章・ノクターンだった。譜面があったので弾いてみたがあまり面白くなかったので、一通り音を鳴らしてから楽器を片づける。使えば劣化するのは仕方ないのだが、使い込んでこそ出てくる味もあるのだった。


 「よっと、お久しぶり、かな野中杏子」
 「てめぇは、さっきの……」

 杏子のお部屋。窓をこんこんとノックする音が聞こえたのでカーテンをがらがらとあけると、そこにはさっきの白い小動物、キュゥべえがいた。

 「お前の話なんか聞かないからな、サヤがあんだけまじめにオレの方見て言ってくれたんだ、守らなきゃ友達じゃない」
 「そうか、君は上条沙弥の友達なんだね……彼女のこと、話してくれないかい? それに外は寒くてね……」
 「ん?、まあいいか。話を聞くなとは言ったけど、聞かせるなとは言ってないしな」

 勝手な理屈を自分で組み立て、杏子は白い悪魔を家に招き入れる。杏子は先週の休みにまとめ買いして備蓄していたクッキーをキュゥべえに与えた。

 かりかりかりかりとクッキーをかじるキュゥべえを見て、杏子は微笑む。この獣が腹の底では何を考えているかも知らずに。

 「お前可愛いな?、思わずもふもふしたくなるぜ」
 「ふう、美味しかったよ野中杏子。さて、夜の徒然に聞かせてくれるかい?」
 「ああ、サヤは今年になってであったんだけどな……」


 「お、杏子は休みか」

 次の日、朝のホームルームの時間。軽く朝の陽気に身を任せまどろんでいた沙弥は先生の声に驚いて目が覚めた。彼女が休むなど珍しい。風邪でも何やかんやで学校に来るというのに。

 確かに昨日くしゃみもしてたし……だがそれくらいしか心当たりがない。まあバカは風邪を引かないと言うし……そう考えると余計に心配になる。

 そんな心配をしていると、前からプリントが配られてくる。沙弥は前から受け取った分はとりあえず自分の分だけ取って後ろに回し、杏子に回ってきた分は彼女の分をのこしてあげて後ろに回す。

 折角なので机の中に入れてやろうとするが、色々紙屑で散らかっていて入らない。仕方ないなと思いながらもまだ次の授業までは時間があったので、ゴミを取り出して……

 「何、これ……」

 今の紙屑の文字、誰かに見られなかっただろうか。そんな下らないことを考えながら沙弥は紙屑を取り出す。

 『死ね』『バカ』『もう学校来るな』『邪魔』などのボキャブラリーの欠片もないような決まり文句が書かれた紙屑がそこには散乱していた。ふとやたら紙を破っているノートがあったので開いてみると、彼女の不器用だが丁寧さの感じる板書の上からマジックで大きく汚い言葉が並べ立てられていた。

 思えば(彼女を極力避けていたからかは知らないが)彼女が他の人と話しているのを聞いたことがなかった。体育の時間あれだけ活躍していても、どんな競技中だって彼女は一人だった。プレーの上手さに目がいってしまうが、彼女は敵からも味方からも歓迎されていなかったのだろう。

 沙弥はそれを全部思い切って捨てた。彼女が今までどんなことをされてきてこれからどんなことをされるのか、そしてこの行動をとったことでクラス内でどういう目に遭うのかなんてどうでもよかった。

 彼女がどんなに冷たくあしらっても沙弥に寄り添ってきてくれたのは、沙弥だけが彼女の事を考えているという想いが無意識のうちに伝わっていたからかもしれない。

 紙屑の上に涙がポロポロとこぼれ落ち水性のマジックで書かれた文字が滲む。それでも完全に文字が消えることはない。受けた言葉の傷が癒えることはないように。

 「ごめん、ごめんね、杏子……」

 彼女に会いたい。彼女が休むくらいだからよっぽどひどいのだろうがそれでも。自分の気持ちをすべて伝えたい、彼女に伝わっていない自分のすべてを。


 放課後、彼女は走った。学校は途中で抜けられないし部活もあってもう夜だったが、杏子の家まで自慢の足でもうすぐ……

 「何処へ行くんだい?」

 キュゥべえだった。こんな時まで……沙弥は足を止める。そして地面を睨みつけた。

 「こんな時に……何の用よ!!!!!!?」
 「気がつかないのかい、この圧倒的な妖気に……」

 キュゥべえが淡々と告げる。その刹那、凄まじい気が全身を突き抜けた。同時に大気が歪んでいくのが目でも肌でも感じられる。

 「野中杏子は……魔女に乗っ取られた。契約して魔法少女になっておけば避けられたのに」
 「……何が言いたいの!!?」
 「倒すんだ。それが、魔法少女である君の使命なんだから」

 杏子が魔女に……同時に沙弥は周囲の様子がおかしい事に気がつく。道行く人はみなふらふらと同じ方向を目指して歩いている。その方向は杏子の家だった。

 「『魔女の口づけ』だね。魔女の烙印を押された人間は精神が狂ってしまうけど……あれは異常だ、此処ら一帯の人間全員を食うつもりだよ」
 「そんなの……私が許さない、杏子は、私が救ってみせる……」


 『ドウシテ、ミンナワタシヲキョゼツスルノ……』『ドウシタラミンナハワタシヲウケイレテクレルノ』『ワタシガナニヲシタノ』『ダレカタスケテ』
 「杏子っ!!!!!!!!!」

 彼女の家は巨大な大木に蹂躙されていた。そしてその木の中心には杏子の姿があった。木に飲み込まれ絶望の涙を流しながら周囲を見つめている。

 『神滅の魔女』、別名シュヴァルツシルトの闇。何処までも深く人間を喰らい成長する恐ろしい魔女。

 生まれてから今まで杏子に巣食っていた果てしない絶望がこの魔女を呼んだのだ。ワルプルギスの夜亡き今、最強と呼べるにふさわしい存在であった。

 「私の声が聞こえる!!!?? 私よ、沙弥よ!!!!!!」
 『サ、ヤ……』
 「ごめん、私魔法少女なの。私と関わるとロクな事にならないから今までずっと避けてたけど……私、貴方の事が大好き、何時だって一緒に居たかった、友達で居たかったの!!!!!!!」
 『サ、ヤ……ワタシ、ワタシ……』
 「もう杏子は一人じゃないよ。何時まででも私が傍にいるから。独りぼっちは……寂しいもんね」

 『ウグゥッァアァアアアアアアアアアァアアアアアーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!」

 魔女が咆哮する。枝を覆う無数の葉が宙を舞い、沙弥に襲いかかった。すでにコントロールは杏子から離れている。

 「くそっ……はぁあああっ!!!!!!!」

 連接剣を抜く。鞭のように暴れまわる刀身が木の葉の刃を切り裂き道を作る。沙弥は剣を元の長さに戻し、大樹に接近した。

 「杏子を……返せぇええええぇッ!!!!!!!!!!!!!」

 渾身の力で幹に斬撃を叩きこむ。しかし巨大なそれはびくともしない。その間にも地中から飛び出した根と上空から降り注ぐ葉を彼女は回避しながら切り刻んでいく。

 何十回腕を振っただろうか。沙弥の剣がついに杏子と木の結びついた部分を切り離した。しかし安堵した瞬間に地中の根が彼女の足に絡みつき地上へ引きずり下ろす。

 そのまま触手のように絡みつく無数の根。沙弥はそれを自分ごと切り裂いた。そして魔力を用いて肉体を修復する。治癒の能力に関して、彼女は天才的な才能があった。彼女の願いの根幹にあるのは『復讐』だったが、治癒の力に特化したのは別の理由があるらしかった。

 「杏子の事を思えば……痛みなんて感じないっ、まだまだぁぁあああっ!!!!!!!!」

 魔力を全開放し、連接剣を巨大化させるとともに最長の長さにまで伸ばす。そのまま幹に捲きつかせ、思い切り引いた。

 表皮に無数の傷が入る、だがそれでも簡単にやられてはくれなかった。流石は最強の魔女、簡単に死んではくれないらしい。

 沙弥は地に落ちて行く杏子を空中で抱きかかえ、安全な場所に寝かせる。その衝撃からか彼女は目を覚ました。

 「さ、沙弥……オレ、何て事を……」
 「聞いて、杏子。私はあの魔女を倒す……だから、普通の生活に戻るって約束して。決して魔法少女になったりとかしないで……」
 「……分かった。だったら約束してよ、絶対に死なないで戻ってくるって」
 「勿論……また一緒に、おにぎり食べよ」

 二人はにっと笑う。沙弥は空を蹴り上空を取り、連接剣を構える。横の攻撃が効かないなら縦、重力による加速も利用して一気に決める。

 「負けてたまるか、私にだって、誰かを守れるんだから……杏子はこれからもずっと友達なんだ、死ぬなんて、そんなの、あたしが許さない!!!!!!!!!!!!」

 巴マユの笑顔が頭に浮かんでは消えて行く。沙弥は剣先を真下に向け、剣を伸ばした。葉の密集した枝を貫き、魔女の核にそれは命中する。弱点を発見した沙弥は再び剣の長さを元に戻し、至近距離から核を砕いた。

 グォオオーーーーーッと言う断末魔の叫びと共に葉が枯れ枝が折れ巨木が崩れて行く。これで終わる、沙弥がそう確信した時だった。

 「えっ、嘘っ……うぐっ、んぁあああっ!!!!!!!!」

 砕けた核が自動修復した。まさか、ここが弱点じゃ無かったのか……根が無数に枝分かれし沙弥を襲う。肉体を修復できると言っても、再生が新たに出来る傷に追いつけない。

 「サヤァアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!」
 「……私が死ねば、こいつはまた杏子を絶望に堕とす、私が勝っても、多分私は魔女になってしまう……だったら、私がこいつと相打てばっ!!!!!!!!」

 残りの魔力全てを込め、力を利き手である左手に託した。そう……

 後悔なんて、ある訳ない。

 『天誅』

 核が修復不能なレベルまで粉々に砕け散る。それと共に、沙弥の肉体も粉々に砕け消え失せた。

 悪夢は終わったのだ。そして杏子にもたらされたのは……何よりも辛い現実。沙弥の居ない世界、何の希望もない世界。


 それでも、彼女は歩き出す。

 「交わした約束、忘れないよ……」

 目を閉じ確かめる。押し寄せた闇も振り払って進む。

 いつになったらなくした未来を見る事が出来るかは分からないけれど。

 空は綺麗な青さでいつも待っててくれる。丁度沙弥の髪のように深い青さで。

 だから怖くない。もう何があっても、挫けない……



 暁美ほむらと鹿目まどかの功績により始原の魔女とインキュベーターもろとも時空のかなたに自らを凍結させた事で、世界は滅びの未来から一時的に逃れる事が出来た。しかし、インキュベーターは次元の凍結から脱出し、再び絶望の種をまいたのだった。

 「全く、魔女を倒した魔法少女が魔女になって、その魔女をまた別の魔法少女が倒す、絶望の輪廻を断ち切るなんて……くそがき共が余計な事を」

 白い悪魔は闇夜に消える。再び次の絶望の種をまき散らすために……

魔法少女さや☆マギカ

ふう、疲れた……と言ってもコピペして見栄えを良くしただけですがね。あんまりよくなってないかもだけど。

魔法少女さや☆マギカ

本編の世界から数十年後の世界、奇跡と魔法は再び人の手に宿る……

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-04-22

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  1. 無垢なるもの
  2. 守られる者
  3. 護る物